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ミオとナオトの異世界TRPG冒険譚  作者: かわさきはっく
第10章 聖法国ヴァルドリア・再来編

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第111話 爆買いフェイズと、銀の聖戦士

「あははははっ! どきなさい、どきなさい! 大富豪のお通りよー!」


「おいミオ、スキップなんかして目立つな。容疑が晴れたからといって、無駄にヘイトを稼ぐ必要はないだろ。少しは落ち着いて歩け」


「無理よ! だって私たちのアイテムボックスには金塊がうなるほど入ってるのよ!? ケチって野宿してた頃とは資本力が違うのよ資本力が!」


「成金特有の醜いテンションの上がり方だな。まあ、財布に余裕があるのは事実だが、無駄遣いをする気はないぞ。今回はあくまで、ヴァルドレッドを破る対策(メタ)装備を揃えるための出費だ」


「分かってるわよ! 銀の武器とガチガチの重装甲でしょ?」


「ほら、着いたぞ。聖都の中でも一番格式の高い武具店、白銀の鉄床亭だ。教会直属の聖騎士たちも御用達の高級店らしい」


「うわぁ、お店の外観からしてもう高そう! ショーウィンドウに飾ってある剣、柄に宝石がびっしり埋め込まれてるわ!」


「ああいうのは貴族の観賞用だ。俺たちが求めるのは実戦で最高値のステータス補正を叩き出すガチの武具だ。入るぞ」


 カランカラン、と上品な鐘の音を鳴らし、二人は武具店へと足を踏み入れた。

 店内は油と鉄の匂いではなく、どこか神聖な香りが漂っている。壁には純白の盾や、銀色の輝きを放つ剣が整然と並べられていた。


「いらっしゃいませ。……おや?」


 カウンターの奥から現れた、片眼鏡をかけた初老の店主が、二人の姿を見て怪訝そうに眉をひそめた。


「お客様、当店は初めてでいらっしゃいますな? 申し訳ありませんが、当店は高位の聖騎士様や、教会の紹介状をお持ちの方を対象とした……その、お値段の張る品ばかりを取り扱っておりまして」


「要するにチュニックなんか着てる一見さんの貧乏人はお断り、ってことね! 相変わらずファンタジー世界の店主は人を見た目で判断するんだから!」


「落ち着けミオ、テンプレの反応だ。店主さん、紹介状はないが、これで買い物をする資格の証明にはなるか?」


 ゴトリ。

 ナオトがカウンターの上に金塊を無造作に三本ほど積み上げた。


「なっ!? き、金塊!? それも、これほど見事な純度のものを三本も!?」


「これはただの手付金だ。今日はパーティーのメインタンクを務めるこの女の装備を頭から爪先まですべて新調しに来た。予算に糸目はつけない。あんたの店にある一番高くて一番硬い、対アンデッド特化の最高級品を出してくれ」


「は、ははぁっ! これは大変失礼をいたしました! ただいま、当店のVIPルームへとご案内いたします! さあさあ、どうぞこちらへ!」


 店主の態度が審問官長と同じように百八十度ひっくり返る。

 ミオとナオトは顔を見合わせ、資本力という最強のステータスの偉大さを改めて噛み締めながら、奥の部屋へと入っていった。


「さて、お客様。対アンデッド特化の最高級品をご所望とのことですが、具体的にはどのような装備をお探しで?」


「銀だ。吸血鬼の再生能力を阻害できるだけの、高純度の銀を使った武器と防具が欲しい。でも、純銀じゃ柔らかすぎて実戦の強度に耐えられないだろ? そこで、強度と浄化作用を併せ持った、特殊な合金の装備はないかと、ここへ来た」


「ほう! お若いのに武具の特性をよく理解しておられる! おっしゃる通り、純銀ではスケルトンを叩いただけで曲がってしまいます。ですが、当店にはまさにうってつけの品がございますぞ。こちらです」


