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ある日、TS金髪サキュバス系美少女になった俺はVRMMO世界を《捕食》スキルで無双する  作者: その他大勢の中で耳だけが大きくなった兎
始まりの街レアルタ編

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攻略リハーサル

 一緒に暮らし始めて、さらに数日――。


 俺とミーナ、そしてネネは、それぞれ配信活動や準備を進めながら、目まぐるしい毎日を送っていた。


 朝になれば雑談配信をつけ、昼には打ち合わせや編集の手伝い、夜は企画や雑談配信を回し、その合間にクラン設立の準備や事務所関係の確認まで行っているのだから、冷静に考えるとかなり無茶な生活をしている気がするのだが、不思議なことに今の俺は、その忙しさをそこまで苦痛には感じていなかった。


 むしろ、楽しい。毎日なにかが動き、なにかが変わり、昨日まで存在しなかった未来が次々と形になっていく感覚があって、その中心に自分がいるという事実が、妙に胸を熱くさせていた。


 そして、エタファンの本配信の日程が決まったある日の深夜。

 俺はさすがにゲームをせずにその日を迎えることはできず、オークダンジョン攻略から、クラン設立までの流れに関しては、入念にリハーサルしていた。


「ネネまで付き合ってくれなくてもよかったんだけど……」

「いやぁ、出来るだけリエラちゃんのこと見ていたくて~、最近小動物化が進んでるよね~」

「誰が小動物よ!」

「あはは」

 ネネは尻尾をぴょこぴょこさせて、楽しそうに俺の顔を覗き込む。

 現在時刻はかなり深夜寄りの朝で、プレイヤー数も減っている。つまり、人目を避けるにはちょうどいい時間帯だ。

 今回試したいことが色々と危険すぎたからだ。配信映え以前に、“見られたら考察勢が死ぬ”レベルの代物である。だからこそ、俺たちは配信の非公開はもちろん、ほぼプライベート状態でオークダンジョンへ潜っていた。


 目的はもちろん、確認である。


 俺は「《コールゴブリン》」と唱えると、影が揺れて黒い波紋が広がった。

 そこから現れたのは、泥濘の聖女エルーサと真紅の騎士ベルナデッタという二つの影だった。

 俺は未だに、この光景へ完全には慣れきれていなかった。

 かつてはネームドであり、あれだけ感情や人格を持っていた存在が、今こうして俺の背後へ静かに控えているのだ。

 その異様さは、どう考えても普通じゃない。「……それで」と、ネネが獣耳を揺らしながらベルナデッタを見た。

「ほんとに戦うの?」と尋ねるネネに、「それを今から試すのよ」と返しつつ、俺は慎重に前方を見た。そこには盾や槍、剣を構えた巡回中のオーク部隊がいた。


 典型的なオークの小隊である。そして、エルーサやベルナデッタたちのかつての同胞である。


 エルーサやベルナデッタは、あのオーク達と共に戦っていた存在なのだから、抵抗されるかもしれないし嫌なことはさせられないと思ったのだ。

 けれども、今後俺はこの世界を結果的には捕食して回らなければ情報は手に入らない、ならいっそ悪側に回ると決意したのだ。だからこのふたりがここを乗り越えられるかどうかはある意味重要すぎる”情報”だったのだ。

「……ベルナデッタ」と俺は静かに命令した。

「戦って」と告げながら、少しだけ緊張していた。


 だがーー


「承知しました、リエラ様」


 返事はあっさりしたものだった。

 次の瞬間、ベルナデッタは迷いなく大剣を振り抜き、先頭のオークを吹き飛ばした。

ゴォッッ!! という重い金属音と、骨の砕ける音が響き渡る。

 さらにエルーサが後方から支援魔法を展開し、ベルナデッタの動きをサポートしつつ、オーク達の動きを鈍らせた。


「……えぇ」


 命令しといてなんだけど、俺は思わず引いてしまった。

 いや、抵抗とか葛藤とかないんかい。


「なるほど……これがリエラ様達から見えている景色なのですね」

「ベルナ、なにかわかりましたか?」

「ああ……あれは同胞ではない、かなり精巧に作られてはいるが、な」

「……やはり……」


 そんな会話をエルーサと、ベルナデッタはして妙に納得していた。

 すると、ミーナが興味深そうにログを確認していた。


「なるほど……」

「何かわかったの?」

「はい、たぶん今のふたり“眷属”カテゴリーですね」

「眷属?」


 と首を傾げる俺をよそに、ベルナデッタが、


「リエラ様の命令こそ至高、これよりベルナデッタ、道を切り開く鋼となりましょう」


 そう剣を掲げ、恭しく宣言する。こう見ると、本当にただの頼もしい女騎士だ。

 それに張り合うように横から小さく可憐な影が、ひょっこりと顔を出す。あの日呼び出した時とは顔つきそのものが違う。今は落ち着いていて、敬虔なシスターといった具合のエルーサだ。魔王軍の信徒だから邪教シスターとでもいえばいいのか。


