10-1 もう一人のパティシエ?
飲み物を用意している「水の貴族」サードのジュリアスはティーポットを二つ用意し、コーヒーと紅茶を作ると、キャビネットからカップを取りだしてテーブルに置く。
『寄せ集めのカップですが、お好きな飲み物を入れてください』
『よく数が揃ったね』テーブルのところへ来る「土の貴族」サードのタンデルチェスト子爵が、『フライシュは紅茶でいいですか?』椅子に座っている「風の貴族」セカンドのホッフマイスター侯爵に聞くと『ああ。砂糖は一杯で頼むよ』おいしそうに野菜サラダが挟んであるバターロールを食べている。『トマトがおいしいね』
『ファルークもコーヒーでいいのよね?』「風の精霊」の女王エミアが、オルトと一緒にカップ三つにコーヒーを入れて戻ると、ファルークとエミアはキノコとカボチャの上にクリームソースが掛かった総菜パンを、オルトはとろけるチーズと角切りのハムが乗ったパンを食べはじめる。
「水の貴族」トップのジェシーとセカンドのジュリアスも、焼きそばや野菜カレーが入った総菜パンを取ると、テレビモニターに映っているショウたちも、用意してある昼食を食べはじめる。
『こんなに食べ物の味を楽しむ余裕がある食事は、久しぶりだね』お替わりの総菜パンを取りにいく「風の貴族」セカンドのホッフマイスタ―侯爵。『お陰で、いつもより量を食べられるよ』
「このパンうまいな」あっという間に食べ終わったオルトも、「水の貴族」トップのジェシーたちが座っているテーブルへ、総菜パンを取りにいく。「やっぱ、誰かが作ってくれたものはうまく感じるな」
『オルトだって、なかなかの料理の腕を持ってるぞ』「風の貴族」トップのファルークがフォローすると『まあ、普通より少し上でしょうか』相変わらず憎まれ口をたたく「水の貴族」サードのジュリアスに「俺が作ったエクレアを、満面の笑みで食ってたのは誰だよ」オルトが反論すると『ああ! あれはおいしかったですよ』
『エクレア?』エミアが反応する。
そして、テレビモニター越しにいるイータル ヴェンティ(風の精)で年上のアウラ リートレと年下のアウラ マリス、さらにラルも一緒にオルトを見る。
「な、なんか、すごい見られてる気がする……」キョロキョロと辺りを見回すと、彼に見えるのはラルだけだが、エミアたちの視線を感じるらしい。「メッチャ見られてる気がするぞ」
『オルト。君に見える女性はラルだけだと思うけど、ここにはほかに三名いることを忘れるなよ』注意する「風の貴族」トップのファルーク。『さっき、エミアは甘いものに目がないと言ったじゃないか』
そう言われてファルークの隣を見ると、エミアが肩から掛けているタオルの向きが、どう見ても自分を見ている角度で宙に浮いている。
『しかも、テレビモニター越しにいるリートレとマリスはお菓子を持ってるようだから、余計エミアにはきついんだよ』
「そっか。じゃあ今度、材料買ってくるから作ってあげますよ」
『本当!』エミアが嬉しそうに飛び上がるので、肩に掛けてあるタオルが躍っているように見え「……やっぱ、この光景、慣れないわ」と苦笑するオルト。




