第36話 左手に包帯、右手に友情と日常とその他諸々
骨が折れようとも日常は続く。俺は包帯に巻かれている左手を見て昨日の自身のポカを思い出した。骨折することが久々すぎて忘れていたが、片手ですべてをやらなくてはならないことの大変さを実感した。昨日だけでシャンプーのふたを壊し、洗濯物を干そうと思ったら洗濯用ハンガーを真ん中でへし折ってしまった。不幸に不幸が重なって何も考えられなかった。
(どこぞのラノベ主人公を思い出すな)
ツンツン頭のあの少年を思い出した。年は俺より一個上だったっけ?あの少年はこんな不幸と日々戦っていたのか。
そんなことを思いながらも支度を進める。今日から、正確には昨日の夜からだが、この不自由極まりない生活に慣れなくてはならない。その間に一体いくつもの破壊を繰り返すのか今から恐ろしくてたまらないが、まぁ仕方ない。
「よし、これで大丈夫かな。それじゃ、行ってきます!」
家に自分以外誰もいないことは俺だって知っている。しかし、それでも俺は言うのだ。この一言の持つ大きな意味を他人より理解しているからこそ。
俺はリュックを背負い、学校へと向かった。
◇
俺は教室に着くと加藤を探した。昨日の加藤は尋常でないほどに俺の骨折を重く受け止めていた。私のせいでと自身責めていた。実際はあのアホが悪いわけだが、そんな理屈では納得できないであろう。時間が解決する問題だとも思えるが、ではそれまでの時間思う存分苦しめなんて思えるわけもなく。
(俺にできることなんてあるのかな)
加藤はあまり人に頼ることを良しとしない。ようは人に頼るのが下手なのだ。それが祟って雪女なんて言われてしまっている。確かに視線がものすごく冷たいことはあるが、雪女ではない。雪女と名前は書くけど、『ゆきおんな』と読むのではなく『ゆめ』だ。って、俺は誰に説明してるんだ。
「何百面相してんの?」
「き、筋肉くん‼」
●私を覚えている人はいるだろうか。第26話目以降突然、登場シーンが消えていたこの物語のナレーターである。大橋が言っていた筋肉くんという人間は私より登場シーンが少なく、第11話以来の登場である。現実世界で言うなら実に約4年ぶりの登場だ。
伊藤響。筋肉くんでおなじみの大橋の友人の一人。筋肉部などというよくわけのわからない部活に所属し、筋肉に語り掛けることを日課している変態である。作者はこの癖が強いキャラの扱いに困っていて、どう登場させたろうかと悩んでいたとか。
「筋肉くんではなくて伊藤と呼んでくれよ、マイブラザー」
「ブラザーではないけど、わかったよ、伊藤」
「二人は何を話しているんだ?」
「おお、眼鏡」
「おはよう」
●眼鏡。筋肉くん同様11話目以降登場がなかった人物である。本名は不明。物語の重大な伏線であるかのように思う人がいたとしたら、それは大きな勘違いである。ただ単純に『眼鏡』と呼んでおけばいいだろう、と安直に考えた結果、今なお本名不明。ロジカルシンキング部に所属している。
「大橋、その腕はどうした?」
「ああ、昨日折れちゃって」
「骨ぽっきりいったってことか」
「そんなかわいい感じじゃなくて、バッキ‼みたいな感じだったよ」
「骨が折れたからって俺は甘やかさないからな‼」
「急にどうした、伊藤‼」
伊藤は手を目に当てて、恨み節をこぼした。
「なんで、大橋が骨折なんて……俺が骨折すればよかった」
「んなことねぇよ」
伊藤、すげぇいいこと言うじゃねぇか。俺は伊藤のこの言葉に泣きそうになった。
「俺が骨折したら、女の子からちやほやされるのは俺だったのに!!!」
「俺の感動を返せ!!」
2025/6/11追記:矛盾の訂正をしました。
2025/6/12追記:誤字脱字を修正しました。
よろしければブックマーク、評価ポイント、感想をくれると非常にうれしいです。また、こういう話を書いてほしい!というものがあれば感想欄に書いてください。
そして、この話が良かったぞ!と思っていただけた方はいいね!をポチッと押してもらえると励みになります。
また、新作を投稿しています。よろしければしたのリンクからどうぞ




