【第20話:わたしたちが、大人になる頃】
「来年、ここがどうなってるかって、考えたことある?」
カノンがふとそう言ったのは、何気ない帰り道の会話だった。
でも、その問いは確かに心に残った。
「30歳になったとき、私たち、何してるんだろうね。」
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彼女たちは、まだ20代。
でも、経営側に立っている。
かわいいだけで評価される時代を抜けて、
“残してきたもの”で評価される立場に変わりつつある。
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なでしこの店長──**ミユ**は、
最近ようやく“自分の店を背負う”という実感を得ていた。
相変わらずのんびりしていて、パジャマみたいな私服で来ることもある。
でも、シフトの裏でこっそりメモを取って、キャストの動きや客層を分析していた。
「この子、売れたいって思ってるかも。」
「今日、制服アレンジしてた。お客様の反応よかったし、真似させようかな。」
数字を出せる店長へ、彼女は静かに変わりつつある。
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堅香子の店長──**ナナ**は、
苦手なことから逃げず、ようやく“考える店長”になり始めていた。
深夜帯の目標人数を、週単位でホワイトボードに書き出し、
出勤キャストと共有するようにした。
「あと2人。今週は達成しようね。」
それだけで、現場の空気が締まる。
「来年までに、レナさんの数字超える店にできたら、かっこよくない?」
そんな一言を、誰かに言われる前に、自分でつぶやけるようになった。
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FC店舗MePの担当──**リリ**は、
ようやく「指導する人」として自分を受け入れ始めていた。
実績ではなく、存在で支えるということ。
後輩たちと一緒に悩みながら、未来を作るということ。
「幹部って、肩書きじゃないんだね。
“任されてる”って思える時間の積み重ねなんだって思った。」
彼女の言葉は、言い訳ではなく覚悟に変わりつつある。
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広報──**カノン**は、Xの投稿スケジュールを組みながら、
ふとPCのカレンダーを見つめた。
「半年後、この会社が“名前で集客できる”ようにしたい。」
SNSはもう、“遊び”じゃない。
武器であり、信頼であり、未来を切り拓く道具。
カノンの目線の先には、
全国に広がる地図と、その中に立ついくつもの“なでしこ”の姿が見えていた。
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そして、社長──レナ。
彼女は少しだけ姿勢を正し、社内ミーティングでこう言った。
「今期、わたしたちは“幹部として結果を出す”ことにこだわります。」
それは、口先だけではなく、
みんなの目を見て、責任を分け合うような言い方だった。
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「この会社が、大きくなるのは当たり前。
それを、“わたしたちがやった”って言える未来にしたい。」
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幹部全員の目線が、
“今日のシフト”から“5年後の椅子”へと変わっていく。
わたしたちはまだ、20代。
だけどもう、“未来の自分たち”を見始めている。
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このチームで、
この会社で、
いつか胸を張って「育てた」と言える場所を作るために。
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【完】




