【第15話:ちゃんとやれば、ちゃんと返ってくる】
「今月の給与、少しだけど増えてる……よね?」
控室で、ミユが明細を見つめながらぽつりと言った。
隣にいたカノンも同じく手元を見つめ、そっと頷いた。
「たぶん、達成インセンティブ反映されたっぽい。」
---
なでしこは、少しずつ“動き始めている”と感じられるようになっていた。
来店数が前より増え、Xを見て来たという新規客の話がちらほら聞こえるようになった。
「昨日のお客さん、TikTokで見たって言ってた」
「え、あれ私?」
そんなやり取りが、営業後にふと生まれる。
少しずつ、“働く理由”が言葉にならなくても積み上がっていく。
---
堅香子でも変化は静かに進んでいた。
深夜3時、まだ5人のお客様がカウンターに座っていた。
かつてレナが出勤していた頃にはよくあった光景──
でも今、それが“再び起こっている”ことに意味があった。
「……今日、けっこう残ってるね。」
ナナのその一言に、キャストが軽く頷いた。
「週末は、定着し始めてるかも。」
---
ほんの数万円。
でも、それは“やった分が返ってきた”という最も分かりやすい証明だった。
「少しずつだけど、“変わってる”気がする」
「頑張った分、ちゃんと評価されてるって思える」
そんな言葉が、自然と出てくるようになっていた。
---
レナは、全員分の給与データを確認しながらふっと息をついた。
「数字が、ちゃんと行動に追いついてきた。」
カノンも、静かに笑った。
「“努力が無駄じゃなかった”って、
最初に伝えるのは、やっぱりお金なんですよね。」
---
誰かの努力が、
誰かの動きを引き出し、
少しずつ、“ちゃんとやることが報われる組織”になっていく。
その一歩が、いま踏み出されたばかりだった。




