ログ#12「宴会」
タイトルに〝うたげ〟ってルビしたい
集会はお開きになりヴァイスの歓迎と勝利を兼ねて宴会が始まる。
サギソーウがの犯した粗相や無礼の詫びがしたいと村長自らお酌をする。
断われきれずヴァイスは一杯呷る。
だがしかし、それよりもヴァイスの頭には疑問が浮かんでいた。
それは宴会会場に有った。
村のほぼ全員がいるのではないかと言わんばかりの大所帯が今行っている宴会は集落内にある墓地・霊園だったからだ。
「ん?んん?ん〜ん?
お墓の前で馬鹿騒ぎをするのが不思議って〜?
それは、その方が楽しいからだぁ!!」
デカい胸を揺らせてスミリが自信満々に背を仰け反らせる勢いで胸を張る。
「それは答えになってないだろ……。」
的確な回答に勢いを弱くなりそうになるもヴァイスの耳に近づくと小声で唇を開けた。
「恒例行事でな。
村の霊祖に嬉しい事やお祝い事の何かがあると報告を兼ねて宴会を墓前で開催するんだ。
ここだと祖先にも見えるだろ?
一緒に祝福できるように同じ酒や食べ物も供えるから感謝も忘れないしな!!」
「ここの人たちは懐が広い。」
「そうだよ…………私の先祖はこの墓には眠っていないけどな。」
「……俺もだ。
でも楽しめるし、楽しめてるから良いんじゃないか………。
辛気臭い顔してると霊祖様に笑われちまうぞ!」
「ふん!
心配ない。
みんなと一緒に霊祖も笑って飲んで食べてる。
今さら笑われても私も笑えばいいんだ!
なっ、ヴァイスも笑えよ!!」
「ふがっ!?
やべ、やめほぉ〜〜〜!
ったく。
もう酔ってんのか。
うわ〜全員出来上がっちまってる、最悪だ。」
ヴァイスは酔わない。
改造した際にそういう機能が軍務規定で義務付けられているからだ。
そして任務中だったため自動で解除は出来ない。
それが未知の田舎惑星で通常よりアルコール度数が強かったとしてもだ。
「あれどうやったんだ兄ちゃん」
「ヴァイスってのか良い名前だねぇ」
自警団員は勿論のこと村を歩けば遠巻きに見ていた村人達も肩を組んできたりと話し掛けては乾杯しにくる。
「凄ぇ〜ぜ、ヴァイスぅ!
こりゃ俺達も、うかうかしてられねぇ〜や!
明日から訓練増やすぜ!!」
ゴンズイが自分に喝を入れて双子のトベラとニガナがジトッと見て一言ずつ言うと逃げて行った。
「ヴァイスは……ホントに人間?」
「ううん、多分バケモノ!!」
チガヤは無言で若干強めにコツンっと腕をクロスさせて乾杯をすると去って行く。
「やるじゃん…………じゃっ。」
「ワイルドだな〜」
「なんだとぉ〜!?
私のがワイルドだぁ!!」
「うるせ!
ってかクチクサァ!
近寄んな。」
「なんだとぉー?
ヴァイスが悪口ゆったーーーー!!!」
またキブシが酔うと早口で物事をハキハキする1面がある事を知ったり。
ユーリが絡み酒でグチグチと文句を巻くし立てたりシランはそんなヴァイスの苦労に笑いながらうんうんと頷いては酒を飲んでいた。
「よーおッ、ヴァイスぅぅぅぅ!!」
泣きながら現れたのはシラヌイ。
もう出来上がっていて彼は泣き上戸だった。
「あんなに強いなんてな!
今度こそ決着つけようぜぇーーーーーーん!」
「なぁ、なぁ俺も酒飲みたいじょーーー」
子供のトラノオが愚痴り、それを窘めるウツギと呆れるレン。
「ダメだよ〜
僕らは飲んだら死んじゃうんだよ〜」
「えーーーマジかよ!?」
「本気よ」
「あーあー、ガキ共!
もう寝る時間はとっくに過ぎてるんだぜぇ!!
ほら送ってやっから帰んべ!
へいへい集まれチミっ子達ぃ!!」
そんな彼らや他の子供達の面倒をみているのは、やはりクチナシだった。
「1人じゃ……大変だもん、ね。
私も手伝います!」
エビネが名乗り出ると他の村人の女性等も手伝いを買って出る。
「人数多いからね。
私もやるよ。」
「ソヨゴさん!?
