第42話 釣り合う釣り合わないなんて考えること自体がおこがましい(加藤雪女視点)
きっと私は間違えた。私は、私がバカであることを知っている。だから、間違えないように最善の注意をしてきた。でも、
「……加藤さん。加藤雪女さん」
ものすごい美人の女の子に声をかけられた。普段、クラスメートから声をかけられることがほぼないので、すぐに反応できなかった。こくりと頷くと、その女の子は手に持っていた弁当箱を持ち上げて、
「よかったら、お昼一緒に食べない?」
「……いいけど」
私は、昼ごはん用に用意した弁当を持って、名前も知らない女の子について行った。どこに連れていかれても、私ならきっと大丈夫。だって、私、最強だから。
「私の名前、わかる?」
「知らないけど」
「……そっか。そうだよね。普段、加藤さんは大橋くんのことしか見てないから」
「……そんなこと、ないと思うけど」
「ふふっ。大橋くん、カッコいいもんね」
「うん。良太はカッコいい。異論反論は受け付けない」
そう、良太はカッコいい。私はカッコ悪い。ただ、それだけの話だ。私が変に良太を困らせることは望んでなんかない。私がただ弱いから。弱いから、良太は私のことを守ろうとする。でも、私はそんなことがしてほしいんじゃない。
「あっ、空いてる。あそこに座って食べましょう」
昼休みに教室から出ることが初めてのことで、良太みたいに学食に行くのもいいかもと思ったこともあったけど、一人で行くのはすごく抵抗があった。良太と一緒にいつか行けたらいいな……なんて思っていた日もあったけど、そんな日はきっとやってこない。
「えっと、簡単に自己紹介だけしたほうがいいかな?」
その女の子は私の顔を見ながらそう言った。私は、こくんと頷いて、その女の子は自己紹介を始めた。
「諏訪明里って言います。加藤さんと同じクラスにいるんだけど、気づいてた?」
「……ごめん。まだクラスの子の名前、覚えられてない」
「そっか。そういうこともあるよね」
すごい気を遣わせちゃってる。私はいつもそうだ。いつも良太は私を気遣ってくれているのに、私はそれに応えられない。
「加藤さんのお弁当、おいしそうだね?お母さんが作ってるの?」
「ううん。私が作ってる」
「………っ!そうなんだ。すごいね………私は、あまり料理は得意じゃないんだ」
「………そう」
諏訪さんは、すごい美人だし、きっと良太の好みだろうな。私と違って、かわいいし。
「加藤さんに聞きたいことがあるんだけど…いい?」
「私が答えられることなら」
「その……加藤さんって、陸上部でマネージャーをやってるよね?陸上部に面良池って人がいると思うんだけど、わかる?」
「うん。分かる。良太と仲良しの男子」
「そう、その男子。部活のときに女の子から言い寄られてたりしないかな?」
「言い寄る……?女の子が部員の人にそんなことしてるのは見たことない」
「そっか……よかった」
「もしかして、好きなの?」
もし、諏訪さんが良太のことが好きだとしたら、私はきっと勝てない。どう足掻いても、こんな美人の子に好かれているなんて良太が知ったら、良太も好きになるに決まってる。
「うん、というか、池くんとはお付き合いしてるの」
「えっ!ほんと?」
「ほんとだよ。中学が同じで、それからずっと」
「そうなんだ……知らなかった」
「加藤さんも大橋くんのことが好きなんだよね?」
「……好きなんて軽はずみに私は言えない」
「………?」
私の言葉に諏訪さんは首を傾げた。何を言っているのかなんて私にもわからない。ただ何も考えずに、私の口からそんな言葉が漏れてしまった。
良太のことが好き。でも、そんな態度を取ってはいけない。それが、私が私に課したルールだ。
「大橋くんのことが好きだって気持ちはあるじゃないの?」
「……良太のことは好き。でも、私は良太に嫌われてる」
「そんなことないと思うけど……」
そんなことはあるんだ。私がどれだけ醜い人間なのかを知れば、きっと諏訪さんも私から距離を取るはずだ。だって、私は雪女だから。
「私は、良太とは釣り合わない」
「────それは違うよ、加藤さん」
「………?」
「釣り合う、釣り合わないなんて考えること自体が相手に失礼だよ。だって、相手のことを自分でレベル付けしてるってことだから。それはなんか嫌じゃない?」
レベル付け…。私は良太のことを無意識にレベル付けをしていたの?
「私だって、池くんと釣り合ってるのかどうか自信がない。でも、好きだから、池くんともっと一緒にいたいから彼女になったんだよ?加藤さんも一歩踏み出したら、きっと大橋くんも振り向いてくれるよ」
「……でも、私はかわいくない」
「そんなことないと思うけどな……。でも、自信がないんだったら、かわいくなろうよ、これから。私もかわいくなりたいし」
「どうやって……?」
「それは………どうすればいいんだろう」
諏訪さんは何やら考え込んでしまい、私はあっけにとられた。あれだけ自信満々に言うから何か策があるのかと思えば、特になかったんだ。
「これから一緒に考えませんか?」
諏訪さんは考えることを諦めてそう言った。私は、
「いいよ」とだけ返した。
私は弱い人間だ。醜いし、全然かわいくもない。でも、良太の隣にいられる存在に少しでも近づけるようにこれから頑張りたい。そうしたら、私は私のことを好きになれるかな?
よろしければブックマーク、評価ポイント、感想をくれると非常にうれしいです。また、こういう話を書いてほしい!というものがあれば感想欄に書いてください。
そして、この話が良かったぞ!と思っていただけた方はいいね!をポチッと押してもらえると励みになります。




