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1,ついに入学です

学生編開始です。


 私の声がなくなって早2年。私は12歳になり、王立学園に入学する日を迎えた。

 この2年の間に私の剣の腕はメキメキ上がり先日、喧嘩を売りに騎士団まで出向きパトリック様の団の騎士団長に見事勝利した。本気で相手をしたわけではなかったにしても私の中では歴史的快挙級だ。

 パトリック様は嫌々ながらも本気で相手してくれた。ピザを賭けて。お互い砂埃だらけの泥試合になった。


 騎士団長には勝ったがパトリック様には勝てなかった。いる時といない時で全然剣の重さが違うからイヴァン様って凄いんだな。好きな人の前では格好良いところを見せたいのね。うんうん、わかるよ。私もそうだもん。私に関しては負けてばかりで全然良いところ見せられてないけど。



 これは少し前に知ったのだが学園には幾つかの科があり、入学前にどの科に所属するかを選ぶようだ。


 まずは普通科1、2。普通科1は平民や家を継がない辺境貴族向けだ。日本の学生がやるような一般科目を学ぶ科。2は嫡男など家を継ぐ人が領地経営に必要な知識を学ぶ。制服のデザインは見た目重視で基本色は茶色、差し色に赤。美味しそう。

 2の方にはエルシーとエイ兄さまが通っているそうだ。魔法実習棟の生徒だし何故魔法科に入らなかったのと聞いたらもう学ぶことないって最強発言をもらった。そういえば2人とも精霊からの加護持ちだわ。魔法科は加護持ってない人向けの授業だわ。


 ああ、私の友人達は全員精霊の加護持ちよ。精霊王が面白がって加護くれた。「加護?良いよあげるあげる」的な感じのノリで。


 次に魔法科。魔法実習棟の生徒はエルシーやエイ兄さまなど例外を除きほぼ全員ここに属している。アクア様は魔法科だったらしい。魔法造形の神童と言われていたとか。制服は白。動きやすさが重視されている。


 そして最後に騎士科。騎士を目指す者の多くがここ。剣の他に乗馬も学ぶ。レイ様がここに在籍している。パトリック様はOB。


 あとは王族が受ける特別な授業があるとかないとか。シルス様達も何も話さないので私にはわからないが。


 私は何処に行くか悩んだ後、騎士科を選択した。領地経営については父さまに教われば良い。魔法は精霊達に教われば良い。

 だが剣も馬も覚えるのに時間がかかった分野になるので私にはここが一番あっている。



 いつ見ても大きい学園の門を騎士科を表す濃紺の制服を着てくぐる。入学式では新入生と在校生とでは入口が違うのでエイ兄さまともエルシーとも別。


 いつもシルス様主催のお茶会に行っていて他の貴族からの招待は受けたことはなかったので色々な視線に晒された。嫉妬、畏怖、憧れなど多岐に渡るが貴族からの視線で一番多いのは嫉妬だろうか。平民は憧れの色が出ている人が多い。貴族は王族と親しいアイツ何なんって感じで平民は聖女様だ的な。



 とりあえず騎士科の制服を着ている以上この程度で落ち込んだ素振りを見せるわけにもいかないし大して傷付いてもいないので顔だけ覚えて堂々と校舎に入った。


 科によって座るエリアが決まっていてその中で騎士科の生徒が座る場所は一番端。背の高い人が多いので他学科への配慮らしい。空いている席に腰を下ろし、隣の人に挨拶をしようとして気付いた。見たことある顔だ、と。



 「エリーゼ様?」

 今ばかりは声が無くて良かったと思う。彼は小声だったが私なら叫んでたかもしれない。


 こんなところで光の文字を出すわけにはいかないので小さく頷くことで肯定する。しかし見違えるほどの進化だ。夏祭りで抱えられていたショタの面影は2年という時間によって消滅、引き締まった筋肉を持つイケメン細マッチョと化していたのだ。制服に着られているような私と違い、しっかりと着こなしている。



 確か侯爵家の嫡男だったよな。普通科2じゃないんだ。誘拐されかけたからもっと強くなりたいってことかな。 


 お互いの確認だけして入学式は始まった。気を利かせて名前以外の会話を振ってこなかった彼、ハリス様に感謝だ。

 眠くなるような学園長の話、生徒会長の話、各学科の担当教師からの話などなど、多分皆退屈していると思う。目が死んでる。 


 しかしそんな空気は留学生の紹介が始まったところで打ち消された。とにかく美形だったのだ。それこそ、美形に囲まれてきた私が二度見するレベルの。ここの国よりも南にあるので顔つきは全然違うが程よく日に焼けた褐色肌も異国感があって良いということか。私はエルシーがいるから別に良いけど。



 「初めまして、魔導王朝サリバンから留学という形で参りました。第三王子のリスト・サリバンと申します。まだ日が浅く、ご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんがこの国の文化など沢山のことを学びたいと思っています。4年間、どうぞよろしくお願いします」


