【第18話:このままじゃ、ダメなのは自分】
「……何話せばいいんだろ。」
MePの店内、営業終了後のターコイズブルーに包まれたフロアで、リリは小さくため息をついた。
ナコとルル──2人の店舗責任者は、今日も仲良く片付けをしていた。
雰囲気はいい。笑顔もある。売上も上がってる。
「……でも、私、何にもしてない。」
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実は“見に来てる”のではなかった。
“指導しに来てる”わけでもなかった。
ただ──何を言えばいいかわからず、なんとなく顔を出しているだけだった。
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本当は、本店の方がうまくいっていてほしかった。
自分のいる場所が、一番であってほしかった。
でも、現実は逆だった。
MePは、FC1号店なのに好調。
雰囲気も、キャストの姿勢も、整ってきている。
本店では、まだ葛藤や温度差があちこちに残っているのに。
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「りりちゃん、また来てくれたの〜?」
いつも通りの明るい声で、ルルが話しかけてくる。
その瞬間、リリはまた“何でもない顔”で笑う。
「うん、ちょっと見にきただけ〜」
本当は何も見れてないのに。
本当は、アドバイスひとつもできていないのに。
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(私、ここで何の役にも立ってないかも)
その思いがよぎるたびに、引け目が膨らむ。
けれど、それでも“来る”ことをやめなかった。
理由はひとつだけ。
(ここが崩れたら、終わるから)
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“好調な今”こそが、試されるとき。
“何もしないまま維持される店”なんて、存在しない。
リリはまだ迷っていた。
でも、少しだけ気づき始めていた。
自分が一歩を踏み出さなければ、
“ただ順調だった店”で終わってしまうことを。
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「このままじゃ、ダメなのは、たぶん私なんだよね……」
そのつぶやきが、ようやくリリ自身を前に進ませ始めていた。




