ログ#20「決闘 (中)」
ネーロ族の次期当主にして現当主の息子、フブキは一族のみが使える魔眼でヴァイスの魔力総量を言い当てた。
焦りヴァイスとフブキとの見てはを繰り返すスミリにヴァイスは平然と告げる。
「魔力症候群で死にかけてね。
それでじゃないか」
「あ!
確かに!
ヴァイスと初めて会った時に魔力欠乏に掛かってたな!
成る程、成る程な!
忘れてたぁ〜」
(忘れんなよ。
なんか知らんがそれでお前は俺を夫とか言い出したんだろが!
相変わらず、この女が分からん。)
自身の手にある模様を見ながら思う。
「感心してる場合では無いだろうがぁ!!
納得仕掛けたわ!
ふん!
ヴァイスとやら知っているか?」
「知らん」
「………な、なら教えてやらんでも無い!」
「結構だ。
特に興味を引かない」
「…………ヴァイス、知っているか?」
(やり直した)
その場にいた全員が思ったという。
「教えてやろう。
スミリと結婚するにはスミリを倒さなければならないのだぞ!」
「そうなのか?」
(聞いてて知ってはいたんだが初見のリアクションしとくか)
「あ〜〜?
あぁ!
何故かそうなってるな」
「村での決まりとか為来りって奴か?」
「いやコイツとだけだ」
「そうか。
それは知らなかった。
なんでまた……。」
「いや……分からん。
いつからか、そうなってた」
(マジでこの女を知れば知る程‥‥‥‥疲れてきた。)
その言葉にフブキの心中は穏やかでは無かった。
幼少の時分にスミリと出逢い、焦がれた恋心と青春や分かり合えていたと思っていた日々は何もなし得ていなかったのだと独りよがりだと知る。
「ヴァイス…………。
ウザったい邪魔者め……。」
静かにヴァイスの名をクチにする。
「あ?」
「俺と決闘しろ!」
決めポーズと決め顔でヴァイスにフブキは宣言する。
「どうやらスミリは俺との出逢いも約束も覚えていないようだからな!
この思いを今一度として見せてやる!!」
「ん、あぁ。
そうだな」
「これは男の意地を賭けた戦いだ。
そして勝者はスミリを手に入れる………どうだ?
へ!
どうだ、怖じ気付いたかな。」
フブキは自身の魔力は体から放出して見せる。
「いや別に。
ただ人を……それも好きな女を物みたいに扱うのはいいのか?」
「ぐっ!?」
「ふふふふ、はははははっ!!
問題ないぞ!
……何故ならばだ!
私は信じている!」
「なにィ!!」
嬉しくて聞き返してしまうフブキと茶番をまたやってると呆れるヴァイス。
「私は信じているからな!
ヴァイスをぉぉぉぉぉぉぉおお!!」
「クソぉぉぉぉぉおおおお!
何故だぁぁぁぁぁぁ!!」
「何やってんだコイツら」
ヴァイスの素から漏らした言葉は心から溢した本音。
久しい戦場の日々に感情の枯れていたヴァイスに水を与えたのはスミリであり、スミリとのこの数日の何気ない日常だという事をヴァイスはまだ理解していない。
◇◇◇
スミリの屋敷の中庭の先には訓練場がある。
決闘を宣言したフブキにトミーは場を提供すると言い移動を終えると準備を始める。
フブキは使用人に指示し忙しそうにしてはスミリにアピールを忘れない。
ヴァイスは執事長のオノウから出来ればスミリの暴走を止めてほしかった事、そしてフブキを殺しては絶対にいけないと釘を差されていた。
(俺は殺人鬼とでも思われてんのか)
ヴァイスはこれまでに数多くの知的生命体、人間や人異星人等を戦場や任務で屠ってきたが好き好んで殺した事はない。
だがそんな血腥い殺伐とした中に生きてきたためか人の生死に鈍く麻痺し思考もそれに準じているのも確かだった。
暫くすると支度が済んだのか訓練場にある土壌の地面のステージの1つにフブキが立つ。
ステージにはフェンスの囲いがあり使用人に連れられた馬がいるのが見える。
「よぉ、ヴァイス!!
どうしたよぉ〜?
怖くなったのかな?
早く来いよ、へへっ!
