表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/51

11,新学期が始まりました


 とりあえず色々あった夏休みは終わり、新学期が始まった。前世と同じで3学期制のこの学園では秋に学園祭が行われる。



 勉強はしつつも学園祭に向けて準備を始める。日本のものと違い、この学園は平民から王族まで様々な身分の学生が通っている。

 

 特に上位貴族の親や王族の卒業生も来るので念には念を入れて準備期間が長めに取られているのだ。高位貴族が準備期間が短いせいで醜態を晒せば笑い者になるので私も出し物には慎重になる。

 初めての学園祭というのもあるのだろうが。


 前世には学園物の漫画や小説があってそこに出てくる文化祭といえばメイド・執事喫茶やコスプレなどファンタジー感溢れるものだったがそれはこの世界では普通のことだ。

 貴族にはメイドがいて執事がいる。

 服装も平民のはまだしも私からしてみればほぼコスプレだ。


 やったとしても面白みがない。とりあえず海外の住民、お団子お姉さんに日本との類似点がないか確認しようと思う。



 「そうですねー。私の国は貴族制度がないので学校の文化祭はメイド喫茶とか執事喫茶が定番です。

 娘も今年高等学校に入学して初めての文化祭ですがメイド喫茶をやるみたいですよ」



 娘!?しかも15歳!?私が20代くらいだと思っていたお団子お姉さんは実は二児の母で40代だったのだ。


 全然40代の片鱗ないのに。私の両親も30代だが若くみられがちだ。それと同じだと思おう。美魔女ってやつ?




 「こちらは貴族制度があるのでメイドも執事も馴染み深いですね」

 〈そうなの。少しやってみたい気持ちもあったんだけれど…〉


 私も面白みがないとは言いつつやってみたい気持ちも少なからずあった。やっぱり却下か。




 「ではいつもと立場を逆にしては?普段は使える立場のメイドや執事ですが学園祭の出し物限定で身分の高い方がなりきるとか」 


 お団子お姉さんはパチンと指を鳴らして言った。

 〈例えば伯爵家当主のエイ兄さまが1日執事として奉仕する、みたいな?〉

 「はい、普段と違って面白いと思いますよ」



 確かに、普通科は出し物がない。魔法科、騎士科、魔法実習棟の3つにいる生徒が何組かに別れて出し物をするわけだから必然的に主体になるのは貴族。

 貴族が平民に奉仕するのも面白いかもしれない。プライドを捨ててというのは難しいかもしれないが参加するのは希望者だけで良い。



 最後にあるミスコン、ミスターコンがこの学園祭の目玉イベントだ。出し物は前座にすぎない。


 この日は皆こぞってやりたがる。過去に一度だけ、優勝した男女がカップルになったという事例があるのだ。

 伯爵家の令嬢が同じ伯爵家の子息にプロポーズしてそのまま婚約、結婚をしたという。そういったこともあり、毎年盛り上がる。婚約者のいない人達は特に。 


 生徒会は強制参加で本人達は乗り気じゃなさそうだが美形揃いなので話題に上がっている。


 しかも会長のイリア様、学生伯爵のエイ兄さまには婚約者どころか女の影すらないので超人気物件。

 フリーの令嬢達は自分が一番だと主張できるように気合いが入ってる。イリア様は知らないがエイ兄さまは質素な生活でも文句を言わない人を求めているので今回、気合い入れてまくった令嬢は不利になると思う。



 が、そんなこと皆わかっているので私は常に人に囲まれて質問責めにされている。どんな色が好きかとか、どんなデザインが好みか、などなど。


 あまりにも拘束される時間が長いのでプロフィール作って壁に貼り出したいと思ったものだ。やれやれ。


 美形の兄を持つというのも大変だな。悪女の噂がまだ流れっぱだというのに近付いてくるなんて相当振り向いてほしいみたい。






 何故。何故私は此処にいるのだろう。薄く開けた窓から吹く風がエルシーの髪を弄んでいる。時折書類がパラパラと音を立てる。さて此処はどこでしょう。そう、皆が憧れてやまない生徒会室だ。


