ログ#17「行商」
9話を微量な加筆修正しました。
夕食の時間、こってりと説教を2人は喰らっていた。
理由は幾ら殺人の疑いを掛けられたから、その事件が起きた現場に突入して犯人を言い当てるのは宜しくない。
その知らせ受けたトミーとジェマ達は心配を通り越していたと言う。
「いいかい?
今回は上手く解決出来たから良かったものの村の戦士陣や運営の妨害になっていたんだよ!
それに犯人が大人しく捕まるとは限らないんだからね」
「そうよ?
ヴァイス君は村に来て、まだ日も浅いだもの。
完全な信用は無いのは仕方ないの。
私達の事もそうだったよ?
こういうのは時間が大切なんだから。
抵抗しなくていいとまでは言わないけど無茶は駄目よ!」
「………反省してるみたいだし。
もうこの位にしようか。
でも1番は君たちが安全だった事なんだよ。
良かった」
「…あの父様……。」
「ん、なんだい?
お腹すいたかな」
「それを言うとだな、実は……」
「あっバカ!?」
森で奇妙な男に襲われた事を聞いたトミーは頭に手を当てジェマは倒れそうになる。
そこに執事長のオノウが加わり食事は余計に長引いたという。
「御嬢様、危険に直面した際は立ち向かうのでは無くまずは逃げるという選択肢を──」
そして次の日。
あれから何とか、お説教が終わり別々の部屋で就寝したヴァイスとスミリは起床した朝食の時間。
「それにしても昨日は本や観劇の物語に出てくる役者みたいだったな!」
「それ褒めてんのか?
まぁ探偵の真似事は始めてだよ」
「勿論だ!
本は読んでる!
観劇は村には無いから観たことは無いッ!!」
「君達は反省しるのかな?」
父のジトーっと見る視線に目を逸らす娘。
ため息をするとトミーは水を飲んでから続ける。
「いつも渦中にいるね。
心配で堪らないよ。
それ以上に君たちが元気でいてくれるのが嬉しいんだ。
ありがとうねヴァイスくん」
「……うっす」
「うふふ、そうだぞ!
ヴァイスに出会えて毎日楽しいからな!」
「そうかよ」
「あぁ、だから今日はデートだな!!」
「今日もだろ?」
「嫌なのか?」
「別に……つきあうよ」
そんな2人の様子は家族は暖かく見守っていた。
◇◇◇
度重なる2人の、やらかし行動に護衛が付き添う事になった。
要は監視役である。
「で?
今日はドコに行くんだ?」
「私も学習するのだよヴァイスくん!」
「そら良かったよ」
「なのでね、村から出ない!」
「それは宜しゅうございます」
護衛兼監視役のメイドのミューロが相槌する。
メガネに、そばかす、少し太めの体型の彼女はバスケットを肩にかけていてサイフ等が仕舞われている。
「なんか会話を聞かれるのって恥ずかしな〜」
「そうか?」
「そうだ!」
スミリが同意を求めてヴァイスを睨む。
それにヤレヤレと頷くと次が始まる。
「コホン…………本日は久し振りに定期行商の日なのでお買いデートにします♪」
「俺、金持ってねぇ〜けど?」
「心配ない。
甲斐のない男でも支える!
面倒するのが良き妻、女の嗜みだ!」
「そうか?」
「そうでしょうか?」
少し違うようなとヴァイスとミューロ達が思っているとスミリはズカズカと進み広場に到着する。
昨日までは無かった簡易の市場が所狭しと開店していた。
「いらっしゃい!!
いらっしゃい!!」
呼び込みの中に一際、張りがあり通り抜けている声があった。
その声の主にスミリは駆け寄っていく。
「久し振り〜♪」
「やぁ、スミリ〜♪」
ハグをしてキャキャ、キャピキャピする2人の女子。
「紹介するよ、この男は!
なんと私の旦那!
夫!
彼氏!
のヴァイスだ!!」
「そ、そうなのね。
ほほほ〜
私はイリュージア、レッド商会ってのをやっててね。
グロウ村とはここ数年に渡って取り引きさせてもらってるの。
年に数回しか来れないけれど最高品質の物しかないから安心して買ってちょうだいね!
