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ミオとナオトの異世界TRPG冒険譚  作者: かわさきはっく
第10章 聖法国ヴァルドリア・再来編

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第118話 飛竜の激突と、Aランクへの到達

「ギルドマスター! さっそくこのBランク依頼、岩山を荒らす飛竜(レッサー・ワイバーン)の討伐を受注するわ! ついにお肉よ、念願のお肉クエストよ!」


「な、何を血迷ったかと思えば飛竜だと!? 馬鹿なことはやめておけ! お前たちの実力がBランク以上なのは昨日の討伐で理解したが、相手は空を飛ぶ魔物だぞ! 両手剣とメイスしか持たない近接職(メレー)の二人だけで、どうやって上空の敵に攻撃を当てるつもりだ!」


「ふふん、そんなの気合いでジャンプしてぶった斬るに決まってるじゃない! 私の飛竜のステーキへの執念を甘く見ないことね!」


「気合いで飛竜に届くほど跳躍できる人間がどこにいる! 飛竜の討伐には高位の弓兵(レンジャー)や攻撃魔法使いを含めた、最低でも十人以上の討伐隊を組むのが常識だ! お前たちだけじゃ、上空から一方的に炎の息(ブレス)で丸焼きにされるのがオチだぞ!」


「ギルドマスターの言う通り、近接職だけで飛行モンスターに挑むのは詰み盤面の一つだ。普通なら絶対にやらない悪手だな」


「ナオト!? アンタまでおじさんの味方するの!? 昨日、私に美味しいお肉のクエストを受けさせてくれるって約束したじゃない!」


「落ち着けミオ、俺は依頼を受けないとは言っていない。むしろ、空を飛ぶ敵をどうやって地上に引きずり下ろすか……パラディンとしてのヘイト管理と、俺たち二人の連携を試すには絶好の相手だと判断した。ギルドマスター、心配無用だ。俺たちなりの対空戦術は用意してある。手続きを頼む」


「……そこまで言うのなら止めはせんが、万が一の時はすぐに逃げ帰ってくるんだぞ」


「心配性ねぇ。逃げ帰るどころか、飛竜の霜降り肉を山ほど抱えて帰ってくるんだから! それじゃあナオト、さっそく岩山に出発よ!」


「ああ。魔将ヴァルドレッドとの決戦を前に、Aランクへの昇格実績をこのクエストで確実にもぎ取ってやる」


 ◇ ◇ ◇


 聖都から馬車を乗り継ぎ、二人は飛竜の目撃情報が相次いでいる険しい岩山へと足を踏み入れた。周囲には身を隠すような木々も少なく、狩りには最悪と言っていい地形だった。


「すっごくゴツゴツした岩場ね。重装甲だと歩きにくくて仕方ないわ。ねえナオト、さっきから上空の雲の隙間を、すっごく大きな影が旋回してるんだけど」


「索敵スキルで捕捉している。あれがターゲットの飛竜(レッサー・ワイバーン)だ。俺たちの存在に気づいて、上空から獲物の品定めをしているところだな。……来るぞミオ、構えろ!」


「グギャアアアアァァァァッ!!」


 鼓膜を劈くような甲高い咆哮と共に、上空の影が急降下してきた。しかし、地上には降り立たず、二人の頭上を掠めるように飛行しながら、その巨大な顎から灼熱の炎を吐き出した。


「うわぁっ!? いきなりブレス!? やっぱり空から一方的に攻撃してくる気よ!」


「慌てるな! 大いなる光よ、我が祈りに応え、不浄なる炎を退け給え。防炎の聖壁プロテクション・フロム・ファイア!」


 ナオトがメイスを天に掲げると、二人の頭上に神聖な光のドームが展開された。飛竜の吐き出した灼熱のブレスは光の壁に衝突し、二人の周囲の岩を溶かすだけで、内部には一切の熱を通さなかった。