 店主が恭しく布を取り払うと、そこに現れたのは息を呑むほどに美しい輝きを放つフルセットの重装甲と、巨大な両手剣だった。


「うわぁ! すっごく綺麗! ただの銀色じゃないわ、透き通るような白銀の輝きよ!」


「お目が高い。こちらはミスリル銀の聖鎧と白銀の断罪剣。軽量かつ絶対的な硬度を誇る希少金属ミスリルに、祝福を受けた最高純度の銀を錬金術で融合させた、伝説級の合金で作られております。物理防御力はもちろんのこと、アンデッドの呪いや状態異常を弾き返す強力な魔法耐性も備えておりますぞ」


「素晴らしいな。首元から関節の隙間まで、チェインメイルとプレートで覆われている。これなら、あの吸血鬼の血の弾幕(ブラッド・バレット)を食らっても、ダメージを最小限に抑え込めるはずだ」


「しかもデザインがすっごく可愛い! 重厚なのに、ちゃんと女性の体のラインに合わせて作られてるし、背中の青いマントも聖騎士(パラディン)って感じで最高! ねえ、これ着てみていい!?」


「ああ、フィッティングしてこい。機動力がどれくらい落ちるかの確認も必須だからな」


 数分後。

 更衣室から現れたミオの姿はかつての軽装の戦士の面影を消し去り、威風堂々たる鉄壁の聖戦士(パラディン)そのものだった。彼女は自身の身長ほどもある巨大な両手剣を肩に担ぐようにして構えている。


「どう!? ナオト! すっごく重厚感があるでしょ!」


「ああ、完璧だぞ。紙装甲で走り回っていた頃とは大違いだな。盾を持たず両手剣一本で火力を出す構成だが、その重装甲なら十分すぎる防御力を確保できる。よし、次は俺の買い物だな」


「ナオトの買い物? クレリックなんだから、真っ白な法衣とか司祭の杖じゃないの?」


「俺はただ後ろでヒールを撒く気弱なヒーラーになる気はない。店主、俺には動きやすさと防御力を兼ね備えた中装鎧と、アンデッドの骨を粉砕するための鈍器を出してくれ」


「おお、神聖魔法を扱いながらも前線に立つ、闘う聖職者スタイルですな! それならばこちら、銀糸のチェインメイルと祝福されたミスリルのメイスはいかがでしょう!」


 ナオトが受け取ったのは法衣の下に着込めるほどしなやかで頑丈な銀の鎖帷子と、先端に棘のついた重々しい金属のメイスだった。


「よし、これなら俺も前線で殴り合いに参加できる。魔力切れの時でも、スケルトンの頭蓋骨くらいなら簡単にカチ割れそうだ」


「ちょっとナオト。それ、どっちかっていうと野盗が持ってそうな物騒な武器じゃない? ちっとも神聖そうに見えないわよ」


「見た目より実用性だ。アンデッドは斬撃よりも打撃に弱い。このメイスでゴリゴリ削りながら、ゼロ距離でヒールも使う。それが俺たちの新しい基本戦術だ」


「なるほどね。二人揃って前衛で殴り倒すスタイルってわけ。最高じゃない!」


「装備はこれで決まりだ。店主、合計でいくらになる?」


「は、はい! 国宝級の武具ですので、合計で金貨一千枚……金塊だと十本分となります!」


「安いもんだ。ほら、追加の金塊だ。釣りはいらん」


 ドサリ、と。

 ナオトが追加の金塊をカウンターの上に無造作に積み上げた。腰を抜かして拝み倒す店主を尻目に、ナオトは次の目的を口にする。


「よし、武具は揃った。次は大聖堂の売店に行って、聖水ランク3・女神の涙を二千本注文するぞ。後で宿屋に納品させる手はずを整えないとな」


「二千本!? またそんな頭のおかしい数を……。いくらなんでもやりすぎじゃない?」


「ヴァルドレッドの異常なHPと不死の再生能力を削り切るには、これでも足りないくらいだ。使えるリソースはすべて使う。あいつを数の暴力で圧倒してやる」


 二人は新調した銀の武装をガチャガチャと鳴らしながら、対策(メタ)ビルドによる反撃の準備を整え、意気揚々と店を後にした。

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