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妄想具現化バトルロワイヤル〜異世界転生ものが溢れるこの時代に、俺はあえて“転生するまで”を書く〜  作者: qp46


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10話:時をとめたい願望

『第十試合を開始します』


 二人が中央へ出る。


 一人は派手な身なりの男だった。

 腰をくねらせる仕草と、妙に色気のある立ち方。

 その姿はどこか芝居がかっているのに、不思議と場に馴染んでいる。

 阪本 多一郎、四十九歳。


「やだぁ〜」


 肩をすくめる。


「ここまで来ちゃったじゃない」


 もう一人は、どこか頼りない男だった。

 少し猫背で、全体に覇気がない。

 腰には玩具のような剣。

 胸元には安っぽい鎧のような装飾が揺れている。


 だが、その目だけは真っ直ぐだった。


 小野寺 勇太、三十二歳。


「……俺は勇者だ」


『第十試合、開始』


 足元に光が浮かび上がる。

 小野寺の身体に、現実離れした気配が宿る。


『能力名:勇者。ゲームの勇者の力を再現します』


 阪本が興味深そうに覗き込む。


「なによそれ」


「ほんとにゲームじゃない」


「そのままだ」


 小野寺は短く答える。


「俺は最強になる」


 次の瞬間、踏み込んでいた。


 ――ドン。


 空気を裂くような速度。

 阪本は身体をひねり、紙一重でそれを避ける。


「やるじゃない」


 口元を上げる。


「でもねぇ」


 息を止める。


 一瞬、世界が止まった。


 音も、動きも、すべてが凍りつく。

 その静止の中で、阪本だけがわずかに位置をずらす。


 息を吐くと同時に、時間が戻る。


「……はぁ」


「短いのよねぇ」


 小野寺が振り返る。


「今、何をした」


「秘密よ」


 軽く笑う。


 再び剣が迫る。


 ――ドン。


 今度は肩をかすめた。


「っ……!」


「いったぁ……!」


 顔をしかめる。


 だが小野寺は止まらない。


「勇者は負けない」


 迷いのない連撃。

 その一つ一つに、確かな“信じ切った強さ”が乗っている。


 ――ドン。


「ぐっ……!」


 阪本の膝が落ちる。


 再び息を止める。


 止める――はずだった。


「……っ、ゲホッ」


 咳が漏れる。


 時間は歪むだけで、止まらない。


「……あれ?」


 もう一度、息を止める。


「……っ!」


「ゲホッ……ゲホッ……!」


 今度は抑えきれない。

 胸を締め付けるような咳が、連続して吐き出される。


「ちょっと……最悪……!」


 その隙を、小野寺は見逃さない。


 ――ドン。


「がっ……!」


 衝撃に身体が浮く。


「終わりだ」


 静かに告げる。


「俺は勇者だからな」


 阪本が笑う。

 息も絶え絶えに。


「やだぁ……」


「ほんとに……」


 もう一度だけ、息を止める。


 ほんの一瞬。

 ほんのわずかにだけ、世界が止まる。


 その隙で身体をずらす。


 だが、それ以上は続かない。


「……っ!」


 咳が込み上げる。


「ゲホッ……!」


 身体が止まる。


 その瞬間。


 ――ドン。


 腹に、重い一撃。


 阪本が崩れ落ちる。


 立てない。


「……はぁ……はぁ……」


 呼吸が乱れる。


 小野寺が剣を構える。


「終わりだ」


「俺は」


「勇者だ」


 阪本は、その言葉を受けて、わずかに笑った。


「……若いわねぇ」


 一拍。


「そういうの」


「嫌いじゃないわよ」


 振り下ろされる。


 ――ドン。


 身体が沈む。


 もう動かない。


『敗者は、地獄行きです』


 足元が割れる。

 黒い手が伸びる。


「……はぁ」


 阪本が力なく笑う。


「やだぁ……」


 咳き込む。


「……ゲホッ……ゲホッ……!」


 胸を押さえる。


「……これ……」


 息が乱れる。


「タバコの吸い過ぎね……」


 一瞬、目を細める。


「こんなことなら……」


 小さく笑う。


「ちゃんと禁煙しとくんだったわ……」


 黒い手に掴まれる。


 抵抗はしない。


 ただ、肩をすくめるように。


「……あんたみたいなのが」


 小野寺を見る。


「生き残るのね」


 ほんの少しだけ、優しく笑う。


「……いいじゃない」


 そのまま沈む。


 闇へ。

 消えた。


『第十試合、終了』


 小野寺がその場に立つ。


 静かに息を吐く。


「勇者は……」


 小さく呟く。


「最後まで、諦めない」


 コロシアムに静寂が戻る。

 信じた者だけが、最後に立っていた。

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