ログ#7「魔痕」
民族的な建物が門周辺に並んでいたが進む度にその建物に併設されるように近代的な屋敷になったゆく。
途中でシラヌイと別れて見物客の住人が減っていきスミリの家に着く頃には完全な洋館の豪邸に変わっていた。
「これまた異様だな」
ヴァイスの漏らした一言に父親が照れたように溢す。
「元は余所者でね、ワガママを言って建てされて貰ったんだ。」
体格の良いクマのような大男にしては腰が低くヴァイスには丁寧に説明をして我が家に招き入れようとして背広の男性に止められる。
「お客様、入室の前に泥汚れを払って頂けますか?
なんでしたら、わたくし共でやらせて貰っても?」
「彼はうちの執事でね、すまない。
無愛想なんだ」
「あ〜いえ。
こっちで着替えます。」
簡素な上下の服だとしても安易に渡す事は出来ない。
物陰で衣類の汚れを除去しようとして流石に妖しいと服そのものを別の色合いの物に着替える。
何かを感じ取ったスミリがヴァイスの前に立って誰からも見えないようにガードする。
着替え自体は一瞬のブレスレット操作で完了したが1分程、経ってから皆の前に戻った。
「………助かったよ」
「ふふふ、はっ!
ムッフン!
そうだ!そうだ!
父様達は何でも故郷から仲間と一念発起と心機一転を同時に思い立って旅に出たは良いが道に迷って此処に流れ着いたらしいんだ。
マヌケだろう!」
「笑ってやるな、お前の両親恥ずかしそうだぞ」
「良かったです!」
「へっ!?」
母親の言葉と勢いに驚くヴァイスと嬉しそうな母親に次の言葉を待った。
「スミリが選んだ相手が貴方のようなチャーミングでユーモアな人で良かったですわ」
「信用し過ぎだ。
娘さんは能天気なだけで………お人好しの心配過ぎる位にバカなだけですよ。
チャーミングにユーモア!?」
「あらヴァイスさんはもう娘の良い所を知ってるじゃありませんか。
仲も良好そうで何よりだもの!
やっぱり良かったです」
「それに会って分かった。
君になら娘を任せられる。
と言ってもまだまだ負けちゃいないがね」
ゴツい腕の力こぶを作る父親に益々、ヴァイスは呆れながら本題に入ろうとするが手で、まだだと言われる。
執事の男性に促されてヴァイス達は応接間に案内される。
「ダイニングルームと迷ったんだがね。
ここなら誰もいない。」
応接間にはヴァイスにスミリ、そしてスミリの両親の2人だけ。
「なら、そろそろ教えてくれませんか。
この手にある痣の事を」
「勿論だ。
だか魔法による盗聴も心配ない訳ではない。
予防はしておこうか、頼むよジェマ」
「えぇトーミ!」
「魔法でそんな事が!?」
「ん?
知らないのかい。」
「あ、ああ。
そうなんだ、ヴァイスはアホだからな!
底なしのアホなんだーーー!!!」
(ヘタクソか。
これじゃあ隠し事あるって言ってるようなもんだぞ。
いや説明してない俺が悪いな。
寧ろ庇ってくれてる今が奇跡の上………なのか?)
「まぁ〜追々だね。
知らない事は何も悪い事じゃない!
まずは………準備完了したようだし魔痕についてだね」
「ごくり………。」
スミリが喉を鳴らす。
「「魔痕ッ…………。」」
ヴァイスとスミリの声がシンクロする。
「なんでお前っ……、スミリさんが始めて?みたいなリアクション取ってんだ!!」
「始めて発動したって言っただろう!
なんだ、その目は!
