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妄想具現化バトルロワイヤル〜異世界転生ものが溢れるこの時代に、俺はあえて“転生するまで”を書く〜  作者: qp46


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2話:愛され願望

この物語は、異世界に行くまでの話です。


転生したあとではなく、その前。

そこに至るまでに、どんな人間が何を抱えていたのか。


今回は「愛され願望」をテーマにした一戦になります。


誰にも言えなかった理想や、なりたかった自分。

そんなものを少し思い出しながら、読んでもらえたら嬉しいです。

『敗者は、地獄行きです』


 天使の声が静かに響く。


「……まじかよ」

 男が顔を上げる。


「冗談だよな、そんなのありえ――」

 言い終わる前に、足元が割れる

 石の床が崩れ、暗い穴が口を開ける。


「待て……!」


 後ずさる

 だがもう遅い。


 穴の奥から黒い手が伸びる

 一本ではない、無数に

 足首を掴み、引きられていく、


「なんだこれ……!」


「やめろ!!」


 床にしがみつき

 爪が石を削る

 だが止まらない。


「離せ!!」


「離せって!!」


 床を掴む腕に禍々しい無数の手が絡む

 胴にも  首にも  やがて全身を手が覆う


「助けてくれ!!」


「誰か――!!」


 誰も動かない、いや動けない

 誰も助けない、助けることは出来ない。


「なんでだよ!!」


 叫びが虚しくコロシアムに響く。


「――落ちたくねえ!!」


 そのまま闇に呑まれていった。

 そしてその場には"何もなかった"かの様に

 元に戻されていく石の床。


 


 コロシアムに静寂が落ちる。

 誰も口を開けない、

 全員が理解する

 ここは夢でも現実でもない

 まさに地獄の入り口。

『第二試合を行います』


『転送いたします』


 二人の人影が、ゆっくりと前へ出る。


 一人は女だった。


 派手な化粧に、煌びやかな衣装。香水の甘い匂いを漂わせながら、気怠そうに肩を回している。


 だが、その目だけは妙に疲れていた。


 名は、水木花子。


「はぁ……めんどくさ」


 吐き捨てるように呟き、相手を見据える。


「こんな能力あるなら、私が勝つでしょ」


 対するもう一人は、何も言わない。


 オーバーサイズのラフな服装。長い前髪が片目を隠しているが、それでも中性的な整った顔立ちは隠しきれていなかった。


 竹中奏多。


 ただ静かに立っている。


『第二試合、開始』


 開始の声と同時に、花子がゆっくりと歩き出した。


「ま、いいわ」


 長い爪のついた指先を、奏多へ向ける。


「すぐ終わるし」


 その瞬間だった。


 空気が変わる。


 甘ったるい熱が空間へ滲み、肌へまとわりつく。視線を向けられただけで、頭の芯がぼやけていくような感覚。


 逃げ場を奪う圧。


『能力名:ハーレム』

『異性を魅了し、従属させます』


 花子が艶っぽく笑った。


「ほら」


 一歩。


「分かるでしょ?」


 さらに距離を詰める。


「私のこと、好きになる」


 吐息混じりの声が耳へ絡みつく。


「跪きなさい」


 だが。


 奏多は動かなかった。


 無表情のまま、ただ花子を見つめる

「……あれ?」


 花子の笑みが僅かに崩れる。

「効いてない?」


「……興味ない」

 短く返されたその言葉に、花子の顔から色が抜け落ちた。


『性別:女性』

『能力対象外です』


 一瞬、空気が止まる。


「……は?」

 理解が追いつかない。


 花子は奏多を見つめたまま固まる。

「女だったの?」


 返事はない。

 沈黙だけが返ってくる。


 数秒遅れて、花子の表情がぐしゃりと歪んだ。


「……ふざけんなよ」

 先ほどの誘惑するような甘い声色とは打って変わりドスの効いた低い声だった。


「こっちは、それで生きてきたんだぞ……」

 一歩、後ろへ下がる。


「男に好かれるように」

 悔しさで唇が震える。


「全部合わせて」

 握りしめた拳で爪が掌へ食い込んでいく


「全部やってきたのに……!!」

 なんとか保っていた感情が一気に崩れていく。

 その瞬間だった。


「終わり」


 奏多がポケットから一本の鉛筆を取り出し

 空中に一本の線を引く

 黒い軌跡が宙に残り、その線がゆっくりと厚みを持ちはじめる。ギチギチ、と嫌な音を立てながら形になっていくそれは、やがて鉄塊のような無骨な鈍器へ変わっていた。


『能力名:天才漫画家』

『描いたものを具現化します』


 奏多はそれを片手で握ると、そのまま床を蹴った。


 能力が効かないのであれば所詮ただの女に過ぎな  い、この先を想像して花子が息を呑む。

 

 その想像通りの結末が目の前まで迫るが何もするこ とが出来ずに


 ――ゴッ!!


 鈍い音がコロシアムへ響く。

 鈍器が側頭部へ叩き込まれ、花子の身体が横へ吹き飛ぶ。床へ叩きつけられ、そのまま何度か転がった。


「が……っ」


 起き上がろうとするが、身体に力が入らない。


 視界が揺れる


 頭から流れた血が、冷たい床へじわりと広がっていく。

 奏多は無表情のまま、その姿を見下ろしていた。


『敗者は、地獄行きです』


「……待って!!」

 花子が叫ぶ。


「待てっていってんだろ!!」

 震える腕で床を掴む。


「私は、まだ立てる!!」


『戦闘継続不能と判断』

『敗北といたします』


 その瞬間、床が大きく裂ける。

 先ほどと同じ底の見えない闇が口を開き、まるで生き物のように花子を引きずり込もうとする。


「やめろ!!」

 黒い腕のような影が、花子の足へ絡みつく。


「離せ!!」

 必死に床を引っ掻くたび、ネイルが砕け、指先から血が滲む。


「なんで効かねぇんだよ!!」

 涙で化粧が崩れていく


「私……ちゃんとやってきたのに……!!」


 叫びながら、花子の身体は少しずつ闇へ沈んでいく。


 最後まで伸ばされていた手が、何かを掴もうと空を彷徨い――そのまま暗闇の中へ消えた。


『第二試合、終了』

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は「愛され願望」の話でした。


力は手に入ったとしても、それだけでは届かないものがある。

そのズレや歪みが、それぞれの戦いに出てくる形になります。


この先も、さまざまな「願望」を持った人物たちが登場します。


次回もまた違った戦いになりますので、

よければ引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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