「ふぅ、助かったわ。さすが高位のクレリックね。でもナオト、あいつまた上空に旋回して逃げちゃったわよ。あんな高いところ飛んでたら、私の剣じゃ絶対に届かないじゃない」


「それが飛行モンスターの厄介なところだ。ヒット&アウェイで冒険者の消耗を待つ、極めて賢い狩りの戦術(タクティクス)だ。だが、お前には最強のヘイト管理スキルがあるだろう?」


「なるほど! 強制的に私をターゲットにさせて、地上におびき寄せるのね!」


「そういうことだ。だが、あんな質量の塊が全力でダイブしてきたら、いくらお前でも受け流すのは不可能だ。押し潰されて大ダメージを食らう」


「ええっ!? じゃあどうするのよ!? 避けたら意味ないじゃない!」


「そこで俺の魔法の出番だ。お前は飛竜のヘイトを限界まで稼いで、お前自身を目掛けて真正面から突撃(ダイブ)させろ。そして、飛竜がぶつかる直前に、俺が強力な防御魔法を展開する。お前はギリギリで横に回避するんだ」


「ぶつかる直前に回避!? そんなの、ちょっとでもタイミングが遅れたら私、飛竜と正面衝突してミンチになっちゃうんですけど!?」


「俺とお前の連携を信じろ。極上のお肉が食べたいんだろう? やるぞミオ!」


「うぐぅぅ……お肉のためなら……分かったわよ! いくわよトカゲの化け物! 空飛ぶだけの臆病者! 私のお肉を噛みちぎれるものならやってみなさい! 神罰の標的ディヴァイン・ターゲット!」


 ミオが大剣を天高く掲げて叫ぶと、強烈な黄金色の波動が上空の飛竜に向かって放たれた。


「グオォォォォォォッ!?」


「よし、スキル判定成功だ! 飛竜の目が血走り、理性を失って激怒しているぞ! 強制的な敵対心(ヘイト)に抗えず、お前に向かって真っ直ぐ急降下してくる!」


「ひゃあああっ! 本当に向かってきた! あのデカさ! すごい迫力よ! ナオト、まだ!? もうすぐぶつかるわよ!」


「まだだ、引きつけろ。飛竜が急ブレーキをかけられない限界の距離までだ!」


「ナオトォォォッ! 顔! もう飛竜の牙が見えてるわよ!!」


「ミオ、跳べ! 大地を司る女神よ、我が祈りに応え、堅牢なる石の城壁をここに現出させ給え! 石の壁ウォール・オヴ・ストーン!!」


 ミオが全力で回避したその瞬間。

 ナオトの祈りに呼応し、地響きと共に岩山の地面が急激に隆起した。

 ミオが立っていたはずの場所に高さ数メートルにも及ぶ、巨大で強固な一枚岩の壁が瞬時にそびえ立った。


「グギャッ!?」


 ドッゴォォォォォォンッ!!


 猛スピードで急降下していた飛竜は突然目の前に現れた石の壁を避けることなど到底できず、自らの凄まじい質量と速度を乗せたまま激突した。

 分厚い石の壁が粉々に砕け散り、周囲に土煙が舞い上がる。


「うわあああっ! すっごい音! 地面が揺れたわ!」


「作戦成功だ! 飛行モンスターに対する最強のカウンター、落下と衝突による自滅ダメージだ! あれだけの速度で分厚い石壁に激突すれば、ただでは済まないはずだ!」


 土煙が晴れると、そこには首を不自然な方向に曲げ、白目を剥いているレッサー・ワイバーンの無惨な姿があった。両翼も激突の衝撃で折れ曲がっており、もはや空へ逃げる力は残されていない。


「あはは! すごいわナオト! アンタの壁、最高のトラップじゃない!」


「怯んでる今がチャンスだ! トドメを刺すぞミオ! 大いなる光よ、我が祈りに応え、不浄を討ち払う破邪の刃をここに顕現させ給え! 聖光の武器付与ホーリー・エンチャント!」


