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3,早朝の鍛錬1ー2


 風で髪がボサボサになることもなく、私は学園に着いた。馬小屋に連れて行き、軽くブラシをかけたら後は専門の関係者に任せる。



 更衣室で制服から騎士服に着替えて新しく貰った木刀を手に取る。早く出ないと2番乗りのレイ様が来てしまう。

 更衣室、男女で分けてほしかった。お互いのためにも。事故なら何事もなかったかのように振る舞えるが故意に見られたなら半殺しくらいにはすると思う。

 「おっ、おはよう」

 〈レイ様、おはようございます〉

 「そこで待ってろ、すぐに行く」


 レイ様はマリー様の言う通りできる限り私の側にいてくれる。キースも見えないけどいるし1人じゃないけどこういう所あるの女子ウケ良い理由だと思う。婚約者がいる男に恋しても仕方ないのにしちゃうのはレイ様の問題でもあるな。私はエルシーがいるから良いけど。


 「待たせたな。やるぞ」

 〈はい〉



 基礎から初めて徐々に実践的なものになって私達の少し後に来たハリス様ともやって8時になる頃には3人とも土まみれ。私の髪は精霊のお陰で無傷だがその他は朝とは思えないほどの惨劇。

 遠くで1人で黙々と鍛錬していたイナ様は無関心といった感じだろうか。



 まあ当然と言えば当然なのだろうが一部の人は女の私がこんな早くから男2人と鍛錬しているという事実に眉を顰めている。しかもただの男じゃない。



 1人は侯爵家嫡男、もう1人は生徒の話題を根こそぎ掻っ攫う第四王子。

 嫉妬と羨望。どちらかといえば過半数は嫉妬を取るだろう。誰もが喉から手が出るほど欲している地位にある人間を私は何の努力もせず得たと、そう映っているだろう。



 まあ、コネが欲しけりゃそういう生き方して来いって言えばそれで終わり。騎士を本気で目指すならレイ様やパトリック様の目に留まっていたかもしれないのにと逆に哀れに思えてくる。


 それに私だって何の努力もしていなければこうはならなかっただろう。




 幼い頃からエイ兄さまと一緒に魔法の訓練をして王家に目を着けられるほどの力を得て、それがあってエルシーの婚約者になった。

 徹夜で作った魔道具は正常に作動し、エルシーの命を救った。もしあのまま、何もわからないままエルシーが死んでいれば王族との繋がりはそれで終わりだったはずだ。

 短期間で必死に勉強した料理で皆との距離はぐっと縮まった。距離が縮まらなければ夏祭りでハリス様も助けられなかった。


 自分なりに社会的にも肉体的にも強くなれるような努力をした。その努力を女というだけで嫉妬という二文字に否定される。

 いっそのこと男装でもすれば良いのだろうか。どうしたら周りに認めてもらえるのだろうか。力で捻じ伏せれば良いのだろうか。いや、それは駄目だ。恨みを買う。



 「女というだけで嫉妬心丸出しで睨むことしか出来ず、努力も何もしない男と、体格も基から備わっている体力にも差がある中で必死に努力して今の地位を勝ち取った女のエリーゼ。

 一体どちらが騎士に向いてるのか。それと、貴族たるもの、公の場でそう簡単に感情を顔に出すのは感心しないな」



 図星だったのか、レイ様に苦言を呈された男達は押し黙った。因みに私は感情が表に出る方だが公の場では何故かポーカーフェイスができる。

 ポーカーフェイスといっても表情筋を全く動かさないだけで感情はわからなくなる。文字でしか伝えられないから相手に心の内を探られることもない。なんて楽な体。


 それは置いといて、今はレイ様が私を庇う発言をしてくれたことが嬉しかった。



 「そうだな。彼女は俺の姉であり、王妃でもあるアンナ・ガイアスの友人だ。まず人に取る態度で無いことは置いておいて、知り合いが高い地位にいる者にそのようなことをすればどうなるかなど容易に想像できるだろうに。

 国王に睨まれれば弟であり騎士団幹部のパトリック殿からも睨まれるだろうな。自ら出世への道のりを断つなど。愚かだな」



 レイ様の次に声を上げたのは1人離れて鍛錬していたアンナ様の弟、イナ様。何度か騎士団の方で一方的に見かけた程度の人物だがそんな彼が私を認知していることが驚きだ。

 そしてレイ様の言葉にタメで答えられることも驚きだ。首を少し傾げることで疑問を伝えると、友人の1人だと教えてくれた。



 やっぱりレイ様は騎士団関係の人に知り合いが多いなと他人事のように流そうとしたが私も人のこと言えないと思い返す。


 王族、公爵令息、侯爵家嫡男。侮蔑の視線を向けるのは計3人だがその背後も恐ろしい。可哀想に、歯を鳴らして震えているではないか。私はというと、激おこの彼らを前に冷静さを取り戻した。これが目的ではないかというくらいあっさり怒りは引いた。


 内心どう思っているかは置いといて、男達は平謝りして去っていった。そしてその中にリスト殿下の姿はなかった。



 「リスト殿下は朝方まで捕まってて今日は通常授業から来るってよ。ざまあみろ。エリーゼを通してマリーを不安にさせた罰だ」

 ベタ惚れ王子…。


 「この王子は放っておきましょう。改めて、姉がいつも世話になってます。東のガイアス公爵家次男、イナ・ガイアスと申します」

 〈ガーナメント辺境伯長女のエリーゼ・ガーナメントです。こちらこそ、いつも良くしていただいて〉



 二度目の自己紹介をしたところで、イナ様は目を輝かせて私の両肩を鷲掴みにしてきた。


 「初めて騎士団でその姿を見かけた時からずっと対戦してみたいと思ってました!第二騎士団長を倒したそうですね!是非その腕を見せていただきたい!」

 威圧的な雰囲気は一切なく、残ったのは犬の耳と尻尾だろうか。自分より体格の良い男に尻尾を振られる経験がない私は目を白黒させることしかできなかった。


 「エリーゼ、諦めろ。戦闘狂に人間の言語は通じない。一度対戦したら引っ込むから今日の授業にでも相手してやれ」

 〈はい…頑張ります〉

 また一つ、害はないが面倒事が増えた。


今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・レイ・ウォルフラン(15歳)

・イナ・ガイアス(12歳)

・ハリス・ゴッドソン(12歳)

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