ログ#16「容疑」
今回もセンシティブです。
これはマジでセンシティブだと思います。
R15以上かもしれません。
運営とかから注意されるのかな?
そしたらどうしよう。
ちょっと長いです。
彼女は1人残された肉親を1人っきりで世話していた。
家族は祖父しかおらず嫌ってもいない。
だが毎日同じ時間に起床して祖父の世話をしなければならない。
そんな毎日の始まりに疑問は不意にやってきた。
自分は後回しで、したい事は出来ない事の方が多かった。
祖父は我儘でも無く、良くしてくれると彼女を褒める。
好きにしてもいいとさえ言う。
だがそれをすれば祖父は死んでしまうだろう。
本当は今直ぐにそう吐き捨てて飛び出したい衝動に駆られるがグッと喉に下がる。
彼女自身も祖父の世話に不満は無い。
ただこの同じ毎日に嫌気が差しているだけだと実感していた。
同い年の友人達は戦士や自警団として村のためになる事をしている。
お喋りを楽しみ、食事に花を咲かせているだろう。
そんな他愛ない事が異様に懐かしく感じる。
溜め息が零れる。
自分の赤切れた、肌の荒れた、しわくちゃの手を見て不意に鏡に急ぐ。
数年前までの自分の顔から笑顔が消えて今まで何も思わず見ていた顔が急に老け込んでいることに気づく。
不満もないそれは心から来る感情だ。
しかし彼女の女としての綺麗でいたい。
誰かに見られて褒められたい。
少しでも遊びたい。
誰かに会いたい。
そんな塵積もった欲望が今、決壊した。
開いた穴から勢いよく溢れる感情は怒りとは違う感情として彼女を支配する。
彼女が始めて身に任せた感情、それは殺意だった。
気が付いた時には祖父の部屋の前にいて笑顔で迎え入れた祖父を殴り首を絞めていた。
最初は驚き抵抗していた祖父も諦めたのか、そんな力が無いのか彼女にされるがままに絶命していた。
我に返った彼女は手を放して後退る。
手が震える。
感情が爆発した、後悔は遅い。
これで皆と同じように遊べる。仕事が出来る。
自分の、本来の時間が姿が戻ってくる。
自然と笑っていた。
だがそれよりも自分が殺してしまった事実とこのままでは村の人たちに捕らえられ親族を殺めた罪で死刑を言い渡されてしまう。
自分が死ぬ。
そう考えると恐怖が覆い被さってくるようだった。
涙が止まらなく流れた。
笑いながら泣いた。
そして彼女は悲鳴を上げて家の外に出た。
意を決して演じた。
この村には数日前に来たばかりの余所者がいる。
その男に罪を擦りつければ自分は捕まらない。
助かるんだと思うと足が軽くなっていた。
「それに私は悪くない。
おじいちゃんも許してくれる。
だって私は悪くないもの!!」
そこに悲鳴を聞いた隣人達が駆け付ける。
「アコちゃん!?
何があったんだい!!」
「凄い汗じゃないか!?
大丈夫かい!」
「お、おじいちゃんが!!
おじいちゃんが死んでるの!!
誰かに首を絞められて殺されたみたいなの!!
助けてっ!!」
「なんだって!?」
そして彼女はヴァイスが犯人だと誘導するとヴァイス捜索が始まった。
◇◇◇
彼女を庇い、ヴァイスを犯人だと一方的に決めつけていた村人達の1人がアコはオキ老人の孫だと言い切る。
「他の家族は?
いや他の住居人いるのか?」
「二人暮らしだよ。
それがなんだって言うんだい!」
ヴァイスの問いでユーリは気づく。
スミリは気付いてこそいないがヴァイスを長年付き添った家族のように信頼しているため微塵も疑っていない。
「っ!?
まさか、でもそんな!?」
「なんだユーリ!?
………うーん?
