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【17話:拡がる地図】

「カノン、ちょっと時間もらっていい?」

レナがそう声をかけたのは、なでしこの営業が落ち着いた深夜だった。スタッフルームの扉を閉めて、ふたりきり。レナの表情はいつになく真剣だったが、カノンはどこか楽しそうな顔をしていた。

「そういう顔されるとワクワクします。なんか面白い話ですか?」

レナは少し笑ってから、本題に入った。

「そろそろ、次のステージに進もうと思ってる。」

カノンの目がキラリと光る。

「お、きました。で、次って?」

「フランチャイズ。事業モデルとして、うちのやり方を型にして──グループ店を全国に広げていく。本格的に、FC事業を進めていく。」

言葉にして初めて、それが現実のものになっていく気がした。

「FC1号店のMePをモデルケースとして、形に落とし込む。リリには今まで通りFC店の管理を任せる予定。店舗増えたら大変かもしれないけど。カノンには…広報の面から、全体を支えてほしい。」

カノンは少しもたじろがなかった。むしろ、椅子から乗り出して言った。

「じゃあ、うちらの仕事って、“未来の店”を育てるってことになりますね」

「そう。」

「超おもしろい。」

レナは、思わず笑った。カノンの反応は、想像以上に頼もしかった。

「今までSNSって、“この子を売り出す”って視点だったけど、これからは“この会社の文化を広める”って方向になればいいですか?」

「そう。世界観も、価値観も、統一感も…全部ブランドとして発信していくことになる。」

「うんうん、やりたい。めっちゃやりたい。」

カノンはすっかり前のめりで、すでに頭の中では新しい投稿の構想を練っていた。

「じゃあ早速、FC説明会のLPとか、紹介動画も作っちゃおうかな。オーナー候補に刺さるビジュアル、今から考えてみますね。」

レナは頷きながらも、心の中で少し驚いていた。

(…この子、もう全然“キャスト”じゃない。完全に、“本部広報”の人間になってる。)

「ありがとう、カノン。頼りにしてる。…一緒に、次のステージ、作っていこう。」

「もちろん。“大須の女帝”に早くなってくださいね。」

そう言って笑うカノンに、レナもふっと微笑み返した。

机の上に広がる紙は白紙だったけれど、そこに描く未来の地図は、もうふたりの中で鮮やかに色づいていた。


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