だから是非、今後も良しなにね!」
「あ、あぁ。
よろしく」
「じゃ、行こうかヴァイスくーん!」
手を差し出したスミリに手を重ねると体ごと引っ張られて互いに腕組みをする形になる。
少し顔を背けたが直ぐに諦めるとスミリが歩く速度に合わせる。
数歩後ろにはミューロが続いた。
商品は商品から雑貨、前回注文していた個人的な物から珍しい珍品等など。
その中には当然のように魔法道具もある。
日用品から武器など多岐に渡るようで手に持って見て見るがヴァイスは魔力反応は分かっても自身でそれを発動出来ず魔法が使えていなかった。
(魔法とは体内と体外の魔力で魔道具が無ければ発動も出来ない技術。
アニメや漫画のファンタジーなエネルギー体系だが実際に目にしてる今でも現実感がない。
それは俺が魔法を使えないからか…………。)
「1つ、買ってみるか?
安いのなら練習にどうだ?」
「あぁ。
そうさせてくれ。
貸しは──」
「貸しじゃ嫌だな。
………だから私を見ててくれよ。
なんてな!
まぁ、ヴァイスはこの位、直ぐに稼げるようになるだろ!」
スミリの言葉に困惑している内にミューロが会計を済ませる。
ヴァイスが持っていたのはスタッフとステッキの2つ。
スタッフは量産品で1つ、250パルル。
ステッキは簡易の仕込み刀があり、造りも凝っているためか490パルル。
店員が2つを買うならオマケでワンド型の小型魔法道具も付ける流れで150パルルはオマケで無料になった。
「いいのか?
2つも買って。」
「ふふん!
イリュージアは品揃えが良いからな。
それに魔法使いたいんだろう?」
「ま、まぁーな。」
「じゃいいじゃないか。
それに此処からは私の買い物に付き合って貰うしな!
ほらデート続けるぞ!」
デートはまだ始まったばかりだ。
ミューロは微笑み、スミリは高笑いしヴァイスが苦笑いする。
イリュージアの商会が道中で狩った魔獣の肉を焼いた串焼きを片手にアクセサリーを見たり都会で流行っている服を見るがスミリは余り興味がないようで案内したミューロが、もう少し女性らしい趣味をと愚痴る。
それに気付いたのか魔獣の羽を欲しがりヴァイスに頭に付けてくれと強請る。
スミリが買い、正確にはミューロなのだが1度、ヴァイスに渡りヴァイスから経由してスミリに戻る。
ヴァイスは照れくさいながらもスミリの髪と髪の間に羽を飾った。
次に別の国のお酒を見つけて一瓶を買うと嬉しそうに跳ねて今日1の笑顔で呑むとスミリは隣の店の新しい剣や武器に目を輝かせる。
その店にはシラヌイの姿もあった。
「やぁ、やぁ!
スミリ、ヴァイス!」
「おう」
返事をしたヴァイスと少し遅れてスミリも答える。
「あっ、お〜う?
久し振り〜だな……!」
「覚えてるんだよね!!??」
「……。
あたりまえだろ。
っで?
なんで此処にいるんだ?」
スミリの問にシラヌイは1度、ヴァイスを見てから申し訳なさそうにクチにする。
「……えっと、その……。
ヴァイスが俺の剣を壊しちゃったからね。
新しい魔法剣を買い足しにね」
「わ、悪い。」
「いやいやヴァイスは悪くない悪くない。
俺の態度も悪かったし。
スミリがまさか覚えてないとは思わなくて…………。
俺、カッコ付けてたもんね」
「そんな事はないぞ、うん!」
「本当!
……かな?」
「いや知らん!
多分な!!」
「あ………うん。
ありがとう。
じゃ、俺はこれで………また。」
余程、幼馴染みのスミリに忘れられていたのがショックでヴァイスに粉砕されたのがトラウマなのか手には数本の剣を抱えながらトボトボと帰っていった。
「悪いこと……したな。」
「そうか?」
スミリ達はシラヌイとは逆方向に歩き出すとデートは再開された。
グローブ型の魔法具と、おそろいの上着を買いスミリは噴水の周りの石垣の上を踊る。
その片手の甲にはヴァイスの手が添えられており円を描くように噴水の水を指揮に2人が踊っている姿は様になっている。
水が太陽光を反射して頭の羽が光って余計に神秘的に見えた。