「神聖な光が乗ったわね! これでお肉の鮮度を落とさずに仕留められるわ!」


「まずは機動力を完全に奪う。折れた翼の骨を、さらに粉砕してやる! おりゃっ!」


 ナオトが神聖属性の乗ったメイスを容赦なく振り下ろし、飛竜の翼の関節を粉砕した。激痛に意識を取り戻した飛竜が悲鳴を上げる。


「グギャアアアァァァァッ!?」


「うるさいわね、大人しく料理されなさい! 神聖なる一撃ディヴァイン・スマイト!」


 ミオが下段から渾身の力で振り上げた大剣が、極大の神聖な光の軌跡を描き、飛竜の太い首をいとも容易く斬り飛ばした。


「ふぅーっ! 討伐完了! やったわナオト! 私たちの連携、空を飛ぶ敵にも通用したじゃない!」


「ああ、素晴らしいタクティクスだった。お前の度胸あるヘイト管理と、俺の地形操作魔法が見事に噛み合ったな」


「さあ、お楽しみの解体作業よ! この霜降りの飛竜肉、すっごく高く売れるし、食べても絶品なのよね! アイテムボックスに全部詰め込んじゃうわよ!」


 ミオは嬉々として飛竜の解体作業を始め、巨大な肉の塊を次々と収納空間へ放り込んでいった。


 ◇ ◇ ◇


「ただいま戻りましたー! ギルドの皆さーん! Bランクの飛竜討伐クエスト、サクッと完了よー!」


「ひっ!? み、ミオ様!? ナオト様!? そ、その血まみれの塊は!?」


 ギルドのカウンターにミオが叩きつけたのは、大人の背丈ほどもあるレッサー・ワイバーンの頭部だった。その迫力に受付嬢は腰を抜かしそうになっている。


「討伐証明部位、飛竜の首よ! ついでに極上の飛竜肉もたっぷり手に入れたわ! ああ、今日の夕飯が楽しみ!」


「ば、馬鹿な! たった二人で、しかも近接職のみで、岩山へ向かってから日暮れ前にもう帰還したというのか!? しかも、お前たち二人とも、かすり傷一つ負っていないではないか!」


 奥から飛び出してきたギルドマスターはカウンターの上の飛竜の首と、涼しい顔をしている二人を交互に見比べ、完全に言葉を失っていた。


「俺たちの対空戦術は完璧だったということだ。これで、Bランククエストにおける俺たちの実力は十分に証明されたはずだな?」


「あ、ああ……。空を飛ぶ強敵を無傷で、しかも日帰りで討伐するなど、並のAランクパーティーでも不可能だ。もはや、お前たちの実力を疑う余地など一ミリもない!」


「だったら話は早い。俺たちはBランクの依頼に対しても、ギルドの想定を遥かに超える成果を出した。規定通り、次のランクアップの手続きを頼む。これでついに、このギルドの最高峰だな」


「承知した。お前たちのような規格外の英雄を、いつまでも低ランクに留めておくことはギルドの損失にしかならん。特別措置により、二人を当ギルドの最高位であるAランクに昇格させる!」


 ギルドマスターはもはや何の異論も挟めず、二人には黄金色に輝く真新しいAランクのギルドカードが手渡された。


「やったぁぁぁっ! ついにAランクよ! 長かったような短かったような、不思議な気分ね!」


「莫大な経験値と最高の装備、そしてAランクという名声値。これで新しいビルドのチュートリアルはすべて完了した。吸血鬼との決戦に向けた、最高の盤面が整ったぞ」


「ええ! お肉もたっぷりあるし、最高のコンディションで挑めるわ! 待ってなさいよ魔将ヴァルドレッド、次こそ絶対に真っ二つにしてやるんだから!」


 念願のAランク到達と極上の飛竜肉を手に入れた二人は、いよいよ因縁の強敵が待つ死地への出発に向け、闘志を熱く燃え上がらせていた。

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