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ミオとナオトの異世界TRPG冒険譚  作者: かわさきはっく
魔導連邦ゼルト編

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第45話 ミオの単独行と、野生の勘

「ナオト! ナオトッ! 返事しなさいよ!」


 ガンッ! ガンッ!


「硬っ! なによこの壁! オリハルコン並みに硬いじゃない!」


「ねえ、聞こえてるんでしょ!? 隠れてないで出てきなさいよ!」


 シーン。


(ダメね。音が全く響かない。完全防音? それとも、空間ごと切り離された?)


「インカム! もしもし? ナオト? 応答せよ!」


『ザーッ……ザザッ……』


(繋がらない。圏外? さっきまでバリ3だったのに?)


「はぁ。なるほどね。そういうこと」


(分断工作。古典的だけど一番嫌なやつ。ナオトがいなきゃ、誰が地図を見るのよ。誰が罠を解除するのよ)


「私一人じゃ、この迷宮のEXハードモードは無理ゲーなんですけど!」


(いや、待って。ナオト言ってたわね。『このエリア、磁場がおかしい』って)


「ってことは、ナオトの方も何かしらのトラブルに巻き込まれてる?」


(あいつ、スペックは高いけど、装備がないとただのもやしっ子なのよね。もし、魔法もアイテムも封じられたら?)


「死ぬわね。3秒で」


(ヤバい。悠長に壁を叩いてる場合じゃない。助けに行かないと!)


 ミオは壁から離れ、背後に広がる広大なホールを見渡した。無数の水晶柱。そして、奥へと続く三つの通路。


(右、左、正面。どれが正解? ナオトなら『風の流れとホコリの堆積量から計算して……』とか言うんだろうけど)


「私には分かんないわよ! ……クンクン」


(右はカビ臭い。水場があるのかな? 左は獣臭い。モンスターの巣?)


「正面。無臭。でも、なんか空気が淀んでる。人工的な匂い」


(考えるな。感じろ。私の野生の勘が告げている)


「正解は……全部ハズレ!」


(このダンジョンを作った性格の悪い設計者は侵入者を迷わせるためにループ構造を作ってるはず。まともに付き合ってたら日が暮れるわ)


「ナオトを助けるには最短ルートを行くしかない。つまり」


 ミオは視線を塞がれた壁の横に向けた。そこにはただの岩盤が続いている。


(地図上では、この岩盤の向こう側がナオトのいる通路はず。……なら)


「道がないなら、作ればいいじゃない!」


 ジャキィン!


 ミオは背中の魔剣クリムゾン・エッジを抜き放った。


(魔力充填率120%。プラズマ出力最大。燃費? 知ったことか!)


「行くわよ! 岩盤掘削工事、開始ッ!」


 ブォンッ!!


「はああああっ! 土木作業員なめんなァァッ!」


 ズドォォォン!!


 ミオの一撃が岩盤に突き刺さる。

 プラズマの高熱が岩を溶かし、爆発的な衝撃波が穴を穿つ。


(硬い! でも、貫通した! よし、このまま突き進む!)


 ガガガガガッ! ドガァン!


「邪魔ァ! 岩も土も全部どきなさい!」


(MP消費が激しい。でも、止まったらナオトが死ぬ。あいつ、借金は返したけど、まだ私に唐揚げ奢ってくれてないんだから!)


 ドロドロに溶けた岩の中をミオは突き進む。

 シールド魔法で熱を遮断し、ひたすら前へ。


 ――5分後。


「はぁ、はぁ……。まだ? 結構掘ったわよ?」


(手応えが変わった。空洞?)


 カキンッ。


 剣先が何か硬いものに当たった。岩ではない。人工的な金属の感触。


「出た。隠し部屋?」


 ミオが穴から顔を出すと、そこは薄暗い小部屋だった。中央には宝箱が一つ。


「宝箱? ラッキー! いや、待って」


「こんな変な場所にポツンとある? 怪しい。すごく怪しい」


 ミオは宝箱に近づく――ふりをして、剣の先でツンとつついた。


 ガタッ!


「シャアアアッ!」


 宝箱の蓋が開き、中から巨大な牙を持った舌が飛び出してきた。


「やっぱり! ミミックね! お約束すぎて泣けるわ!」


「こっちは今、虫の居所が悪いの!」


「燃えカスになりなさい! エクスプロージョン・スタブ!」


 ズドンッ!


 ミオはミミックの口の中に剣を突き刺し、内部で爆発魔法を起動した。


「ギャアアアッ!?」


 ボンッ!


 ミミックが木っ端微塵に砕け散る。

 中からキラキラした宝石やコインが散らばった。


「回収してる暇はない! けど、これだけは」


 ミオは散らばったアイテムの中から、青いポーション瓶を一つだけ拾い上げた。


「マナ・ポーション! 神ドロップ! いただき!」


 ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……ぷはぁっ!


「よし、MP全快! ナオト、待ってなさいよ! 今行くから!」


 さらに奥へ。

 ミミックの部屋を抜けると、また通路に出た。

 今度は床が怪しい。タイルが規則的に並んでいる。


「踏んだら矢が飛んでくるやつね。ナオトなら『解除コードを入力して……』とかやるんでしょうけど」


「めんどくさい! 全部踏んでやるわ!」


 ダダダダダッ! ミオは全速力で駆け抜けた。


 ヒュンヒュンヒュン!