でもヴァイス………先の戦争の影響で両親をな。
アコはな………。」
「よく分からんが詳しくは聞きはしない。
それは別としてもだ。
態度からも明白だろ?
1人だけ様子が違うんだぞ!
家族を殺されたから来る悲しみ、悲壮や傷心ってよりは違う動揺に見えるんだが?」
ユーリの様子、ヴァイスの言葉で先程までヴァイスを睨み怪しんでいた村人達もアコに疑いを持ち出していた。
「ちがう!!
私じゃないわ!!
その男に決まってるじゃない!!」
「アコ、どうしてヴァイスだと思うんだ?
さっきも言ったろ、ヴァイスは私と森にデートに出掛けてたんだ。
なんで決まってるんだ?」
「だっ、だって他に誰がやるのよ!?
ねぇ、この村で誰がおじいちゃんを殺すっていうの!!
教えてよ!コイツでしょ?
ねぇ!!」
「おまえだよ」
「そんなハッキリと!!」
流石に酷い言い草のヴァイスをユーリが窘める。
「なら白黒付けるか?」
「はぁ何をいいますの?」
「その爺さんの死体を見せろ!
それで終わる。
あるんだろ」
ドローンで知っているがヴァイスは知らない体を装う。
「そんな事できるかよ!」
「言ったろ!
俺は無実の罪で捕まるのは嫌なんだよ!
誰だって、してもない罪を強要されんのは嫌だろが!」
歩き出すヴァイスとそれを追うスミリとユーリ。
「あっおい待て!
皆行くぞ!」
「ヴァイスに任せておけ。
全て丸っと収まる」
「なわけ無いでしょ!」
常識人はユーリだけのようだ。
アコの自宅に到着すると家の前に騎士が門番のように他の人達を入れないようにしていた。
「死体は?」
少しの野次馬と戦士達、それらを気にせず入ろうとして止められる。
「ヴァイス!?
お前が犯人だと聞いたが?
大丈夫なのか?」
彼はヴァイスと訓練をした事のある村の戦士の1人だった。
彼はヴァイスに厭忌の感情を持っていない人物でもあった。
「いや違う。
それで?
死体は家の中にあるのか?」
「オキ爺さんの遺体ならまだ動かしてはいない。
けど、どういう事なんだ?」
「ヴァイスは無実の罪を暴こうとしてる。
別に犯人がいるんだ!」
スミリが戦士に言うと家に入ろうとする。
「おいおい、ちょっと待てぇ!!」
後ろから遅れてアコや大人達もやってきて他の戦士らも駆け付ける。
家主がいるならと許可が降りて家に入っていく。
部屋には布を1枚、掛けられた老人の遺体があった。
(埃や塵が舞ってる。
換気はされてない。
それだけで誰が犯人かを割り当てられるんだが………。
仕方ない)
光に舞う埃と塵を見て膝を折ると遺体に被せられた布を捲り取るとヴァイスは口を開く。
「首元は服装で隠れてる。
この爺さんを見つけた時、その女はなんて言ったっけな?」
「だから殺されてるって!」
「違うな。
首を絞められて、だろ?」
監視映像で過去の会話を確認済みのヴァイスが大人の1人に問う。
「そうだった気もするが、それがなんだって言うんだよ!」
「爺さんが死んでるのを見つけてから、この家に他に入った者は?
答えろ」
ヴァイスの勢いに飲まれて戦士がポロっと答えてしまう。
「この人達と俺達、戦士の数人だ。
それ以外は入れてないです。」
「そういう事ですわね。
分かりませんの?
ぱっと見……コホン。
一見しては倒れているのは分かっても首を絞められた、なんて事は分かりませんもの。
それに玄関先に出てきた時に酷く動揺していたのなら尚の事ですわ!」
「そういうことだな!」
「うんうん、流石スミリですわ!」
「スミリは何もして無いだろ。
まぁ、俺が言いたかったのはそういうことだ」
「どういう事よ!?」
「はぁ……………だから、なんでお前が知ってんだって言ってんだよ!」
「そ、そんなの偶々、見えたのよ!
