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記憶と感情

 お願い、止まってよ!辞めてよ!私は私は翔君を傷付けたくない!

 お願い、止まってよ!私の体なんだからゆうこと聞いてよ!

 どうして、どうして私は翔君と戦わないと行けないの?


 誰か、止めてよ


 必死に抑えようとしているのに、必死に止めようとしているのに、その全てが意味をなさない。

 いや、本当はちょっとだけロックを掛けている。

 お陰で私は翔君に向かって広範囲で高威力の魔法は使ってない。

 でも、今の私のこの意志が少しでもやらいだらこのロックが解除されてしまう。

 そうなったら、翔君に避けれる術はないだろう。

 勝手に決めつけているだけだ。

 翔君にはこの場を切り抜ける力があるかもしれない。

 防具も分かっている。

 防御力が1だと聞いた事がある。あの防具の防御力はそこそこ高いのだろう。

 しかし、爆風だけでかなり体が傷付いている。

 HPが削れているのかもしれない。


 辞めて


 私はそう言うことしか出来ない。

 爆裂魔法とゆう強いスキルを持っていても、今の私に出来ることは止めてと願う事だ。

 私の体は私の意思では動いてくれない。

 なぜ?どうして?

 辛い辛い嫌だ嫌だ。

 誰か私を止めて、私を⋯⋯殺して。

 私は人を傷付けたいとは思わない。

 止めてよ!殺してでも良いから!誰か私を止めてよ!

 分かっている。そんな事を出来るのはこの場にいる翔君。

 だが、翔君は私を助ける事しか考えてないだろう。

 無力、私はスキルで強いと自惚れていたのだ。

 弱い、私の精神はこんな簡単に支配されるほどに弱い。


 な、なに!


 何かが頭の中に入ってくる。

 憎しみ、怒り、悲しみ、懇願、様々な感情と少しの記憶が入ってくる。

 その記憶の中には小さな時の翔君がいた。


 過去の私の記憶?走馬燈?


 違う、これは違う。

 翔君のこの目は、私を見ていた時の目ではない。

 誰だ!誰の記憶なんだ!


 いや、分かっていはる。

 私を支配しているあの自称魔王の記憶だろう。

 あいつは翔君の幼馴染だったのかな。

 翔君がとても笑顔で、楽しそうで、幸せそうなオーラを出していた。

 記憶の映像が変わる。

 これは、中学時代かな?


 翔君の隣にいるのはある女の子だった。

 誰だろうか?

 とても、翔君と幸せそうにしている。手を繋いでいる。

 互いに幸せそうに頬を染めている。


 マジで誰だろうか?なんか、無性にイライラするんだけど。


 さらに記憶が変わる。

 また、小さな翔君が目の前に出てくる。

 そして、そんな翔君に踵を返したように記憶の映像が変わり、ある家に入る。

 リビングに向かうとそこに居たのは、父と思われる男性がソファーで寝ていて、母と思われる女性が床で寝ている。

 そして、純白の翼に金色の髪、その目線はゴミを見るような、道具を見るような、そんな曖昧な目線を私、この記憶の持ち主に送っていた。


『こいつを依代にすれば、良いか』


 何故か、声が分かる。

 その天使のような男(?)の手が自分の上に行く。

 そして、何かを唱えると、⋯⋯次の瞬間に世界の景色が変わる。

 本の僅かな時間しか変わっていなかったが、その後、この記憶の持ち主の感情がさらに怒りに変わってくる。

 それが、伝わってくる。


 このドロドロとした怒りが私の中に入ってくる。


 コロコロと記憶の映像が切り替わり、その一つ一つが非人道的な行動ばかり。

 悲しみ、こんな事はしたくないとゆう感情と、これが楽しいと思う満足感、矛盾な感情が伝わってくる。

 なんだろうか、私が今支配されているよりも苦しい洗脳のようなものだった。


 痛い!


 なんだこの感情の波は!

 様々な感情が入ってくる。

 脳がそれを拒絶するが、無理矢理入ってくる。


 しまった!


 感情の波によって出来た痛みで制御を誤った。

 まずいまずい!抑えるんだ!意思で!私の意思で!

 私の意思がせめて、軌道をずらせれば!


 翔君!


 何とか無事のようだ。

 それでもかなり危険なようだ。


 辞めろ!入ってくるな!お前の感情なんて!私には関係ないだろ!


 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い


 辞めろって言ってんだろ!

 お前の憎しみなんて知らない!お前が自分の意思でやっていた訳では無いからと言ってもそれは結局お前の罪だ!

 お前が勝手に背負っていけ!


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


 お前が苦しいのも!お前が悲しいのも!全て伝わった!

 だが、それはお前が償うのが筋だろ!そんなに憎いなら勝手に復讐しておけ!

 なんで、なんで私はお前なんかの憎しみ、悲しみ、嬉しみ、負の感情や正の感情を感じないと行けない!

 私は誰も傷付けたくない!お前も誰かを傷付けたくない!しかし、お前の場合はそれに嬉しさを感じていただろ!

 私とお前は違う!だからもう辞めてよ!


 違う、嬉しくなんかない、『嬉しい楽しい』、もう、誰も傷付けたくない、『誰かの絶望は最高の至福』、違う違う、『絶望』、ちがう、『絶望』


 私を巻き込んで言い争いするな!集中が途切れる!


 破壊、崩壊、全てを壊し、全て殺す、絶望を、負の感情を集める。

 この星を破壊する。


 黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!


 やめろ!辞めろ!止めろ!


 こんなのずっと感じていると心が、感性が、完全に壊れてしまう。

 保て!保て!私の精神が弱くても、今からでも強くなればいい。

 私の意思は簡単に負けたりしない。


 新たな記憶が来る。


 それは、翔君がこいつのせいで濡れ衣を着せられ、警察に捕まってしまった記憶。


 罪悪感と優越感


 抵抗虚しく翔君はパトカーに入れられる。

 警察はろくに調べることも無く、全てを翔君がした事にして、翔君を犯人にしている。

 抗議しているのは翔君の両親。


 至福


 何が至福だ!

 これのどこが良い?これのどこが楽しい!これのどこが嬉しい!


 絶望


 辞めろ!私に入って来るな!


 終わり、お前は、もう、⋯⋯後には戻れない


 私は、私は後には戻れない?


 殺せ


 殺す?誰を?なんのために?


 目の前の男を⋯⋯⋯⋯殺せ!


 殺す?前の男を?目の前にいる、男を?

 違う!ダメだ!呑み込まれるな!翔君を殺してたまるか!


 しかし、遅かった。僅かに呑み込まれそうになった私の結果は広範囲爆裂魔法だった。


 全てを忘れ、全てを考えるな、何も、考えるな、ただ、ゆったりと過ごせば良い


 あ゛あ、ああ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛


 辛い、もう、嫌だよ⋯⋯

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