第41話 友人からのアドバイスは覚えておけ
それからは慌ただしかった。部員が一人減ったからといって部活の忙しさが変化することはなく、ただひたすら大会に向けて練習あるのみ。俺は、左手のけがが原因で、欠場が決まった。残念な気持ちでいっぱいではあるが、これもまた運命として受け入れることにした。
加藤とはあの日以降上手くいっていない。というか、話しかけようとすると避けられてしまうのだ。俺に非があるため、謝りたいと思っているのだが、その機会すら渡してくれそうにない。それほどまでに、俺のしたことは重たいものだったのだろうか。そもそも、自分が何をしでかしたのか理解しきれていないから、謝ろうにも何に謝ればいいのかわからない。
そこで俺はとあるイケメンに相談することにした。彼女もいるし。(この事実は今もまだ受け止め切れていない)
「昼休みに悪いな、池」
「いいよ、全然」
面良池。俺と同じく陸上に所属し、長距離走を得意としている。大会に向けて日々トラックを走っている。
「ちょっと、相談がしたくてな」
「良太が僕に相談するのなんて初めてだね。何かあったの?」
「これは、友人の話なんだが……」
「うんうん、良太の話ね」
「………友人の話で合って、俺の話じゃない」
「でも、明里からの受け売りだけど、友人からの話とかで冒頭が始まったら、それは相談相手の話として聞いてあげる必要があるみたいなんだ」
「………そう、池の彼女がそう言ったんだ」
諏訪明里。面良池の彼女だ。いつから付き合っているのかは不明だし、聞きたくもない。興味もないし。
諏訪さんは小説を書くことを趣味としている。諏訪さんの書く小説はなかなかのクセスゴで、俺はまだ諏訪さんワールドを理解できていない。当然、人が死んだり、死んだかと思ったら、実は不死の衣を持っていたため、死んでなかったりなど、ハチャメチャな設定で、俺を混乱させてくる。今でも小説を読んでいるのだが、これらは変わっていない。最近は文芸部の方が忙しいらしく、昼休みはどうも小説の執筆に勤しんでいるらしい。書きあがったら、また俺が読むことになるのか……。大変だ。
「まあ、そんなことはおいて、まずは、俺の話を聞いてくれ」
「やっぱり良太の話だったんだ」
「……違う、友人の話だ」
「それで?」
俺は友人の話に何とか持っていくことを諦めて、昨日の話をした。部活が一緒であるため、俺が話さずともどういう状況なのかは把握していると思うが、どこから話し出せばよいのかを考えていくと頭が痛くなってくるから、最初から話すことにした。池は話を聞きながら、うんうんと頷いてくれている。聞いているよ、と言ってくれているようで話しやすかった。俺と池の違いはこういうところにあるのかもしれない。
最後まで話を聞いてもらったところで、
「それで、池はどう思う?」
「……つまり、整理すると。良太は加藤さんを怒らせてしまった。何が原因なのかはいまだにわかっていないけど、自分に非があることはわかっている。だから謝りたいと思っている、ということかな?」
「そうそう。そういうことだよ!さすが、池。イケてるな!」
「その相槌はよくわかんないけど、でもそうだな……」
池は少し考えた後、
「何が原因なのかは、想像がついてる。でも、それを言うのは加藤さんの本望ではないと思うから、良太には話せない」
「……どういうこと?」
「とにかく、加藤さんと一度話し合ってみた方がいいよ」
「……それができたら、苦労しないんだよなー」
「加藤さんの方に僕から声をかけておくよ。話し合いの場については、良太自身が作らないといけないけどね」
「………」
加藤が何を考えているのかはわからない。けれど、加藤は俺とおそらく唯一の同中だ。陸上部のマネージャーになるのだって、中学生の頃の加藤を知っている俺はかなり驚いた。何か一大決心をして陸上部のマネージャーになったはずだ。俺がそれを踏みにじったというのなら、謝らなくてはならない。
それが俺のやらなければならないことだ。
「それより、良太。大会にはその……」
「出れないな。だからって変に気を遣わなくていい。俺は俺でやらなきゃいけないことが今まさにできたからな。池は池のやるべきことをやってくれよ」
「……そうだね。頑張るよ」
「おう!応援してる」
池は良いヤツだ。俺が関わってきた人たちの中でもトップを争うくらいに。だから、池からのアドバイスはちゃんと覚えておかないといけないな。それがきっと友人としての責務というものなのだろう。
よろしければブックマーク、評価ポイント、感想をくれると非常にうれしいです。また、こういう話を書いてほしい!というものがあれば感想欄に書いてください。
そして、この話が良かったぞ!と思っていただけた方はいいね!をポチッと押してもらえると励みになります。




