【第17話:わたしたちなりに、やってるつもりだった】
「今日、最後のお客さん、22時半には帰ったね。」
「静かに終わる日も、たまにはいいよね。」
MePのバックルーム。
店舗責任者のナコとルルは、いつも通り隣同士で座って、ミルクティーを飲んでいた。
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営業時間は23時まで。
席数は多くないが、この地域では十分。地域発のメイドカフェということもあり、知名度もある。キャストの顔ランも高い。
FC1号店としては十分に順調。
でも──その“順調”が、どこか頼りなく感じ始めていた。
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「りりちゃん、最近めっちゃ来るよね。」
「うん。なんか……目線変わった気しない?」
りりちゃん──本部幹部のリリ。
年下で、前は普通に現場で一緒に働くイメージだった。
でも最近は完全に“本部の人”だった。
目つき、言葉選び、そして質問の鋭さ。
どこかで、自分たちと“立ち位置が違う”ことを感じさせられる。
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「私たちなりに、ちゃんとやってるよね?」
「うん。でも“責任者”って、たぶん“キャストとして頑張る”だけが大事じゃないんだと思う。」
ふたりは自分たちがしてきたことを振り返る。
女の子たちとの雑談
簡単なシフトの調整
ちょっとした現場の相談ごと
店の雰囲気を守る空気づくり
ルールを守って営業している。先輩キャストくらいの気持ちで、管理者っぽさは特に出していない。
基本「仲良く楽しくできればそれでいい」と思っていた。
楽しいバイトなら続けられる。
この場所がなくなるのは絶対に嫌だ。
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「りりちゃん、たぶん“何かを教えに来てる”っていうより、
私たちが“何をしてるか”を見に来てる気がする。」
「私もそう思う。」
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MePがFC1号店であること。
今後の出店希望者が“この店舗をモデルにする”という現実。
そのプレッシャーは、目に見えないけれど、確かにあった。
「……わたしたちも、そろそろ“店を任されてる自覚”を持ったほうがいいのかな?」
「うん。りりちゃんに“管理される側”じゃなくて、
一緒に“つくっていく相手”として見られたいよね。」
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まだその意識には届いていない。
でも、気づけたことが第一歩だった。
わたしたちが変われば、店が変わる。
この店が伸びれば、未来が生まれる。




