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3,早朝の鍛錬1ー1


 サクッサクッサクッ


 鏡の前から長い髪を持つ可憐な美少女(自称)が消え、ボブヘアの儚げな美少年(自称)が現れた。現在、エイ兄さまの屋敷に用意された自室で髪を切っている。



 氷の最上位精霊イトと炎の最上位精霊ヒイロが切ってくれている。アリアは「精霊様にやっていただいた方がよろしいと思います」と言っていたので2人にお願いした。

 機動力が落ちるどうのと言われたら侍女にはどうにもできない。アリアは戦闘メイドでもないんだし。今は屋敷の掃除をしてもらっている。



 イトが切ってヒイロはゴミとなった私の髪を燃やす。ヒイロの炎は凄い火力なので匂いや煙も気にならない。イトは女の子でお洒落にも興味がある可愛い子。今も機動力を気にしながら最大限私の顔を引き立てるような髪形にしてくれている。


 騎士服だけでなくドレスを着る時のことも考えて如何にさり気無く可愛くできるか唸っている。

 『うン、エリーゼはハーフアップと編み込みが一番似合うネ』


 イトが胸を張る。後ろまで見える3連結鏡を使うとよく見える。

 〈可愛い。流石イトだね〉

 『もっと褒めテ』


 私と同じ、白い髪を持つイトの頭を撫でた。

 『エリーゼ、これやる』

 ヒイロがぶっきらぼうに押し付けてきた何かを受け止めるとそれはエメラルドみたいな緑色の石がはめられた髪飾りだった。

 〈これは?〉



 『人間の恋人は相手の目とか髪の色のモン着けんだろ。イトに聞いたから取って来てやった』

 優しい!何なのこの子!イケメンすぎる!


 ヒイロの頭も撫で撫でしておいた。自分用の宝石箱に丁寧に入れる。中にはエイ兄さまやエルシーが小さい頃くれた安価なアクセサリーや誕生日に両親から貰った宝石が入っている。

 安価な物は公の場で使うことはできないけどこうやって偶に眺めるためにも傍に寄せて保管している。

 〈パーティーの時とかに着けるね〉

 『失くすなよ』

 〈失くさないよ。ありがとう〉

 『おう。じゃあな』


 そう言ってヒイロはイトを連れて消えていった。

 もう良い時間だしシャワーを浴びて寝ることにした。朝、また早く起きて剣と馬を練習しないといけないから。足にピッタリ沿うズボンを履いて。


 早朝4時頃。私の息遣いだけが屋敷に響く。今は屋敷の周りを走っている。全力疾走だ。これを何周もする。東京ドーム1つ分はあるのではないかと思うくらい大きな屋敷で何周も、何周も全力で走る。


 走り終えたら水分を軽く摂り、筋トレメニュー。大体この辺りで竜王ヒスイが起きてくる。

 「おはよう」

 〈おはよう、ヒスイ〉

 ヒスイは白い髪に金色の瞳、私と同じ色を持っている。



 どうせ張ってくれるなら護衛の顔をして突っ立っているより剣の相手をしてほしいと頼んだのだ。1人でもできなくはないが敵は自分では無いので。

 人間には勝てることがわかったがもっと強い敵が現れた時、対処できなければ名前負け辺境伯と笑われかねない。


 「キースも心配してたけどあんまこん詰めない方が良いぞ。今世のお前には頼れる相手がいるだろ?」

 〈…!?〉


 何で、私が転生者って、知ってるの。

 「無意識的に死に争うお前の魂を見てこの世界の創造神が転生させたんだよ。その場に我もキースもいた。だから我とキースだけは前世があることを知ってる」



 〈他は知らないんだよね〉

 「ああ、お前の料理で勘付かれていなければな」

 その可能性はほんとに高い。小麦文化だったこの国に一部とはいえ日本食を広めてるんだから他に同じような人がいれば多分バレる。


 〈まあ、今は良いや。変に態度変えてもバレるだろうし告白して受け入れてもらえるか微妙だからね〉

 「お前がそう言うなら。好きにすれば良い」

 貴重な相手との対戦、と思ってやっていたがヒスイは完全に手を抜いていたと思う。竜の全力は王都が消し飛ぶくらいの威力だろうから当然なんだろうけど。でも今まではいなかった相手。



 パトリック様やレイ様と対戦する時は正面から私の剣を受け止めてくれるので比較的単純で戦いやすい。

 

 でもヒスイは違う。軽く躱され、一瞬バランスが崩れた隙を突いてクリティカルを入れられる。相手の体力は温存できて此方の体力は削られていく一番面倒なタイプ。


 お陰で朝からボロボロだ。部屋に戻ってシャワーを浴びた。汗と土で汚れた服はアリアが洗ってくれるそうなので託し、自分は着替えなど済ませた。

 普通のご令嬢ならここはドレスや制服を着せてもらうのだろうが騎士科の科訓は “自分のことは自分で” なのでいつも通り、自分で着替える。

 科訓にする程のことでもないと思う。日本なら小学生、何なら幼稚園児もそう言われるから。まあここは貴族の、お金持ちの集まりみたいな世界なので郷に入っては郷に従え精神で何も考えないことにした。

 〈イト、ありがとう。可愛いよ〉


 朝食の前に風魔法で乾かした髪をイトに結んでもらっていた。

 両側から編み込んで後ろで縛る。この顔があるからこその髪遊び。


 『ありがとう、あとライから贈り物預かってル』

 そう言ったイトはレモン色の髪留めを着けてくれた。装飾は本当に最低限で動きやすさを重視した設計。

 『ライの加護がかかってるカラ、お守り』

 雷の最上位精霊ライは雨天時しか現れない。最近はあまり雨が降ってないからこうやって用事がある時は他の精霊を通じてやり取りをしている。

 〈電気ショック?〉

 『さあネ』



 意味深な笑みを見せたままイトは消えていった。雷でお守りってもう電気ショックしか思い浮かばないんだけど。でも精霊達の厚意を無下にしたくないので髪留めのことは忘れることにして食堂に向かった。

 「あ、おはよ。リーゼ」

 〈おはようございます、エイ兄さま〉


 朝はユリウスとアリアが作ってくれていた。私が身の回りのことをしている間にユリウスと合流したらしい。

 パン文化だがパンはすぐ消えるので腹持ちの良い米を食べる。私が引っ張り出しておいた食材を使って作ってくれるのでほんとに美味しい。味付けは私より少しコッテリ気味だがこれもまた良い。


 授業は普通科は9時、騎士科は7時からで遅くても8時。7時に行く生徒は稀だ。今は6時過ぎ。



 私の登校が異様なくらい早いのでエイ兄さまは関係ないが、なんだかんだ一緒に行ってくれる。ヒスイは最後に3食分のお弁当配達をしてからキースと交代し、私達は馬を飛ばした。


 毎朝毎朝そんなに馬を酷使して良いのかと思う人もいるかもしれないが大丈夫。私の子は走れない時間が長い程機嫌が悪くなり、無理矢理背に乗せて問答無用でダッシュすることがあるくらいなのだから。

 このくらいしてやらないと私の身が保たん。


今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・エリオット・ガーナメント(15歳)

・ユリウス

・アリア

・ヒイロ(炎の最上位精霊)

・イト(氷の最上位精霊)

・竜王ヒスイ

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