ログ#13「作戦」
もう朝だが村は静まり返っている。
大騒ぎだったヴァイスを迎えた宴会で大人数が早朝になって帰宅したため、その殆どが朝方に就寝したからだ。
数少ない者たちだけが毎日のように朝の支度を始めては仕事に取り掛かってゆく。
「あら、トーミ?
スミリが部屋にいないんだけど〜?」
「スミリなら昨夜のヴァイスくん歓迎の宴会でさっき帰ってきてヴァイスくんと一緒に眠っているよ」
「あらら、そうなの?
仲良しさんね!
なら今日はお昼過ぎまで寝かせて上げましょうかね」
「そうだね。
僕は集会での詳細を聞いてくるよ」
トミーとジェマが通路で話終えてトミーはオノウを連れて屋敷を出て行き、ジェマは直食へと食堂に向かった。
そんな中、暫くしてヴァイスが上半身をムクリとさせて起き上がる。
「やっと寝たか……。
どこまでだ?」
ヴァイスの問にNSの操作する遠隔子機が形を表す。
『惑星全体の詳細なマップ化を完了しました』
「分かった。
探査機はどうだ?」
『周辺宙域の探索でもやはり未開の宇宙が続いています。
返信は無く結果は芳しく有りません。
同時進行でテラフォーミングを具申いたします』
「分かったよ。
だが抵抗はさせてもらうぞ」
『抵抗ですか?』
「あぁ。
アーカイブを探して面白い物を見つけた。
オペレーション・ウイングアップルだ」
『…………なるほど。
随分と古い物を見つけました。
少佐と類似した案件が有ったのですね。
彼の場合は宇宙船が故障し、また銀河黎明期だった事も悪い方向に手を貸して未知の惑星に降り着いたと、そんな彼は本船・母星の救助があるまでにその星でサバイバルをしたり現住民とコンタクトをして生き残りその後、救助後に惑星は銀河交流を持つまでとなったと言う訳ですか。
分かりました。
オペレーションウイングアップルを開始したいのですね』
「そうだ。
違うのは俺達は母星と連絡が取れず帰れるかが未定な事だ。
それにウイングアップルの下になった人物は軍人では無く貨物船とその運送業者だった。
時代が時代だけにどこまで荷物が有ったとか技術も今程発展はしてなかったが彼は生きて帰還しその惑星のネイティブと友好関係を気付いた。
それが俺に出来る訳がない」
『そうでしょうか?
少佐は人付き合いが上手な方では無いかもしれませんがスミリ様との関係は良好その物ですよ?』
「個人的には彼女……。」
『なんですか』
「スミリが、すんなりと俺を助けたのも納得がいってない。
まぁ助けたのは人柄だと言われれば、それもそうかとしてもだ。
それは差し引いて受け入れたとしてもだ。
なんて言うか結婚だの夫や旦那だの心を許す速度が気になるって言うのか?
異様に早くないか?」
『知りませんよ少佐ご自身でお聞きください』
「……………分かった。
オペレーション・ウイングアップルを実行すればいいんだろ!」
『お待ち下さい少佐。
オペレーション・ウイングアップルとは最初に行った彼に因んで付けられた作戦名称です。
そして彼は宇宙と交流を持たなかった星に翼も持つ身として知恵の果実を与え知識や見解を広めて自治権を認めら加盟するまでになりました。
その後も少ないですがオペレーション・ウイングアップルかは別としても是迄、調査部等が未開の惑星にて実行しているのは大小あれど植民か入植等の開拓や、加盟惑星の資格なしと殲滅するかのどちらです。』
「あぁ、そうだな。
俺は軍人だ。知ってるつもりだ、それも今回は俺1人の裁量のサイン1つでそれを行うからな。
だからオペレーション・ウイングアップルなんだよ。
俺に見定めるだけの……決断するだけの……権利はあるが資格や が無いのか……………多分無いがしなくちゃ行けないなら俺にも、この惑星にも猶予をくれって思っちゃったんだから仕方ないだろ。
パーフェクト人間でも鉄の心の無感情なロボットじゃないんだ。
こんな時くらいはな。
人で在らせてくれ……。」
『未交流の惑星に宇宙人類が接触すると神や天使のようになると言われますが、それは知能指数が高い地球産の人類に似た進化を成した場合や違った進化をした種族でも同じです。
ですが中にはその惑星出身の者からすれば領土を奪いにした侵略者の悪魔とも見られる。
少佐はこれまで数々の戦場や星での戦闘で活躍し勲章や沢山の功績が御有りだというのに天使にも悪魔にもなる御覚悟が無いと言うのですね』
「ハッキリ言ってくれるな………。」
「お門違いだからって逃げてもいられないんだ。
軍の責務……義務がある。
何より……もう…1人では死ぬだけだしな。」
『少佐が感情を吐露するとは珍しい。
それほどスミリ様達との邂逅は貴方に良い物を変化を与えましたね』
「どうだかな。
分かったよ、考えてても何も変わらないしな。
覚悟か………。
連絡が取れない………任務も中止だしな。
休暇だとでも思って自由にしてみるよ。
……軍人としての責務を果たしながらな!」
『そのような趣きで良いと思いますよ少佐らしいです』
「知るか……。」
『ではオペレーション・ウイングアップル……いえ、少佐がこの星に墜下した天使、堕天使と掛けてオペレーション・フォールンとでも名付けましょうか』
「ふん!」
話が一段落ついた所でヴァイスはベッド上に表示されているデータを見ながら溢す。
「それにしても、この村を不用心過ぎるな。
狙っているのが帝国だけとしてもだ。
俺が間者じゃ無かったから良かったが是迄も事なきに終えてるが危うい…………いや、いるじゃないか内通者が!」
『はい、どのようにしますか?』
「そうだな……今は手を出さない。
現在のタスクは状況的にも宴会に参加していない氏族長とその氏族の幹部達だな。
挨拶した氏族長もいたが動向からも目は離せないし安心でもないな。
サギソーウはヤケでも起こしきそうだし他の氏族長の可能性も高いか1度、裏で密かに好機を待つ位はするだろ。
………勝利条件は俺やスミリが殺され無い事だ。
自警団や家族が死んでもスミリがどうなるか分からないか。
俺がこの村に馴染むのが先だな。
幹部連中を暗殺や外に追いやるのも悪手だよ」
『ではそのように。』
「もう完全に朝だな。
……スミリとの魔法後から、やけに疲れるしな寝るか」
『はい、ではお休みください。』
「そうさせて貰うよ」
ヴァイスが布団を掛けて寝始める。
スミリが寝耳を傾けていた事に気が付いていなかった。
蠢く悪意は彼を中心に種が開花しようとしていた。
彼女はそんな彼の隣に寄り添う事を決める。
善悪の狭間で何が悪で何が善なのか。
選択した、それがどんな意味を持つのかを誰も知らない。
未来は動き出し物語が加速する。