 はっきりとした話し方に最後の微笑みまで忘れない。勿論、作り笑顔だ。シルス様が公の場でよくやるやつ。あまりに長時間だと表情筋が疲れそう。


 アンナ様に萌えを求めてシルス様が抱きつく時は大体それ関係。アンナ様も公でない場所では随分とリラックスできているように思う。嬉しい限りだ。

 女性陣はほうっと見惚れているが美形には慣れている私は無表情で拍手をした。とりあえず形だけでも。


 そう簡単に懐に入られたら困る。国境の守り手として。少し周りを見渡したリスト殿下は視界の端に私を捉え、またあの嘘くさい笑みを浮かべた。私の方を見たのは偶然と思いたい。なるべく関わりたくないタイプだが憂鬱なことにリスト殿下は魔力が無いのにも関わらず、魔道具について更に深く学びたいと無理を言ったため、魔法実習棟の生徒になっているのだ。


 嫌でも関わることになってしまう。顔には出さないが2人目の私がいるなら彼女は内心舌打ちをしているだろう。



 式が終わればそれぞれの教室に向かう。教室の席順は自由で、基本貴族は前の方に座りたがる。が、元日本人精神にそれはキツすぎるので窓側の後ろに陣取る。隣はハリス様だ。

 クラスメイトはほぼ全員女の私が騎士科にいることに不信感を抱いているようで誰も隣に座ろうとしなかった。早いとこ実力を出したい。



 全員、自分の剣を持参しているので戦うことはできる。私も帯刀している。他は皆西洋モデルなので日本刀がモデルの私の剣が紛れてどれかわからなくなるなんてことにはならないだろう。隠されたりしない限り。まあ、そんなことをすればシルス様に睨まれ騎士団に睨まれで良いことないのでしないだろうが。



 担当教師が入ってきた。程よく日に焼けたゴリマッチョだ。

 「リュート・ハンクリスだ。38歳独身、騎士団在籍。騎士科の担当教師を務めることになった。とりあえず自己紹介」

 それだけ言ってハンクリス教授?は教壇から降りた。


 前の生徒から順に自己紹介をしていった。私は窓際の一番後ろ。最後だ。伯爵家以下の貴族が多く、公爵家は1人だけだった。アンナ様の弟らしい。


 「イナ・ガイアス。ガイアス公爵家の次男でアンナ・ガイアスの弟だ。よろしく」

 長男はアンナ様の2個下だ。現在20歳でイナ様とは8つ年が離れている。



 次。教壇に立った人を見て教室がざわついた。それもそのはず、式で生徒を沸かせた本人、リスト殿下がいたから。魔導王朝から来たなら魔法科にいるだろう。

 それならそんな頻繁に会うことはないだろうと若干の希望があったがそれが粉々に打ち砕かれたのだ。



 「入学式で紹介していただきましたリスト・サリバンです。騎士科に在籍することになりました。これからよろしくお願いします」


 そして私を視界に捉え、例の笑みを見せた。私はというと引き攣った笑みを浮かべるのが精一杯だった。作り笑い、ほんと無理。するのもされるのも。

 「ゴッドソン侯爵家のハリスです。よろしくおねがいします」


 ハリス様はよく通る声で真っ直ぐ堂々と話した。そう、最初が肝心。最初に失敗したら駄目だ。一生の黒歴史モノ、事故紹介になりかねない。


 ついに私の番になってしまった。緊張は一切顔に出さず、だが心臓バクバクで教壇に立った。


 〈初めまして、ガーナメント辺境伯のエリーゼ・ガーナメントと申します。2年前から声が出ないのでこうして光の文字で会話をします。よろしくお願いします〉



 いざとなったら精霊達に協力してもらう。動物園みたいになるかもしれないが背に腹はかえられぬ。ちょっと騒がしいくらい我慢してって感じ。


 拍手は上がった。が、他の人とは圧倒的に差がある。まあ良い。格下と思っていた相手にボコボコにされて膝から崩れ落ちるのを見たいので我慢。


 口角が上がるが手で口元を押さえて耐える。ゲス顔になりかねない。流石にハリス様にこの顔は見せられない。ドン引き確定演出入る。

 初日からそれは辛すぎる。エルシー達にはもう見られてるから大丈夫。6年一緒にいればそりゃあね。



 「エリーゼ様、この程度で返せるようなものでもないですが何かあればお手伝いさせて下さい」

 〈ありがとうございます、ハリス様。何もないのが一番ですけど緊急案件もありますからね〉


 この程度でって言うけど、私はハリス様を助けようとしたのではなく夏祭りに要らないスパイス加えようとしたあの男をぶっ飛ばしただけなので恩義を感じる必要はない。が、敢えて言うものでもないので放っておこう。


 クラス裁量が終わったらもう放課なので学園内を見る。道に迷わないように、というのと初めての異世界学園にワクワクしているから。


今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・ハリス・ゴッドソン(12歳)

・イナ・ガイアス(12歳)

・リスト・サリバン(12歳)

・リュート・ハンクリス(38歳)

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