【第19話:わからないままでも、一緒に進めるなら】
「ねぇ、ちょっと話していい?」
いつものようにMePの営業後。
店内の照明が落ちた後、リリがぽつんと2人に声をかけた。
ナコとルルは、いつも通りカウンターに並んで座っていて、
その間に、リリが少し距離を取って腰を下ろした。
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「……私、ずっと“何言えばいいのかわかんない”ままで来てたんだ。」
唐突な切り出しに、2人が一瞬顔を見合わせた。
「りりちゃん?」
「ほんとは、偉そうにアドバイスとかしなきゃいけなかったんだろうけど、
MePの方が売上とか順調だから……
なんか、私が色々言うの、変じゃない?って思って。」
少し笑うような声。でも、目はまっすぐだった。
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「でも、それでも来てたのは、
ここが崩れたら、たぶん次の出店って話にならないから。
“うまくいってる今”を、止めたくなかった。」
ひめが、口を開いた。
「……それ、プレッシャーじゃなかった?」
「めちゃくちゃあったよ。」
笑ったリリの声は、どこか軽くなっていた。
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「でもね、もうちょっと踏み込んで話したいなって思ってる。
指導とかじゃなくて、一緒にどうしたらいいか考える相手として。」
なみが、小さくうなずいた。
「うん。わたしたちも、“これでいいのかな”って思う日あって。
責任者って言われても、正直まだピンときてない。」
「でも、誰かに“どうしたらいい?”って聞くのも違う気がしてて。」
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沈黙のあと、リリが静かに言った。
「私も、自分のやるべきこと、まだ正解わかんない。
でも、わかんないままでもいいから、
一緒に“考える時間”だけは止めたくないなって。」
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ルルが少し笑って、ナコの肩を軽くたたいた。
「巻き込まれたね、これは。」
「うん、がっつり。」
3人の笑い声が、暗い店内に少しだけ響いた。
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答えはまだ出ていない。
でも、「一緒に悩める関係」になれたことが、
この日いちばんの前進だった。