………そうだ忘れてたんだ!!」
「詠唱を覚えてただけでも偉いよ」
「娘に甘いですよ、お父さん」
「お父さん!?」
「あ、いえそう言う意味では」
「違うんだ嬉しいんだ。」
「似たもの夫婦だろう!」
「俺に言わせれば似たもの親子だよ」
「「「えへへへへ」」」
同じ笑顔に同じ仕草の家族3人を相手にヴァイスは苦笑いを浮かべた。
◇◇◇
仕切り直した真剣な空気の中で父親トミーは語り出す。
外はもう、すっかり夜になっていた。
食堂に移るかスミリが提案したが間者等を考えて料理を運び入れて食事をしながら話は再開された。
「詳しくは話す時間が足りないから、よいしょよいしょで簡潔に言えば、スミリとヴァイス君の手や身体に現れた痣を正確には魔導の流れの痕、ウィザード・クロスと呼ばれている物なんだ。
術者は生涯に1度、多くても2度使えるかどうかも分からない禁術なんだ。
使用者とを魂のもっと深い所で繋ぎ互いを助けある力。
魔法の1つ上の魔法、道具を必要としない魔導。
2人がどんな契約を結んだかで結び付きは堅く強い。
逆に反故にすると反動も大きくなる。
気を付けるようにね、……………うん。
結婚を祝福するよ」
「幸せにねスミリ!」
「あぁ、ああ!
父様、母様!!」
「はっ?
は!?
はーーーー!?」
「よろしくな!
旦那様、チュッ♡」
「はーーーーーーーー!!??」
驚きと疲れでヴァイスは気絶した。
それは無理もないことだった。
エンハンスドで改造されているとは言え体の構造そのものを丸々と変更されて数分しか眠っていない状態での通常と同じ活動から戦闘等という暴挙に身体が悲鳴を上げないはずが無い。
ヴァイスは久し振りに深い深い眠りについた。
理由はどうあれ。
◇◇◇
ヴァイスの就寝中、同地のグロウの隠れ里。
数人の男達が暗い部屋に集まっていた。
「スミリが連れてきた、あの男は何者だ?」
「帝国の回し者ではないだろうか」
「だとすれば何が目的だ」
「あやつらめ、受け入れてやった恩を忘れたか」
「村長も村長だ。
あのような輩を受け入れた時から年老いたと思っていた。」
「その事を言った所で変わらん。あのボケた老いぼれはそのうちのに死ぬのだ
今はあの余所者をどう処理するかだ!」
「また此処に余所者が1人住み着く等という話になれば敵わないぞ」
「ならば緊急会合を開き、話を誘導すればいいのだよ。
根回しにうってつけの奴がいるからな」
「もしもを考え殺してしまえばいい。
あの娘には秘伝の魔法があるというしな。
若者衆の誰かを宛てがい我らに吸い上げてしまえば用済みだろう?」
どす黒い笑いが起こり部屋を満たしてゆく。
彼らの悪事は花を咲かせて夜が更けていった。
それを見つめる機械の目があるのも知らずに。
◇
スミリの屋敷では父トミー、母ジェマ、そして執事長のオノウが話していた。
「スミリが選んだ男が彼のような人物で良かった」
「そうですか?佇まいや体の動きは立派な物でしたがお嬢様をお守り出来るかは別の問題ではありませんか?」
「そうかしら?
私は彼は大丈夫だとおもうけどな。
何よりも彼女が1人の女として選んだ人だもの」
「うん、うっうっうっ。
昔は父様と結婚すると言っていたのにな………いつの間にか大きくなったなスミリ。」
「早い早いですよトーミ!
今からこんなんじゃ〜式の時はどうするの?」
「うおーーーー!
式の時も泣くさ!
今も泣いてる!!」
「ハンカチをどうぞ旦那様」
「ありがとう、オノウ。
うぅううぅ。
でも今だに君に旦那様と呼ばれるのは慣れないなぁ〜」
「慣れて下さい。
もう何十年経つと思っているんですか団長……おっとこれは失礼しました」
「いや良いよ。
久し振りに呼ばれて嬉しい位だ」
「そうね、父では無い貴方として式の前にヴァイス君で模擬戦でもしたら?
心が晴れるかもよ、この夜空みたいにね」
「そうしようかな。
あの御方に恥じない姿を!
誇りを!
ヴァイス君にも受け継いで貰おうか!」
「それはまだ早いかもね」
「そうですよ旦那様」
「わ、分かってるよ〜〜」
笑顔が溢れ笑いが木霊する。
彼らは果実酒を一杯だけ乾杯してから下らない雑談に話が変わっている事に気付いていなかった。
それに思い至るのは朝方になる少し前、各々が自室に戻った時だった。
専門用語や新規単語が今回も少ないので次話も通常回になります。