あ、ありがとうございます!」
「ううん、お礼なんていらないよ。
あっヴァイス君って言ったね。
良い試合だったよ。
また戦う所、見せてね♡
あっ駄目だよ。
私には旦那がいるからね!」
「姐御ぉぉお!!
ヴァイスは私のもんだよぉーーー!!!」
「おっスミリか、そんな事も言ってた気がするね!
おっ、エビネかい?
エビネが呼び出そうにしてるから、そんじゃ〜あ〜ね〜!」
知らない歌、知らない振り付け、知らない楽器での民謡での歌えや踊れ飲めよ食えの大騒ぎの、どんちゃん騒ぎは朝方まで続き、そしてそれに付き合わされるヴァイスは酔いではない感情で白目を剥いていた。
何故ならスミリが片時も抱きついた腕を離さないからに尽きた。
帰り道の事──
「俺が離れられないの言うなよ。」
「ふふふふふん!
それだけ聞くとロマン・チックだりゃ!
けへ、喋ってなかっただろろろろろろ!!」
「うべっ!?
ちょっと爪先に掛かったぞ!!」
「………………え!?
ごめんちゃい!」
「はぁ、ここは騒がしいな………。
笑いが絶えない。」
「ん?何か言ったか!?」
「なんでも無い。
………弱点になるから言うなよ」
「お?
おぉ〜〜なるほどれ!
分かったぞぉーーーー!!!
……で?
誰と離れられないって??」
「んぁ?
…………お前とだろ。」
「お・ま・え?
だぁ〜れぇ〜のぉ〜こ〜と〜か〜な〜??」
「はぁ〜……………スミリとだ。」
「おほほほほほ!
えへへへへへへへへへ〜」
「これで満足か?」
「今の所はな」
朝になっても残っていた者たちは酔いながらも汚した後を綺麗に掃除して拝んでから帰っていく。
まるで太陽に怯える怪物のように。
◇◇◇
スミリの屋敷にはトミーがお出迎えのように暖かく待っていた。
「お帰りスミリ。
ヴァイスくん。」
「ただいま父様!」
「うっす」
「ジェマは赤ん坊の世話があるからね。
もう寝ているよ。
集会に行けなくて悪かった。
身内のスミリと罪人としてのヴァイスに匿った罰として参加出来ないと言われてね。
もしものためにスミリ達が逃げる準備はしたんだがね。
良かった。
丸く収まったんだね!」
「そうですね。
今の所は、ですけど」
「そうだね、根本的な解決には……だね」
「ん?
何がだ?
それよりもう眠いから寝たいんだが?」
「あっ、あぁそうだね。
おやすみスミリ!」
「おやすみなさい父様!
ほら行くぞヴァイス」
「あぁ………おいって。
俺は別の部屋だろうがよ!
いい加減に離せ」
「何を言ってるんだ!
聞こえんなぁーーあーーあ〜あーー!!」
「仲が良いことだ…………って婚前前だよ!!!
まだ早いよーーーー!!!!」
追い掛けようとして止める父親と引き摺られていく夫 (予定の男)と妻 (予定の女)の一幕にクスリと笑いが込み上げて、そして泣いた。
号泣に執事長は冷静に対処する。
◇◇◇
仕方なくヴァイスは今朝、用意されたばかりの客間から移動した部屋に酔っているスミリも連れて入りクネクネするスミリを昨夜のは逆になって寝かせる。
寝台の上で───少しして。
「ありがとうな」
「何がだよ」
「なんでもだ、ありがとう。
……おやすみ」
「あぁ………普通に考えて、いきなり一族に迎え入れるのに反発がない方が変だからな。
わりかし早い部類なんじゃないか。
ここの連中は良い奴だよ」
「うるさい」
「悪い…………なんだよ」
スミリがヴァイスに目で訴えているのに気づく。
「まだ返事が返ってきてないんだがな。
気のせいかなヴァイスくん?」
「はぁ?
何言って………ちっ…おやすみ」
「ちって言った、ちって〜〜!!」
「うるせぇ、もう寝ろ!」
「ちぇっ!」
ヴァイスが布団を手に背を向けて言い放つ、その言葉を最後に誰もは口を閉ざして寝息だけが部屋に聞こえてくるようになった。




