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ログ#21「決闘 (下)」

 ゴングの音色もレフリーの声も無く始まったフブキとヴァイスの決闘はフブキの猛攻で幕を切った。

刀身に電撃を纏いバチバチッと音をさせる。

振られる剣はヴァイスに全て躱されていたが、その全てが綺麗な武術()なのが傍目にも、この世界の知識の乏しいヴァイスにも分かった。


「どうしたよ!

戦場じゃ〜なぁーーー待ったも開始も無いんだよ!!

逃げてばかりのウサギにはスミリは手に入らないぜ!」


 逃げの一手のヴァイス、紙一重で躱しているが敢えて攻撃をしない。

フブキは額に汗を垂らし苛立ちの中、鬼ごっこが続く。

不意にヴァイスとスミリの目が合うと身を翻してフェンスの上に着地すると腰を下ろす。

そこにスミリが投げ渡した訓練用の魔法剣を受け取ると柄を握った瞬間、ヴァイスは反対の片手でもう1つの腕の腕輪に触れる。

するとZ粒子、エレメント・ギャラクシーとガイア・ダイアの操作が自動で行われ超科学反応を発生させる。

その効果は実体化現象(マテリアライズ)

ミキシング ✕ マキシマイズ = プレイ&バック。

生成構築(ジェネレイト)破壊再生(リ・ジェネレイト)である。


 物体や物理法則の保存法則と運動量を捻じ曲げる性質を利用した、その1つに所謂、形状記憶金属(ごうきん)に似た性質を意図的に別の物に付与したりする能力で昨夜、完成されたヴァイス・オリジナルの魔法具基盤レシピの複製をスミリから受け取った一瞬で付け替えて付与する。

これに由り通常ならヴァイスが使用出来ないはずの魔道具の発動が今、可能になった。

ヴァイスの反撃が始まる。


◇◇◇

 軽々と余裕でフブキの剣技を躱して時折、剣と剣を打つけてフブキを転がそうとするが寸でで耐えたり、軽業のようなアクションで回避と成功はしない。


 訓練用の魔法剣には刀身に魔力流し纏う効果しか無く打つかる度に火花のように削れた魔力の燐光が舞う。

魔法剣と魔法剣の魔法効果が相殺されて2人の周囲にスパークの花火が発生する。

幾度も繰り返されては細かな修正・補正をしてヴァイスは殺さないようにフブキを追い詰めてゆく。

フブキの魔力はヴァイスより遥かに高いが体力は人間的な物、改造されているヴァイスとは次元が違った。

その疲れは如実にフブキの表情や体の表面にに出てくる。


「はぁはぁはぁはぁ。

……弱いと逃げるしか出来なくて哀れだぜ。

そろそろ決着を付けようか。

赤ちゃんよぉ!

死んでも恨むなよ!

帰ったらママのミルクでも飲むんだなぁぁぁぁぁあ!!!」


 体全身に魔力が溢れ剣全体に魔法陣が大きく展開される。

今にも崩壊しそうな長剣を構えたフブキが俊敏に消えるとヴァイスの背後を取った。

それは全身全霊、最後の力を振り絞った最終手段。

フブキの得意とする乗馬からの剣技が不発に終わったため訓練用の魔法剣で出来るフブキの苦肉の策でもあった。

魔法剣の膨大なエネルギーと遠心力で大振りとなった斬撃はフェンスや地面を抉りながらヴァイスに迫る。

トミーやスミリ、双方の使用人の全員が固唾を呑む。


 風の如くスピード、誰も付いて来れない速さ、フブキさえでも無理矢理行なったために体も思考も完全には現実に追いついていない、それでも勝ちを確信して握る手を土埃を起こす足の指に足裏に力を込めて斬り掛かるのを止めない。

