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妄想具現化バトルロワイヤル〜異世界転生ものが溢れるこの時代に、俺はあえて“転生するまで”を書く〜  作者: qp


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1話:ヒーロー願望

この物語は、異世界に行くまでの話です。


転生したあとではなく、その前。

そこに至るまでに、どんな人間が何を抱えていたのか。


今回は「ヒーロー願望」をテーマにした一戦になります。


誰にも言えなかった理想や、なりたかった自分。

そんなものを少し思い出しながら、読んでもらえたら嬉しいです。

 ざわめきが、ゆっくりと収まっていく。

 コロシアムの中央に16人。

 互いの顔を見ている。

 値踏みするように。

 あるいは、自分よりマシかどうかを確かめるように。


『それでは、第一試合を開始します』


 天使の声が乾いた音で響いた。


『対象者を転送』


 足元の石が淡く光る。


「……来るか」


 畠中泰造は小さく息を吐いた。

 逃げ場はない。

 分かりきっている。


 視界が歪む。

 次の瞬間、景色が切り替わった。


 狭い路地。

 コンクリートの壁。

 湿った空気。

 どこかで水が滴る。


「……雰囲気、悪いな」


 足音が一つ、響く。


「おう……起きたか」


 低い声。

 振り向く。


 スーツ姿の男。

 無精ひげ。

 鋭い目つき。

 いかにも、その筋の人間だ。


「……あんたもか」


「“も”だと?」


 男は鼻で笑う。


「ここに来てる時点で、まともじゃねえだろうが」


 首を鳴らす。


「まあいい。運が悪かったな、オッサン」


『第一試合、開始』


 その瞬間。

 男の身体が赤く光る。


「……来た」


 低く呟く。


 スーツが弾け、赤いスーツに変わる。

 胸にエンブレム。

 無駄に決まったポーズ。


「レッド……参上」


「……は?」


 泰造の口から、素直な声が出る。


「なんだそれ」


「見てわかんねえか」


 男が顎を上げる。


「戦隊のレッドだ」


 一拍。


「ガキの頃なりたかったやつだ」


 少しだけ目が泳ぐ。

 すぐに笑う。


「ま、現実はこれだがな」


 踏みしめた足元にヒビが入る。


「でも力は来てる」


 地面を蹴る。

 速い。

 重い。


「ッ!」


 泰造は身体を引く。


(単純強化か)


 そのとき。

 ふっと、自分の輪郭が抜ける。


 腕が消える。

 脚も、胴も。

 気配が薄れる。


 ――だが。


 “そこ”だけは消えない。

 身体に付いたまま。

 同じ位置に、はっきりと残る。


「……」


 一拍。


「……そこは消えねえのかよ」


 思わず出た。


「は?」


 男の視線が、ぴたりと止まる。


「なんだあれ」


「……見るな」


 低く言う。

 だが無理だ。

 目印が一つだけ、堂々とある。


「おいおい」


 男が笑う。


「目印付きの透明人間かよ」


 踏み込む。


「派手にぶん殴って終わりだ!!」


 拳が振り抜かれる。


 ――瞬間。


 泰造はその場で背を反らす。

 足は据えたまま。

 腰を落とし、胸を天井へ向ける。


 ブリッジ。


 上半身だけが、拳の軌道から外れる。


 風が頬をかすめる。


「避けたァ!?」


「……避けてねえ」


 息を吐く。


「通しただけだ」


 視線は、まだ“そこ”に釘付けだ。

 なら、上が空く。


 ブリッジのまま、肩をひねる。

 最短の距離で拳を走らせる。


 ――ドン。


「がっ……!」


 鈍い音。

 男の身体がよろける。


「……悪いな」


 声だけが届く。


「視線ってのは、簡単に引っ張られるもんだ」


「てめぇ……!」


 振り向く。

 だが、見えない。


 “そこ”だけが、まだそこにある。


「そこだなァ!!」


 狙いを定めて踏み込む。


 泰造はまた背を反らす。

 足は動かさない。

 腰で逃がし、胸でかわす。


 ブリッジ。

 ぎりぎりで外す。


 拳が通り過ぎる。

 その背後で、すぐに体勢を戻す。


 ――ゴッ。


「ぐっ……!」


 短い打撃。

 確実に当てる。


(……一人だ)


 間合いを測る。

 力はある。

 速さもある。


 だが、繋がらない。

 視線は一点に固定される。

 だから、上が空く。


「……あんた」


 ぽつりと落とす。


「その力、本来は一人で使うもんじゃないだろ」


「はァ!?」


 男が吠える。


「レッドはなァ!!」


 一歩出る。


「真ん中に立つもんなんだよ!!」


 拳を握る。

 だが、次が来ない。


 横も。

 後ろも。

 誰もいない。


 歯を食いしばる。


「……クソが」


 吐き捨てる。


「仲間がいなけりゃ意味ねーじゃねぇか!!」


 声が路地に響く。


 泰造は静かに見る。


「……そうだな」


 一歩、踏み込む。


 死角。

 呼吸を合わせる。


「今は一人だ」


 最後の一撃。


 ――ゴッ。


「が……っ」


 男の身体が崩れる。

 赤いスーツが、ゆっくりと消えていく。


『勝者、畠中泰造』


 視界が歪む。

 コロシアムに戻る。


 周囲の視線が集まる。

 さっきまでの空気はない。


「……やるじゃねえか、オッサン」


 誰かが呟く。


 泰造は何も言わない。


(……まだ、終わってねえのか)


 胸の奥で、静かに何かが動いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は「ヒーロー願望」の話でした。


力は手に入ったとしても、それだけでは届かないものがある。

そのズレや歪みが、それぞれの戦いに出てくる形になります。


この先も、さまざまな「願望」を持った人物たちが登場します。


次回もまた違った戦いになりますので、

よければ引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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