それに生きてるか死んでるか位、確認する為に触るでしょ。
だから分かったの!!」
「そうか?
だがアンタの体は正直みたいだぞ?」
「どう言う意味よ!」
「俺の持つ魔法道具みたいな物があるんだが………。」
言うと空中に半透明のウインドウが現れてデータが表示される。
「この部屋の空気、その中にある。
誇りや汚れ、毛に指紋……手の形みたいな奴なんだが、俺は勿論のこと他の人物の者も無かった」
ウイングには次々とデータが表示されてゆく。
「そんなの嘘を見せてるだけでしょ!」
「魔力!
魔力も人それぞれで血筋、形に濃度、紋様、波紋、1つとして同じじゃない。
その浮いてる板に手を当てて見ろ。
嘘なら問題ないだろ?」
「い、いやよ!
そうよ、だって信じて無いんだからする必要もないはずでしょ?」
「そうか?なら次だ。
臭い、緊張、視線。
そのどれをとってもアンタは嘘を付いてると現してる。
まず匂い、酷いストレスだ。
体臭じゃないぞ。
嘘を付いてる匂いなんだ。
始めて会った時から匂ってたぞ。
極度の緊張状態、体温・脈拍・心拍、自身の嘘がバレないかと気が気じゃないから通常とは違う。
それらが体の表面に出てるんだ。
あと嘘を付く度にアンタ、上を見てるんだが気づいてたか?」
「だから何だって言うのよ!
目だの匂いだの体温ってさぁーーーー。
やってないって言ってんだろが!!
お前なんだよ!
お前がぁ!!
お前がおじいちゃんを殺したの!!
捕まえてよ!!」
「その手だ」
「え!?」
ヴァイスを指した右手をヴァイスが指差す。
皆の視線がアコの右手に集まる。
「それ、うっ血してないか?
少し腫れて変色してる、始めて人を殴ったんだろ?
それも強く。
拳が内出血した証拠だ。
さっきは手を出すのを拒否されたが、人ってのは咄嗟に利き手が出るもんなんだ。
知ってたか。
人を指差す時、人を殴り殺そうとする時……とかな」
「と、取り押さえろ!!」
戦士がアコを捕まえるように指示する。
「待ってよ、待って!!
これは違うの。
そう、その、そう!
だから……昨日喧嘩して、それで、いや違うの!
おじいちゃんじゃ無いのよ。
村の子供のケンカを止めようとしてそれで弾みで殴っちゃたの。
だからこれは違うのよ」
「そのうっ血の状態から昨日じゃなく今日の、それも数時間前なのは明白なんだが………。
そんな見え透いた嘘も直ぐバレんだろが。
あーもう面倒い。
NS、この村の記録映像で見せた方が早くないか?」
『宜しいのですか?
では犯行映像がコチラになります』
それは犯行の一部始終のアーカイブ映像だった。
「うわ!?
なんだこれは!!」
「俺の魔法道具だ」
「見た事もありませんわよ!?」
「私はある!!」
「これは…………もう言い逃れ出来ないよアコちゃん。
大人しく捕まってくれないか?」
「嫌よ。
嫌々嫌々嫌なんだから!
それにこれも嘘の可能性があるじゃない!」
「それは無いな!!」
「なんでよ!!」
「なんでか?
それはこの上の所にある時間!
見てみろ、その時間は私がヴァイスを川辺で小一時間程、説教していた時だからだ!」
『はい、それはコチラですね』
「あっ!?
おいバカ止せ!!」
「わぁ、河原に正座で1時間なんて!
流石はスミリですわね!」
「ふふふん!」
「なんでだよ」
「ヴァイス……。
もう尻に敷かれてんのか………頑張れよ」
「ほっといてくれ」
「ちょっと!
ふざけないでーー!
私じゃ無いって言ってんじゃないのよ!!