 矢が飛んでくるが、全て強化スーツの装甲で弾き返すか、剣で叩き落とす。


「遅い! 止まって見えるわよ!」


(罠の精度が低い。やっぱり、ここはメインルートじゃない。裏道ね)


 通路の突き当たり。

 そこにはまたしても壁があった。しかし、今度の壁からは微かに気配がする。


「……感じる。この向こう。ナオトの匂い」


「あと、血の匂い。獣の臭い。戦闘中?」


「ナオトッ! 無事なの!?」


 返事はない。

 代わりに微かな爆発音と、何かが砕ける音が聞こえた。


「やってるわね。でも、ナオトの気配が弱い。追い詰められてる?」


「許さない。私の獲物(ナオト)に手を出すなんて……」


 ミオの中で何かがプツンと切れた。

 理性という名の安全装置が外れる音。


「どけぇぇぇぇぇッ!!」


 ブォンッ!!


 ミオは剣を上段に構え、渾身の力を込めた。

 赤い魔力が溢れ出し、周囲の空間を歪ませる。


「フルパワー! 紅蓮一文字クリムゾン・スラッシュ!!」


 ズドォォォォォォォォォォン!!!!


 轟音と共に分厚い石壁が粉々に砕け散った。

 爆風が吹き抜け、瓦礫が弾丸のように飛ぶ。


 その向こう側。土煙の中にナオトの姿が見えた。

 ナイフ一本を構え、ボロボロになりながらも立っている背中。

 そして、それを取り囲む5体のリザードマン。


(間に合った! ギリギリセーフ!)


 ミオはゆっくりと歩み出た。

 炎を纏った剣を引きずり、床に焦げ跡を残しながら。


「見つけた」


 低い声が迷宮に響く。

 リザードマンたちが一斉に振り返り、その異様なプレッシャーに後ずさった。


「私のナオトに手を出そうなんて……」


 ミオが顔を上げる。

 その瞳は金色に輝き、怒りで満ちていた。


「いい度胸ね。全員、ミンチにしてあげる」


「グルゥ?」


 リザードマンの一体が、恐る恐る槍を突き出してくる。


「邪魔ッ!」


 ブンッ!


 ミオが片手で剣を振るう。

 ただの素振り。しかし、それだけで衝撃波が発生し、リザードマンの上半身が消し飛んだ。


「ギャッ!?」


 残りの4体がパニックになる。

 影に潜んでいたシャドウ・ストーカーがミオの背後から奇襲をかける。


(背後? 甘いわよ)


「見えてる!」


 ドガッ!


 ミオは振り返りざまに裏拳を叩き込んだ。

 シャドウ・ストーカーの顔面が陥没し、壁にめり込んで動かなくなる。


「次! まとめてかかってきなさい!」


 ミオが踏み込む。

 赤い閃光が走るたびにモンスターが肉塊へと変わっていく。

 もはや戦闘ではない。一方的な蹂躙だ。


「オラオラオラァ! ナオトをイジメていいのは私だけなのよォォッ!」


 ズババババッ!


 最後のリザードマンが塵となって消滅した。

 戦闘終了。所要時間、10秒。


「ふぅ。スッキリした」


 ミオは剣の魔力を解除し、鞘に収めた。

 そして、瓦礫の山でへたり込んでいるナオトの方へ振り返る。


「ナオト。生きてる?」


「あ、ああ。なんとか」


 ナオトが引きつった顔で立ち上がる。

 その顔には安堵と、それ以上の恐怖が張り付いていた。


「遅い」


「待たせたわね、ヒロイン!」


「お前、まるで魔王の登場シーンだったぞ。壁ごと吹き飛ばすとか、相変わらずデリカシーがないな」


「うるさいわね! 助けてあげたんだから感謝しなさいよ!」


「感謝してるさ。マジで死ぬかと思った」


 ナオトがふらつきながら近づいてくる。ミオは駆け寄って、その体を支えた。


「無事でよかった」


「お前こそ。単独であの壁を抜けてきたのか?」


「ええ。勘でね」


「勘だと? 論理的じゃないな」


「女の勘は論理を超えるのよ。ほら、行くわよ。まだ黒幕がいるんでしょ?」


「ああ。このEMPと結界を張った術者が奥にいるはずだ」


 ナオトが奥の通路を睨む。ミオも同じ方向を見据え、ニヤリと笑った。


「オーケー。そいつにも、私の勘と剣の味を教えてあげなきゃね」


「手加減してやれよ。尋問する必要があるからな」


「善処するわ。ただし、私の機嫌次第ね」


 二人は肩を並べて歩き出した。

 最強の矛 (ミオ)と、最強の盾 (ナオトの知恵)。

 二人が揃えば、どんなダンジョンも恐れるに足らない。


 瓦礫の山を越え、二人は迷宮の最深部へと足を進めた。

 そこには、この事件を仕組んだ犯人が待っているはずだ。

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