7話:不死身願望
この物語は、異世界に転生するまでの話です。
子供の頃に思い描いた願望。
その中でも「死なない」という願いは、とても分かりやすく、そして強いものかもしれません。
今回は「不死身願望」。
死なないことは、本当に救いなのか。
その答えが、少しだけ見える回になります。
『第七試合を開始します』
二人が中央へ出る。
一人は痩せた中年男。
顔色が悪い。
どこか怯えた目。
名は田所誠、四十五歳。
「……死にたくない」
小さく呟く。
もう一人はがっしりした男。
無駄のない立ち方。
名は鷹山蓮、二十八歳。
「一発で終わりだ」
淡々と言う。
『第七試合、開始』
鷹山が構える。
『能力名:一撃必殺。対象を一撃で戦闘不能にします』
田所が一歩下がる。
『能力名:不死身。いかなるダメージでも死亡しません』
「……はは」
田所が笑う。
「死なないなら……勝てるじゃないか……」
鷹山が踏み込む。
――ドン。
拳が腹にめり込む。
「がっ……!」
田所の身体がくの字に折れる。
そのまま倒れる。
動かない。
数秒。
「……」
田所が息を吐く。
「……生きてる」
ゆっくり起き上がる。
「ほらな……!」
「死なねえ!」
笑う。
鷹山は何も言わない。
もう一度踏み込む。
――ドン。
顔面。
骨が鳴る音。
「ぐあっ!!」
吹き飛ぶ。
転がる。
動かない。
数秒。
「……」
田所が震えながら起きる。
「……痛ぇ……」
口から血を垂らす。
「でも……死んでねえ……!」
鷹山が近づく。
迷いなく。
――ドン。
肩。
「やめろ……!」
田所が叫ぶ。
――ドン。
足。
「やめてくれ……!」
――ドン。
胸。
「やめろって言ってるだろ!!」
倒れる。
起きる。
また倒れる。
繰り返す。
「なんで……」
息が荒い。
「なんでこんな痛ぇんだよ……!」
鷹山は止まらない。
――ドン。
「がっ……!」
「死なねえのに……!」
――ドン。
「痛ぇんだよ……!!」
田所の目に涙が浮かぶ。
「死なねえのに……!」
――ドン。
「なんで……!」
崩れる。
起きる。
だが、足が震えている。
「……もう……」
声が弱くなる。
「やめてくれ……」
鷹山が構える。
変わらない。
「……降参だ……」
田所が呟く。
「もうやめてくれ……!」
膝をつく。
「こんなの……無理だ……!」
『戦闘放棄を確認』
『敗北とします』
天使の声が落ちる。
「……は」
田所が笑う。
乾いた笑い。
「死なねえのに……」
震える。
「こんなに痛いなんて……」
黒い手が伸びる。
絡みつく。
「やめろ……」
弱く言う。
抵抗はしない。
「死にたくねえって思ってたのに……」
引きずられる。
「……違うな」
小さく呟く。
少しだけ、笑う。
「死ねないってのも……」
息を吐く。
「案外、地獄なのかもな……」
そのまま沈む。
闇へ。
消えた。
『第七試合、終了』
鷹山はその場に立ったまま。
「……」
何も言わない。
ただ、次を待つ。
コロシアムに静寂が戻る。
死なないことは、救いではなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は「不死身願望」の話でした。
死なないことは強さのように思えます。
けれど、その中にある痛みや恐怖が消えるわけではありません。
むしろ終わりがない分、それは積み重なっていく。
今回の一戦は、そんな「終わらない苦しさ」を描いた形になります。
次回はまた違った願望の戦いになります。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