 リエラの服装と相まってとても絵になる。エルーサが隣にいるだけで説得力が6割くらい増しそうだ。


「ベルナ、あなただけ役に立とうなんてずるいですよ。私だってリエラ様のお役に立てるんですから」


 エルーサも続いた。


「テイム系統のスキル”恭順”に近いのかも~」


 口をはさんだのはネネだ。


「あたしもよくわかってないけど、リエラちゃんの命令を“快楽や安心に近いもの”として認識してる感じだ」

「……は?」


 俺は完全に初耳だった。

 というか怖っ、何それ、俺はそんな魔王みたいな仕様になっているのだろうか。

 いやまぁ、今さらと言えば今さらだけど。でも、そんな性能説明は一回も聞いてないぞ。


「完全に魔王仕様だね~、いやぁ事実は既に出来上がっていたのか」

「ほんっとに、ふたりは平気なのね……?」

「「もちろんです」」


 ハモった。まぁこうまで言われてここまでインパクトのあるふたりを使わない手はない。

 エルーサとベルナデッタの二人を引き連れてオークダンジョンを散歩する地獄絵図確定だ。


「まぁ、ボス戦まで隠し札ですねぇ」


 ミーナが頷いた。

 後確認したいのが、獲得したスキル反応強化、戦場の聖女だ。


「……反応強化、これが特に壊れ性能ね」


 俺はステータスを見ながら呟く。

 発動速度やスキル硬直、クールタイムの全部が短い。おまけ程度とはいえAGI補正まである。

 つまり、俺の“異常な継戦能力”がさらに加速しているのだ。


「私はこっちだとおもいます」


 ミーナが俺のステータスを指差した。

 彼女が示したのは《戦場の聖女》というスキルで、その効果は5秒毎のリジェネだった。


「……そうなのよね、多分ミーナのファイアーウォールの中を回復しながらあるけるわ」


 そう言うと、背後でボッと燃える。

 あれ、今詠唱した?


「やってみます?」

「ふたりとも平然としてて怖いよ~」


 ネネは両腕を抱いて震えるリアクションをしている、怖がっている感じはなく、どちらかというと頼もしく見てくれているような感じだ。


「え、っとじゃあ入ってくるね」

「はい!」


 1、2,1、0、2、1、1、2というダメージ表示のあとに、全回復する。


 いや待って、5秒毎に常時回復。


「リエラさん、ついに“回復し続ける存在”になりましたね」

 ミーナが言う。

「怖~~っ! マジでラスボスじゃん」

「ち、違うし……」

 言いつつも、もうめったなことで傷つくことなんて……多分来ないかもしれない、正直自分でもラスボスを否定しきれなかった。

 ちなみにこの間ドロップした、装備はふたりに持たせている。

 ベルナデッタには大剣を、エルーサには回復支援の効果が上がるロザリオだ。

 オークダンジョン攻略パーティは、騎士、聖女、爆乳シスター、将軍。見た目だけでいえば、完全にNPCパーティぽくあるがかなりバランスのいいパーティである。

 

 しかし魔ダーツは俺の懐だ。あんな便利装備、トビーに返すわけない。

 トビー、お前の武器はもう俺のものだ。南無と心の中で手を合わせた。


◇◇◇


 そうして、それぞれに出来ることを積み重ねていった。配信や準備、根回しなど全部を進め、ついにネネ加入の段取りが整いきったのだ。

 オークダンジョン攻略を予告していた配信日。

 俺たちは再び、オークダンジョンへ戻ってきた。

 今回はもちろん配信ありで、しかも重大発表付きである。

 配信タイトルは『【緊急】リエラのオークダンジョン散歩【重大発表】』だ。


「……相変わらずぐちゃぐちゃねぇ」


 俺は配信画面を見ながら苦笑する。

 オーク、緊急、重大発表、散歩と情報量が多くて完全にカオスだ。

 だが、結果としてそれが逆に“情報撹乱”になった。

 『重大発表!?』『これ以上なにが!?』『おっぱいが大きくなりました』『オークまた食うの?』『散歩(虐殺)』と、コメント欄も予想がバラバラだ。

 なんか変なのまざってるけど、いい感じに混乱してくれているな。


 そして、俺はゆっくりとダンジョン入口を見上げた。薄暗い洞窟からは湿った空気や獣臭、鉄臭、そしてオーク達の気配が漂ってくる。

 でも、前回とは違う。今の俺たちはもっと危険で、もっと異常で、もっと――“魔王軍”らしいのだ。

 【緊急】と称された今回の配信だが、冷静に考えると“何が緊急なのか”が視聴者側には全くわからない。

 重大発表か炎上か、それともネネ加入や新衣装、はたまた引退や結婚なのか。

 コメント欄はもう好き放題に憶測を飛ばしていて、逆に情報が散らかりすぎている状態だった。


 だから、俺はもっともっとカモフラージュしてしまう。


 視聴者の視線を別方向へ逸らすため、わかりやすい“異物”を見せれば、そっちへ意識が向くはずだ。俺は、「ふふん」と得意げに笑いながらわざとらしく肩へあるものを担いだ。

 それはいつものメイスではなく、真紅の大剣――《クリムゾンブレイド》である。



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