ログ#18「曲者」
買い物は続き、スミリは武器や防具を買い漁った。
ミューロが持つと言ったが流石の量にヴァイスも手伝いを申し出る。
ミューロは屋敷に増援を頼むと言ってスミリ宅に急いで戻って行った。
「あら、いっぱい買ったわね!
お買い上げ頂きありがと〜うございますね♡」
「イリュージアの目利きは本物だからな!
強くて良いのが……ん?
あの男は誰だ、新しい従業員か?
にしては商会の服では無いし。
それにやるようだな」
「あらやっぱり?
スミリちゃんには分かるのね。
彼は冒険者なのよ。
ここに来る途中で助けて貰ってね。
ついでだからって用心棒に雇ったのよ」
「?
ぼクの話デスか?
ど〜モ」
お辞儀をしてから男は近付いてくる。
「初メまシテ!
ボくはグリーンと言イまス!」
「なぁ〜なんでそんな変な喋り方なんだ?」
相変わらずスミリが、ずばりと聞くとグリーンはニヘラと口を歪ませてから頭を掻く。
「コこの辺リノ出身でナいからデス。
遠クの国からやっテ来マしタのでマダ慣レてイナイですヨ〜」
「そうなのか!?
それは大変だな、頑張れよ〜」
グリーンの苦労にスミリは心を痛め少し泣いている様子だったがヴァイスは違った。
糸目に薄い緑色の短髪。笑顔を絶やさず物腰も低い。
服の上からでも分かる対人戦闘用に仕上がっている筋肉と肉体。
それらを悟らせない振る舞いとミスマッチの体の重心の動かし方、足取り・足音。
わざとらしいイントネーションと間違った言い回しの喋り方にスパイを疑う。
寧ろ自分からそう告げている節さえある。
それが何処の勢力かをヴァイスは候補と目処が立っていた。
「それでね。
都落ちって言うのかしら?
都会の貴族出世レースの余波で取り締まりが厳しくなってね。
元冒険者や元騎士の盗賊がこの辺り何かまで現れてね。
そこを彼に助けられたの!
グロウは隠れ里だから安心だとは思うけどね。」
「そうだったか。
グリーン、イリュージアたちを助けてくれてありがとうな」
「イイエ!
タマタマです。
通リ掛カっただけデスから。
ソレに人助ケは当然ですカラ」
「ウンウン、グリーンは人が出来てるな〜」
「あぁ、だな。」
言いながらヴァイスはグリーンにターゲット・マーキングをしておくのを忘れはしなかった。
「彼には彼の目的の場所の近くまでは用心棒を続けて貰うから、これでお別れにはなるんだけど。
どう?
正式にうちで雇われてみない?」
「トテモ嬉しい提案です!
デモ、ボくも用事アるから分カラない。
目的地で用事終ワった後にならないとサ。
ダカラその時ニ、又会エたラ誘っテ下サイ。」
「そうね、ならもう少しの付き合いに成るかも知れないから精一杯のお礼もしなくちゃね!」
◇◇◇
それから昼から少し経った頃。
スミリは満足げに家路にあった。
使用人は3人に増え、あれから武器類から衣服、更に書物等も買うとイリュージアが勧める各地の食事をして今に至る。
「買いすぎだ。」
後ろの執事とメイドを顔で指しながら溢す。
「んん??
そうでもない。
この村の娯楽は少ないからな。
皆がイリュージアが来るのを楽しみにしてるんだ。
イリュージアも商機と馬車3台のてんこ盛り、で此処まで来てくれるんだ。」
「そうかよ。
魔道具、ありがとうな。」
(買い物か。
久しくして無かったな。
娯楽……楽しいか………。)
「ヴァイス!」
「なんだよ」
「また来ような!
次は半年後だけど!!」
「……ふん。
それまでに金、稼げてればな。」
「ヴァイスなら出来るだろ?
多分!」
「どうだろうな。
なんならこの村に居るかも怪しい。
追い出されてるのが濃厚だ」
「そんな事は私がさせない!
絶対にだ!」
スミリが笑い声が道に響く。
家に着くと買った物を両親に見せてゆく。
それを微笑ましく見るヴァイスの瞳が一瞬、鋭くなる。
町の出口でイリュージアの場所とすれ違った豪華な場所。
そのライブ映像がヴァイスに溜め息を吐かせた。
◇◇◇
茣蓙や簡易の屋台・台を仕舞い馬車に載せる。
グロウの村の特産品を買って別の村々や町で売る。
道中で倒した魔獣や動物を加工したり町の冒険者ギルドで売ったりもする。
イリュージアは次の村に向かって出発する。
商売の事を考えるとヨダレが垂れそうになり頬の筋肉に力を入れて手に持つ馬のムチを打った。
動き出した馬に釣られてガクンっとなり彼女の髪が靡く。
門まで来ると止まるように言われる。
どうやら先に村に入ってくる相手がいるようで、この村の門は魔法道具で決められたアイテムを持っていない侵入者は勝手に入れない仕組みになっている。
入ってきたのは豪華な場所1台と通常の馬車がもう1台の計2台。
馬車にある紋様でグロウ村の隣にある村だと分かって警戒を緩める。
通り過ぎるの待つ間にイリュージアは隣村に行くかを計算しだす。
馬車の荷台の中、幌の垂れ幕の隙間からグリーンが顔を覗かせて通ってゆく豪華な馬車の窓から1人の男を見付けてからカーテンを閉めた。
完全に通り過ぎた後も少しトリップしていたイリュージアは門番の呼ぶ声で現実に戻ると恥ずかしそうにしてから馬車を発進させた。
イリュージアのレッド商会のマークを見た豪華な場所の中の男は御者でもある彼の執事長の居る操縦席の窓を叩き問いかける。
「レッド商会はウチの村に来る事になってたか?」
「レッド商会ですか?
いいえ、ウチとは契約しておりませんから。
どうします坊ちゃま、呼び止めてますかな」
「いい。
……おい、スミリの前では坊ちゃま呼びをやめろよ。」
「はい、かしこまりました坊ちゃま」
「ったく。」
執事長に呆れながら男は座り心地を直すと短く笑う。
「ふふふ、フハハ。
待っていろスミリ……この俺が……。
フブキが来たぞ!!
フッ、ハッハッハハッハッハ!!!」
グロウの隠れ里、その村の隣からやってきた男。
フブキがやって来る事で起こる騒動、巻き起こす出来事がヴァイスとスミリに何をもたらすのか。
それは直ぐ後のことだ。
「グハッ!?
息がっ、咽ぇ!!
舌、噛んだ!!」
「坊ちゃま!?」
心配する女性の使用人に魔法で治療されたため彼の到着は暫く遅れた。




