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大団円2

ヤマモトさんとナカムラさんに関しては「誰やねん」と思います。申し訳ありません。

全ての読者の方が忘れてしまった、または割り込まれたことに気づいていないであろうプロローグにて登場する人物です。

 二月九日 午後六時三十分


「こういうところに来るのは初めてかしら」


 そうミツメさんが言うと、イチジョウが「そうだな」と頷きました。私たち奥の院一同は第二演習室にお別れをしたのち、学生通りにある賑やかな居酒屋さんに入りました。サークルと飲み会は枕詞のごとき親和性があるときいたことがありますが、奥の院はそのような場所を潔しとしません。理由はここまで来てくださった皆さんなら安易に想像がつくでしょう。酒に浮かれた大学生は、必ず霊に負けるからです。


「つまり皆様、お酒は初めてなのですか」


 私が訊ねると、先輩たちは一様に頷きます。


「まあ、作戦のためでもあったからな」


「最初は飲みたいと思ってたんだけど、ここまでくるとどこまで飲まないか試したくなっちゃったのよねえ」


「達磨教授と呼ばれる私が酒を飲まぬと知ったら、大学の者たちはひっくり返るだろう」


「……料理酒はいつも使うけどな」


 そんな風に皆様が口々に言うので、私はくすくすとおかしくなって笑ってしまいました。


「ちょっと、今笑ったわね。イヌマキちゃんもまだ飲めないくせに」


 ミツメさんがそう言って頬を膨らませるので、私もつい言ってしまいました。


「ではお酒に関しては、私は皆様より先輩と言うことになります」


 私がそう言うと、先輩方は私を軽く睨みつけます。幼い子供の悪戯を発見したときの様な、そういう咎める目線でした。


「そういうのは堂々と言うもんじゃない」


 とイチジョウさんが言いますが、皆様何か勘違いをしておられるようです。


「未成年飲酒とは……。貴公に似合わず豪快だなあ」


 これに関して、私は小気味良いカウンターを用意していたのです。確かにこれ、誰にも言ってませんでした。


「あの、私はもう二十歳です」


 恐らく、紆余曲折あったこの一年間で、最も驚いた先輩四人の顔を拝むことができました。


「あなた、一年生よね?」


「一年生です」


「なるほど、一年間、海を揺蕩っていたのだなあ」


「フセミさん、鋭いですね」


「なるほど、浪の人か」


「はい。恥ずかしながら……」


「なんで言ってくれなかったのよ。でもそれなら、今日は心置きなく飲めるわね」



 その後のことは、深く語る必要は無いと思います。皆さまめいめいに初のお酒を堪能して、大方予想通りの酔い方をされていました。


 イチジョウさんはかなり饒舌になりました。


 ミツメさんは普段と変わりませんでした(顔が赤くなっていつもより艶やかでした)。


 フセミさんは眠ってしまいました。


 ヨツツジさんは運ばれてくる料理の原材料をぶつぶつと考察していました。


 ……私ですか。私はいつも通りです。踏み込みと酒には強いタイプなのでした。



「あのー、もしかして君、イチジョウさん?」


 不意に隣のテーブルの二人組の男性の内一人に、イチジョウさんが声をかけられました。


「ええ、まあ」


 イチジョウさんは、声をかけてきた男性が誰なのか、いまいちピンと来ていないようです。二人ともスーツを着ているので、大学の関係者ではなさそうです。


「ああやっぱり、奥の院の! 一年前お世話になった不動産業者のナカムラです。君たちのお話を聞く感じ、そうだろうなあと思ったんですよ。先輩、やっぱり合ってました」


 そう言って彼は向かいに座っている先輩らしき男性に、誇らしげに顔を向けています。


「人違いだったらどうするつもりだったんだお前は全く……。まあしかし、間違いじゃなくてよかった。ちょうど去年の今くらいに君たちに依頼させてもらった、ヤマモトだ。いきなりすまなかったね」


 先輩のヤマモトさんは少しくたびれた雰囲気を出しながらも、私たちにお詫びをしてくださいました。


「依頼主の人ね。いつの時かわかる?」


 とミツメさんがイチジョウさんに聞くと彼は「去年の四月十六日。イヌマキの初陣の時だな」と言い放ちました。


 お二人の不動産業者は、大学近くの物件の視察に来たついでに、このお店に立ち寄ったと言います。なるほど、巡りあわせとは奇異なものです。


「しかし君たち、本当にすごいと思うよ。あの後急に買い手がついたんだから。偶然とは思えないよ」


「本当に。有名な住職を呼んでも駄目だったんですからね」


 お二人はしきりに私たちのことを褒めてくださいますが、今日で解散することを告げるととても残念そうにされていました。撃退方法をうっすらと伝えると、二人でやってみるなどと無謀なことを企んでおられました。



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