ヘイヘイ!」
挑発するようにフェンスに寄れかかったまま体から魔力を放出して剣でフェンスを叩くとベロを出しては笑うフブキにヴァイスはチラッとスミリたちに確認してから観念するようにフェンスを軽く跳び超えてステージに着地する
「……っで?
決闘の形式は?」
「そんなの殺し合いに決まってんだろ?」
「それはいけないな」
止めたのは、この屋敷の家主でスミリの父トミーだった。
「私の屋敷で死人を出されるのは……ね。
それに万が一、君が死んでしまったり流血沙汰は君の親父さんになんと言えばいいか。」
遠回しにフブキの身を案じていると伝えてみる。
「ほほ〜う。
確かに!
ご主人の言う通りだ」
「分かってくれたかね」
「ええ。こんな奴でも死ねば血の跡と掃除は大変ですもんね。
分かりました。真剣はやめましょうか。
では歯を潰した訓練用の武器で魔法合戦といこうか?
ん?
どうだ?」
「勝敗の判定は?」
「先に着衣を土で汚した方でいいだろう?
俺のは高いんだから汚さないでくれよ。
出来たらだけどな!」
「あぁ」
「余裕だな〜〜??
赤子並の魔力で何が出来る?
家に帰るなら今の間だぜ?」
「無駄口はいいから、さっさとしてくれ」
「チィ、どこまでも生意気な奴め!!
なら〜〜お望み通り!
始めてやるよ!」
フブキが走り出しヴァイスは仁王立ちのままだ。
開始の鐘も法螺貝も無く決闘が始まった。
◇◇◇
前日のスミリとのデートは当然、スケジュールには無い突然の買い物となったがそれはスミリとは常の日常だった。
そして先日のデートに同行したヴァイスはヴァイス本人ではなかった。
ヴァイスが遠隔操作するアンドロイドだった。
その間、ヴァイスは屋敷に設置されている宇宙艇内の彼の自室で魔法の実験を行っていた。
スミリの魔術によりヴァイスは魔力及び魔法の適性を得たはずが理由不明の原因でヴァイスは未だ尚、魔法道具の発動成功は成っていなかった。
加速された思考の中で何通りの失敗がインターフェースに表示される。
理論上では既に魔法の行使は成功しているはずが何度やっても出来ず、この星での敵対する相手への対抗手段が得られていない状態が続く事になる。
そして夜中、定期行商でスミリがヴァイスへと贈った魔道具3点は宇宙艇に運び込んだ。
今までは屋敷にあった量産品の低価な魔道具を貸し与えられていたが今回の魔道具はヴァイスが所有を得ているためヴァイスは魔道具を分解する。
まずはX線・紫外線、赤外線ほか熱源感知や放射能の透視を行う。
又、これ迄に対峙した敵との戦闘データと比べる事で現在のヴァイスの魔力で魔道具を起動された際の振動や音、周波数の有無と映像データでの正常な魔道具行使との差異を検証・テストして記録を付けていく。
内部には基盤・回路に似た構造と魔石があり、そこに魔力を流す事で魔力を持つ者なら誰でも魔法が発動するようになっていた。
しかしヴァイスは微弱ではあるが魔力を流す事が出来ているが魔法発動までに至っていないのも事実だった。
魔石を動力源、基盤や回路を形作っている幾何学模様や文字・数字の設計図は魔獣やそれに類似する素材等の触媒と液体インクや魔力媒体由来の材料で描かれ組み立てられており外部からの魔力で起動する事で誰でも発動出来る仕組みになっていた。
そのためヴァイスの微弱な魔力を電気信号や科学的な媒介等に置き換えた時、それに伴い付随する魔力的な魔法発動のプロセスや構築を科学で作り変え補った分、本来の魔法陣の生成とは違う形でヴァイスは始めて魔法の行使を完成させる。
魔法陣が出現しヴァイスの魔力を食い展開される魔法が顕現して実現する。
但し、やはりというべきなのか魔法陣は今にも瓦解するように弱々しく色や発光も薄く発動効果も通常からは、かなり小さく持続可能時間も短かった上に消費魔力量も高い。
そしてヴァイスは安全装置である魔法の安定・制御のための設計を除去した。
現実時間では数秒から数分の試行だったが制作の工程のみが時間を要した。
「魔力があるから疲れるのか。
魔力を使ったから疲れるのか………或いはその両方……か。」
意識を本体に戻して就寝するために屋敷の自室にヴァイスは歩みを進めた。