 私はその隅でプルプルしていた。

 またごエルシーの機嫌を保つために呼ばれたのだ。ここまでくるといっそ開き直って寛いでも良いのではないだろうか。


 そうは言ってもまあそんな勇気はないので頭の中に一度浮かんだ考えを一蹴して代わりにスケッチブックを取り出した。



 文化祭のことについて会議をしているエルシーをただただ描く。風で書類が靡く音や議論を交わす音の中に私が筆を動かす音が加わる。もう、何度も描いてきたので何も見なくても描ける。

 が、それはその時その時のエルシーではなく、証明写真のようなエルシー。



 書類に何かを書き込む時に落ちる影があるエルシーも良いが、堂々と意見を述べる凛とした表情も良い。とにかく全てにおいて良い。


 描き終わって満足しながら絵を見つめているとふっと影が落ちた。それは柔らかい笑みを浮かべて相変わらず良い声で私に言った。


 「本物は此処にいるよ」

 と。それに一瞬フリーズした私の手からスルリとスケッチブックを奪うとパラパラとページを捲る。


 「僕しかいない」


 そりゃエルシー用のスケッチブックですから。エイ兄さま用の物もある。義姉か義妹ができた時、大量に送りつける用に描き貯めている。エルシー用のは暇な時に眺めるために描いている。



 「エルシー様。結婚してからも大変そうですね」

 イリア様がひょこっと出てくる。

 〈あ、そういえば。魔術師団合格おめでとうございます〉


 そう、イリア様は夏休みの間に魔術師団の試験を突破したのだ。ほぼついでみたいなものだが言わないより良いだろう。

 アクア様は「逸材だ」と褒めていたし魔術師団本部と隣接している騎士団本部にいたパトリック様とイヴァン様も「眩しかった」と目を瞬かせていたのでコントロールや魔力の強さなど全てにおいて首席合格が妥当だろう。

 寧ろそうで無ければ他の受験生の実力が知りたい。



 気合いで精霊を最上位まで育成して臨んだらしい試験だ。負けるわけがない。


 「はい、何とか精霊を味方にできました。通知が届いたのですが、記述実技どちらも満点でしたよ」

 〈す、凄い…〉



 首席だとは思っていたがどちらも満点だったとは思わなかった。来年からは尊敬してやまないアクア様の下で働くそうだ。


 「羨ましいのか」と言わんばかりのドヤ顔でこちらを見る。これは忠犬属性だ。今は片鱗がなくても多分そうなる気がする。


 「リア」


 正門の辺りでイリア様がそう呼びかけると金色の美しい角と少しピンクがかった白い羽を持つユニコーンが出てきた。

 私のは前世のゾウガメくらいのサイズしかないがイリア様のは成人男性が乗っても余裕があるくらいの大きさだった。イリア様と違ってエルシーもエイ兄さまも私も、幼い時に召喚したので精霊のサイズが小さくなっているのだと思う。



 精霊の存在は秘匿されていないし加護を持っている人も少なからずいるのでこんな風に堂々と出しても良い。

 流石精霊信仰の国。


 逆に、魔道具がメインの国では精霊は邪魔なものとして排除されることも多い。この国でしか精霊が見られないのはそういった過去を持っているからだ。

 精霊信仰の国はここ、グランドル王国だけだ。



 しかもいるかいないかわからないような神と違って目に見える形で何かしらアクションを起こしてくれるので信仰が長く続くのだ。

 一応前世の教会らしき建物はあるが祀られているのは神ではなく精霊だ。



 土の精霊、水の精霊、火の精霊、緑の精霊、風の精霊、氷の精霊、雷の精霊、光の精霊、闇の精霊、そして聖の精霊のイメージ絵がステンドグラスに描かれている。

そしてその10の精霊の中心のステンドグラスには竜の絵が。



 貴族でも平民でもそのステンドグラスがある教会に行って祈りを捧げ、心から祈れば怪我や病気が治るとされている。

 まあ本当かどうかはこの目で見ないとわからないが。でもあの2人ならできそうだ。聖女が出たら教会に入るのでこの顔は聖女に治してもらおう。



 両目でエルシーを拝みたいからね。

 そしてその2日後、国に激震が走った。




 聖女誕生の。


今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・イリア・アルスフィールド(16歳)

・お団子お姉さん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