常人には視認出来ないスピードでもヴァイスには見えていた。

ドローンがあるからではない。

この訓練場にドローン等は設置されていない。

理由は並外れた改造された動体視力と何百年と戦ってきた経験則からだった。

フブキの魔法剣に魔法剣を当てる。

瞬時にヴァイスの微弱な魔力の魔法剣では押し負けて魔法の拮抗も敗れたのか触れた部位が消し飛ぶ。

剣での押し問答こうげきをやめると軽く息を吐いてフブキの剣の柄を蹴り上げた。


「悪いが母親はいないんだ」


 異常な筋力と靭帯から発せられるパワーに魔法剣は中を舞い天井に刺さる。

衝撃で吹き飛んだフブキが数度、跳ねては転がる。

魔力供給が途絶えた魔法剣は刺さった天井から外れて宙を回転して落下する。

酷い疲労と痛打で動けないフブキへと落ちてくる魔法剣に咄嗟に頭を庇うように両手が動く。

目を閉じてしまったフブキに一向に長剣の激痛は、やってこない。

恐る恐る目蓋を上げてみるとヴァイスが魔法剣を掴み、落ちてくる流れを緩やかにらしてフブキの顔の横にスッと止めてみせた。

溜め息を溢してはフブキを見下ろしているヴァイス、その光景にフブキはヘニャヘニャと地面に突っ伏すように倒れて額の汗を拭う。


「俺の勝ちでいいか」


 ヴァイスの声にフブキは短く荒い息遣いながら “あぁ” と弱く答えた。

赤くなる顔を隠すように腕を上げてから、ゆっ〜くりと、うつ伏せなると使用人を普段のような粗暴な大声では無く小声で呼んだ。

そのため聞こえなかったため何度か呼んでは来ない、呼ばれてる?と困惑する使用人と早くきて欲しいフブキとでのやり取りで緊縛した空気が弛緩する時間に作り変える。


 使用人達に土埃の汚れを払って貰っている間もモゾモゾとしては小声で喋ってはフブキの言は使用人を介して伝えられる。


「坊ちゃまは疲れたので帰ると。

……はいはい…明日にまた来ると。

はぁ?はぁ〜………スミリ嬢様の事は保留だとも言っております。

はい、はい。

すみません、それでは今日はこれで失礼させて頂きます。

重ね重ね、申し訳ありませんでした。」


 フブキに仕える羊長のライジがお辞儀をすると他の使用人達に抱えられてフブキは来た時と同じように騒がしくそして突然に帰って行った。


「なんだアイツ」


「なぁ!

失礼ちゃうだろ!

決闘に負けた癖に約束を守らないとは無礼な奴め!

出禁だな父上!?

うむ、今日は疲れた!

私は寝る!」


 エリアから出ようとしてヴァイスの持っていた剣が破裂する。

その音に振り返った、一同と1番驚くヴァイス。

ポーカーフェイスだったが、どうやら魔法剣がヴァイスオリジナルの魔法レシピに耐えられなかったようで実験試行のやり直しだなとちた。

スミリ達には見えなかったが魔法剣を蹴り飛ばした靴や足、膝や関節等の損傷部位から煙が微かに漏れていた。


◇◇◇

 数日後、スミリ邸の客室。


「無理だろ」


「知るか!!

スミリはお前にはやらん」


「負けたろ?

ダメだな。

スミリ以外の女を探せ。

それなら協力もしてやる」


(正直、人の色恋だの愛だのに興味も無ければ好きにしてくれとは思うんだがスミリと今、離れたら死ぬんだよな〜。

死にたくない訳でもないんだが軍務的にも、まだ任務中だから死ねないんだよ)


「そうだな。

私も協力してやるぞ!

ん?

どうした」


 スミリの言葉にフブキの薄々実感していた感情が怒りに変わる。

だがスミリの無垢な瞳に見つめられて拳を弱める。


「スミリ、俺は昔から…………。

いや……今までの決闘はどうだった?」


「ん〜〜〜?

お前との決闘か。

楽しかったぞ!」


「ほんとうかぁ!?」


「あぁ、弱っちかったけどな!」


「がーーーん」


「でも楽しかったのは本当だぞ。

でもまさか私の事が好きなのが本当だったとはな!

嬉しいな、けどごめんな。

私にはヴァイスがいるからな〜」


 自身のウィザード・クロスのある左手を見ながらフブキに告げる。


「そうなのか、ありがとうな」


「…………お前、それよりスミリに相手にされてなくないか?」


「ぼーーーーーーーん!!

くっ、……覚えてろよ!

ムッツリスケベ顔の知った被りの此れ見よがし野郎のヴァイスめーーーーー!」


 両頬を押さえて項垂れた後、負け犬の遠吠えを吐いてから走って去って行った。

後に続く使用人達はお辞儀を忘れない。


「ははは!

………ヴァイス、今のはないと思うぞ。

流石の私もどうかと思う。」


「……………これでお前への恨みは俺に摩り替わったろ」


 ときゅん♡


「ヴァイスゥ〜!

好き♡♡」


「おいバカよせ!!」


 ソファに押し倒されたヴァイスが手と手を掴んで抵抗して顔が近づきキスするギリギリで堪えて止まっているとヴァイスが不意に体に違和感を覚えて負けそうになる。

そこにフブキの叫び声を聞いて、やって来た母ジェマが入ってきて事なきを得た。


「あらあら」


「見てないで助けて下さい」


「チィ、良い所で!」


「女の子が舌打ちしませんよ!」


「はいぃ!!

母上ぇぇぇぇ!」


 淑女らしくと説教が始まった隙にヴァイスはヒッソリと抜け出す。

聞こえてくる声にスミリが淑女らしくとは、もう手遅れなのではと思わないでもないヴァイスだった。



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