有り得ない!
私じゃ無いのよホントよ!!
信じてよ!!」
「おい目を見て言ってみろ!」
ヴァイスがアコに言う。
醜態を見られた雰囲気から一転、項垂れていたが起き上がりアコの前に立つ。
「はぁ何なのよ。
ありえない!!
ふざけんな!!
だから私じゃ無いって何遍も言ってんでしょうが!!」
「俺のじゃね〜よ!
アンタの爺さん、祖父にだ。
爺さんの目を見て、もっぺん言ってみろって言ったんだ!!」
「え!?」
「亡くなってるが目は開いてるぞ!
家族の祖父の目ぇー見て、もういっぺん言えっていってんだ!
爺さん、最後は抵抗するのを止めてるな。
最後の最期に思ったのは生きたいという渇望でも孫への恨みでも無く、アンタに殺されてでもアンタを楽に出来るなら死んでも良いって言う。
親心……祖父の孫に対する愛だったんじゃ〜か!
だから泣いた跡がある。
違うかよ、えぇ?」
アコは泣き崩れた。
目を見て言えなかったからでは無い。
祖父の顔を、祖父の目を見るとこれまで過ごして来た思い出が浮かんで来たからだ。
それこそ楽しい事ばかりでは無かった。
辛い事や嫌な事も有った。
だが幼少の頃、まだ両親がいて祖父が祖母がいる。
そんな思い出や昨夜の何気ない夕食で2人で会話した事が笑った事が彼女に今更になって後悔が重く押し寄せた。
答えは最初からアコの中に、心にあった。
だが気付いていなかった。
気付こうとしなかっただけだ。
「帰るぞ。
………疲れた」
「うん!
へへへ〜〜容疑は晴れたな!
帰ろうヴァ〜イス♪」
「ちょっ、ちょっと!?
仕方ありませんわね!
それでは後の事は任せましてよ!
ちょっと待ちなさい。
スミリのドレスの件が有耶無耶になってません事ぉ〜?」
村の中の帰路でスミリがヴァイスに疑問を口にする。
「なぁヴァイス〜?」
「なんだ?」
「ヴァイス位になると見ただけで犯人が分かるのか?」
「いや、そんな完璧超人とは程遠いからな。
真面目に推理しても良かったんだが今回は答えを最初から知ってたからな」
「あのエヌシィーって魔法道具でか?」
「……そうだな」
「ヴァイスって森に見えないように家を隠してよな。
今はウチの庭にある奴。」
「……あぁ…そうだな。
離れていても、俺がそこに居なくても見えないで殺す位は簡単に出来るな。
出来るは出来るんだが余計に疑われるだろ?
それにやってもない罪を被るのはな」
「………ふん。
冷たく見えてヴァイスも温かい心があったんだな」
「何言ってんだ。
……そんな物、とっくにもう無いさ」
「ふふん。
嘘は良くないな!
嘘付いてる時の匂いがするな!」
「うるせ〜」
屋敷の前にはトミー達がスミリ達の無事の帰りを待っていた。
それを見つけてスミリは手を振る。
介護をしていた少女の末路は誰も救われなかった。
村の誰かが隣人が介護の手助けを申し出ていれば何か結末は変わっていただろうか?
それは今となっては分からない。
多感な時期の少女、1人に背負わせてしまった重荷は村に小さな不和を残した。
最初、此処が書きたくて始めました。
匂いのストレス、仕草、目線で犯人言い当てるの………カッコイイ。
けど作者の力不足なのか……当初とだいぶ違うんだけどね。
あと某映画ア●ターぽくね?と先日思いまして、ちょっと作品を視聴確認しました。
似てる所とかのを軌道修正します。
書いちゃったもんは仕方ないので、これ以降の話しはあんま似てないから良かったんだけど、成人の儀式的なのは保留にして先延ばしさせます。
村の人たちに完全に受け入れられるの何時になるのか……。




