魔王と意思
「くっそ、爆風でも痛い」
所々にも傷が出来てきているが、俺は楓に対して1度も攻撃を与えれていない。
ステップを踏みながら大きく爆裂魔法を躱していく。
ラプラスやウリエルを盾のように広げて爆風も抑えていく。
壁を走って天井に行って天井から落ちながら攻撃するにも楓の攻撃速度が速く不可能だ。
「どうしたら、いいんだよ」
答えを返してくれる人なんて居ない。
「しまっ!」
なかなかに大きい爆裂魔法の爆弾を何とかラプラスを足場のような板にして、腕に巻き付けるようにして、その足場を蹴って回避する。
しかし、大きくダメージは受けた。
「まずい!」
少しでも止まるのは良くない。
今でもこのように躱せている事から楓が抗っている可能性がある。
もしも楓が普通に戦っていたら俺は一瞬で爆裂魔法によって死んでいただろう。
詳しい強いさは分からないが、奏さんとの戦闘からそう感じる。
「どうしたら」
再び意味の無い問いを繰り返す。
助けたい、救いたい、そう願っても、そう考えても、それを成せる力を俺は持っていない。
「くっ」
着地と共に少し足首を曲げてしまった。
痛みはあるが、そんな事は無視だ。
逃げて、逃げて、逃げる。
直線的に進まずにカクカクとした動きをしながら楓に進んで行く。
しかし、楓は地面に向かって爆裂魔法を使うので爆風で飛ばされる。
「はぁはぁ」
集中力が、体力が、減っていく。
既に脳のリミットを解除して試したが意味がなく、今は通常状態だ。
これ以上脳のリミットを解除すると脳がオーバーヒートする。
「あぁ」
「か、楓!」
楓が少し喋ったかと思って楓の名前を大きく叫んだ。
しかし、それに答える訳は無いので、その代わりに大きな爆裂魔法が楓の手に出来て、それが圧縮されていくかのように小さくなっていく。
嫌な予感とゆうレベルでは甘い程の危機感を感じる。
俺はラプラス、ウリエルを翼に変えて上空に向かって飛んで行き、躱しやすいように天井に足を着ける。
楓が魔法を使った瞬間にこの場を離れる!
「今!」
楓の手の爆裂魔法が本の少し揺らいだ瞬間に天井を蹴って離れる!
が、遅かった。
「あがっ」
揺らいだ瞬間には俺の腹を貫いていた。
俺は地面に向かった落ちる。
「がは」
血を吐く、腹からの血と口からの血、落下した時に傷が着いたところから血が出てくる。
俺の辺りに血が侵食していく。
「か、え、、で」
楓に向かって手を伸ばす。ごめん、助けれなくて。ごめん、救えなくて。ごめん、あいつの手から解放してあげれなくて。
俺は、力が欲しいよ。皆を助けられる。皆を守れる。そんな、力が欲しい。
そして、俺の意識は途切れる。
◆
「く、くはははは、あははははははは!案外あっさり死ぬ物だねぇ!ひぃーははは。ああ、腹痛い。てか、白虎や玄武、清流に朱雀の反応が消えたな?あれ、悪魔くんもじゃん。あに?あいつら殺られたの?はぁ〜つっかえね。なんのために育ててやったと思ってんだよ」
魔王はとある画面を見ながらそんな事を呟く。
画面の向こうには腹に風穴が空いた翔にそれを感情の無い目で見下ろす楓の姿があった。
『僕の体を返せ!』
「ッ、うっせぇなぁ!なんだよてめぇ。僕は僕だ!なんだよお前の体?巫山戯てんの?僕の体は元々僕のだよ?てかさ、ほんと急に出てきて何なのお前?凄く五月蝿くて困るんだけど?」
『もう、こんな事はしたくない!返せ!』
「はぁん?こんな事ってなんだよ!僕が楽しいと、面白いと思った事をしただけやん。それをあいつを利用しただけだろ?」
『ふざけるな!翔君は僕の親友だ!お前に利用していい人でもないし!そもそもお前に利用される人間なんてこの世にいない!』
「あっそ、で、なんだよ。ほんと僕の中から出て行ってくんない?ウザイんだけど?」
『だから、僕の体なんだ!お前が出て行け!』
「くっ、うるせぇ、ほんとうるせぇ。なんでそんな意思がハッキリと伝わるんだよ!お前は僕の体を乗っ取ろうとしているんだろ?おかしいだろ!なんで僕の体をお前に譲るないといけないんだ?」
『違う!元々僕の体なんだ!』
「違う違う、僕は僕、君は偽物、いや、偽物でもないね。もう消えてよ、君。ウザイ」
『だから⋯⋯』
「だからなんだよ!少なくとも今の僕は僕だ!そもそも産まれた時から僕のままだ!何が違う?」
『元々の僕の価値観はこんなモノではない!』
「価値観?いやいや、元々⋯⋯⋯⋯あぁ?」
魔王は頭を抑える。
(なんだ、この気持ちの悪い違和感は?いやいや気のせいだろう。もしかして本当に僕は僕ではない?)
そんなわけないと頭を降ってその思考を忘れる魔王。
「さて、大分魔物達の反応が消えて来たな。こんなに倒しているのは誰だ?」
魔王は手を動かしていく。
それに合わせて画面が切り替わる。
「オーガ?なぜ魔物が魔物と戦ってんだよ!意味わかんね」
『返せ』
「僕もそろそろ動こうかな?」
『無視するな!返せ!僕の体を返せよ!』
「はぁ〜五月蝿い。ほんと、五月蝿い。そろそろ決論を付けようではないか。僕は僕だと疑っていない。君もなぜか、僕は自分だと言っている」
『そんな結論は簡単だ!昔、あの日、家に帰った時に居たあの人がお前を僕の体に入れたんだ!』
「あの人?誰そいつ?昔?」
『あ、ああ、そうだ。元々お前は僕ではなかったのに、あいつがお前を僕の中に入れたんだ。だから、お前の記憶は途中からな筈だ!』
「⋯⋯⋯⋯いや、昔からあるぞ!お前が言うあの人はいつだ!」
『5月の6日、翔君と遊んだ日だ』
「そんな日、あるのか?⋯⋯ないぞ!そんな日はない!」
『その日の記憶を持っていないお前、それがお前が偽物と言う理由だ!』
「いや、その日の年月は分からんが、父と母共に一緒にテレビを⋯⋯」
『父さん、母さん、⋯⋯お前!父さんと母さんを殺す気か!』
「いや、両親は互いに単身赴任しているから問題ない」
『そうか、それは良かった。⋯⋯そして、お前が偽物だと分かったか?』
「⋯⋯コロコロ話が変わるな⋯⋯偽物?いや、僕は本物だよ。さようなら」
『はぁ?うぐ、あが、なん、だ。これは?お、お前はまさか!いや、嫌だ!やめろ!やめろぉぉ!僕は、消えたりしない!僕は消えたりしないぞ!絶対にだ!僕は僕を取り戻す!お前達の力に屈したりは⋯⋯』
「はぁ〜なんだからよく分からんが、やっと静かになったな」




