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21,欲望に忠実な人達


 学園祭の翌日は休みだった。最後にダンスパーティーもあったし疲れを癒やせとのことらしいが私は寝る時間が少し遅れたくらいで特に体調も崩していないので午前中は学園の訓練場でレイ様、イナ様、ハリス様、リスト殿下と一緒に手合わせをした。



 「お前元気だな」

 「昨日あんなに遅かったのに」


 レイ様とハリス様に珍獣を見るような目をされた。

 〈ご安心を。きっちり3時間は寝ました〉

 親指でグッドマークを作ってみたが、2人共、残念な子を見るような顔だ。



 最近は5時間以上睡眠を取ることが無くなったので3時間はまだよく寝てる方。昔は4時起きだったが最近は24時就寝3時起き生活。そしてこの生活に慣れてしまって疲れを感じない自分に私が一番驚いている。



 「この後はどうすんの」

 〈魔法実習棟に行って魔法の練習します。せっかくの休みなので〉

 「せっかくの休みなら大人しく休めば良いのに」

 〈何もしないと何かしたくなるのが人の性ですよ〉

 「わからなくはないですが…」


 「付き合わされる俺達の身にもなれよ」

 レイ様が抗議してくるが知ったこっちゃない。

 〈私の方が身分が低いのですから、断ることもできたのですが〉



 「ゼリーがあるなら食べたいだろ。昼食も出るし」

 いつまで経っても食に従順。チョロい。

 〈因みに今日の昼食は焼き肉サンドです〉

 これはレイ様の好物の一つだ。いざというときのご機嫌取りに便利。


 「まだやるか?」

 〈お願いします〉

 「チョロ………」

 後方でリスト殿下が唖然とした顔で小さく呟いた。今回ばかりは私も貴方と同じ意見です。






 「よしっ…!」

 「やった…!」



 2人ペアでやっていた。レイ様とハリス様、私とイナ様、審判はリスト殿下。リスト殿下が留学を決めたきっかけは王位欲しさに私に直談判することにしたと思っているが、今はすっかり騎士科に馴染んでいる。馴染みすぎて偶に、王子であることを忘れられることまで。



 格下である私の所にも非礼を詫びに来てくれた。自分は地位に興味が無かったはずなのに何故か王太子にならないといけないと思い込んでいた、と。誰かに唆されたのか、もしくは洗脳されていたか。



 長く自国から離れたことでそれが解けたのだと思う。彼も今は年相応に遊んだり笑ったりしている。ブレスレットに反応もないし、ストーカーまがいのことをしていたあの時は本当にどうかしてたのだろう。

 


 この世の終わりかのような表情で日本式土下座を披露されたらつい許してしまう。もしこれが殺人未遂事件みたいな実害があればこの程度では済まなかったと思う。例え私が許したとしても私の周りは黙っていないはず。



 「負けました」

 〈私、弱くなりました。もっと頑張らないといけませんね。今のままでは名前負け辺境伯です〉


 レイ様に負けることは最近はほとんどなくなっていたので油断していたのだろうが戦場に行けばそれは通用しない。いつ魔物が復活するかわからない。


 あの王様2人は最強そうに見えるが、魔物が一定数を超えれば動けなくなる。信仰心が薄まると消えるそうだが魔物が現れればまるで金縛にでもあったかのように体が自分の意思で動かせなくなるそうだ。あの人達も意外と万能じゃない。



 「俺はもうパス。こんな体力オバケに付き合ってたら体がいくつあっても保たん」

 「ぼ、僕もちょっと休憩…」

 レイ様のパス宣言にハリス様もズルズルと退散していった。





 相手を失った私はイナ様とリスト殿下をガン見。

 イナ様は当然だと言う様に刀を持ち直し、リスト殿下は苦笑しながら地面に置いてあった刀を手に取った。離脱の2人は刀を置いてやりません宣言。どちらも黙っていると完璧なモデルといった雰囲気がある。実際は食欲には抗えない中学生だが。



 そして始まった1対1対1。2人一気に来るかもしれないしお互いに味方がいないから気は抜けない。

 「リスト殿下腕上げましたねぇ〜」

 「だな〜」


 気の抜けた会話が飛んでくるが無視。というより無視せざるを得ない。後ろの会話にまで気を遣っていたら真っ先に潰される。特にリスト殿下は体力フルマックスの状態。私の半径25センチは既に厳重警戒区域だ。真っ赤な警報が鳴り響いてる。





 泥試合の末、お腹が空いたレイ様によって試合は一時中断。焼き肉サンドのお時間だ。軽くシャワーを浴びたら収納からサンドイッチの入ったバスケットを取り出してこれ以上汚れないように床にシートを引く。

 5人くらいなら余裕で入れる広さの。





 「やっぱり美味しいですね、エリーゼ様の手料理」

 〈エルシーのためにって沢山練習しましたから〉

 ハリス様の言葉に胸を張る。やっぱり自分の頑張りが沢山の人に認められるのは凄く嬉しい。



 「お二人は恋愛結婚なのですか?」

 〈いえ、前国王からの王命で結ばれたものです。偶然好き合っただけですよ〉


 「そういうこともあるのですね。留学期間は学生の間だけ、国に帰れば適当な婚約者をあてがわられるでしょうね。僕は3子ですし、ここに残りたい気持ちもあるのですが…」




 リスト殿下は少し寂しそうに笑っていた。彼もこんな顔ができたのか。


 「ここに婿入りすれば良いんじゃないか?年の近いフリーの高位貴族はまだいるだろう。ミスコンに参加していた生徒会以外の女子生徒は全員フリーだ。立場関係なしに、王子なら選り取り見取りだろう。


 その中から気が合う令嬢を見つければ良い。養子も取っていない家の一人娘だと尚良い。婿入り決定だ」

 「その手がありました」



 そういえば、リスト殿下もイリア様とエイ兄さま、ハリス様に次いで優良物件だったような。

 リスト殿下はグランドル王国で婚活するようだ。



 午後からはハリス様と別れて魔法実習棟へ。お弁当要因の私にはもう用はないはずのレイ様もいる。何故かと聞けば「マリーが来ているらしい」とのこと。












 レイ様が抗えないもの、それは食欲とマリー様欲。


今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・レイ・ウォルフラン(15歳)

・イナ・ガイアス(12歳)

・ハリス・ゴッドソン(12歳)

・リスト・サリバン(12歳)

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