鬼王VS悪魔〈前編〉
「おばちゃん急いで逃げよう!」
「待っておくれ、足腰が弱くてそんなに速く走れないよ」
「急いで!巻き込まれるよ!⋯⋯おばちゃん瓦礫が!」
「ぇ」
少年とおばあさんの元に瓦礫が降ってくる。
「逃げ⋯⋯」
「らぁ!」
刹那、少年とおばあさんに瓦礫が落ちるかと思った寸前に瓦礫は吹き飛ばさせる。
少年とおばあさんは声のした方に顔を向けると、太陽に照らされ顔は分からないが『角』が生えているのは見えた。
「鬼?」
「急いで逃げろ!」
「でも、おばあさんが⋯⋯」
「オーガ!運べ」
『御意』
「いやー魔物だぁ!来ないで!」
『大丈夫だ』
「⋯⋯」
少年は警戒しながらもおばあさんの為に素直に従う事にした。
少年とおばあさん、オーガ見えなくなるのを確認した鬼王は空を向く。
正確には空、では無く空を飛んでいる魔物、悪魔に向かって警戒をしていた。
『貴方は魔物でしょう?何故、人間を助けたのですか?』
「お前には関係ないだろう?お前は悪魔か?」
『ええ、私は上級悪魔』
「悪魔か、面倒だな」
『面倒?ソナタが私に勝てると?』
「勝つさ」
『ぐふ、はは、あはははははは。『鬼』の殆どが『ヴァンパイア族』に滅せられ本来の力すら権限させる事の出来ない『鬼王』に何が出来ると?』
「⋯⋯何故、知っている?」
『教える訳無いでしょう?ただ、冥土ノ土産にヒントだけ、魔王も王とゆう事よ』
「なるほど、じゃあ、消えろ」
鬼王は地を蹴り悪魔の同じ高さになったところで鬼王の専用武器『血気丸』を振るう。
悪魔は指先の爪を伸ばし武器として扱う。
爪と剣がぶつかり合い火花を散らし、衝撃波で辺りの地面が盛り上がる。
『やはり、弱いですね』
「はぁん!本気じゃない攻撃を受け止めれない奴じゃ無くて良かったよ」
『強がりを』
悪魔は鬼王を弾き、鬼王は数回空中で回転して地面に着地する。
着地した時に地面がへこみ小さなクレーターが出来上がる。
鬼王は再び足に力を入れ、跳躍する。
跳躍する反動で小さなクレーターがさらに深くなる。
「鬼猫斬」
回転して斬撃に遠心力を重ね、悪魔に向かって剣を振るうが悪魔は何処吹く風の如く興味無さげに左手を突き出す。
「フッ、【猫縛布】」
斬撃が霧散し悪魔の翼を切り裂く。
『ぐふ』
「調子に乗りすぎだ」
これで鬼王と悪魔は同じ土壌に立った。
悪魔は翼の再生を優先させようとしたが、それは問屋が下ろさないとの如く鬼王が地を蹴り、衝撃波を撒き散らしながら悪魔に斬り掛かる。
『いくら弱小といえ、簡単では無いようですね』
「頭に乗るなよ?初級悪魔」
『私をあの雑魚共と一緒にするなぁ!』
「何が違うんだよ」
悪魔は自分が自分よりも格下の同族と言われ、怒りに満ちて怒りのままに魔法を放つ。
悪魔が使用した魔法は大きな炎の球で地面を溶かす程の熱を持っていた。
「はぁ〜、悪魔でも若者はダメだねぇ〜」
鬼王は剣に『気』を練り上げ、斬撃として生み出し飛ばす。
炎の球をその斬撃で斬り裂き、それでも勢いが衰えないまま斬撃は悪魔まで届く。
悪魔は冷静になって跳躍でかわす。
跳躍した時に斬られた翼に痛みを感じる。
『痛み?だ、と?』
「やっと気がついたか?そう、悪魔種に本来は『痛み』等感じない。元々精神生命体みたいなものだからな?」
上手い例えが思いつかない鬼王。
悪魔は基本的には魔界から召喚する。
悪魔は本来肉体を持たない精神生命体なのだ。
例えるなら幽霊的な存在だ。
『何故、私に痛みは感じないはず?それに、いくら受肉しているとは言え⋯⋯』
「だろうな、元々悪魔はこの世で活動するなら肉体を持たないといけない、まあ、お前の場合誰かの肉体や器を持っている訳では無さそうだがな?」
『⋯⋯』
「そんなに焦んなって、まあ、お前流に言うなら『冥土ノ土産にヒントをやるよ』か?」
『黙れ!』
「ヒントはな、この俺が迷宮に居ない事だ!」
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯ま、まさか!貴様!正気か!他人に魂を委ねるのは相当危険な行為だぞ!』
「へぇ〜いくら馬鹿でも分かるのか?」
『何時まで馬鹿にすれば気が済む?』
「悪魔がムカついている姿はとても爽快だ。⋯⋯それが天使ならもっと嬉しいねぇ」
『死ねぇ!』
悪魔は先程の炎の球ともう1つ見ているだけで呑み込まれそうな黒い球が悪魔の左右に出現する。
悪魔は片手を鬼王に向けて掲げると、それに合わせるかのように炎の球と黒の球が鬼王向かって飛んでいく。
「暗黒弾と火炎弾か、さすがは悪魔って言ったところか。暗黒弾は斬るのが難しいな」
暗黒弾は物体であり物体では無い中途半端な魔法なので物理で斬ることは基本不可能だ。
勿論、鬼王も例外ではない。
『精神生命体に近いお前にこれが止められか!』
「止める?止めない?違うね、『消す』が正しい」
鬼王は剣を地面に刺し、両手を腰元で構え魔力と『気』を混ぜた物を溜めていく。
「鬼源砲」
手を目の前に突き出す出すよに動かし、閉じていた両手を広げる。
檻に捉えられた何が解放されるかのように鬼王の手からレーザーが飛び出す。
衝撃波すら巻き起こらないレーザーが【暗黒弾】と【火炎弾】と衝突する。
衝撃波を撒き散らしながらぶつかり合い、数秒経って爆発が起こり、煙が巻き起こる。
煙が収まった時には辺りは爆風で滅茶苦茶になっており、地面には悪魔と鬼王が立っていた。
『な、なんだ今のは?』
「ふ、人狼と研究して創った技だ。暗黒弾同様中途半端か物質だ」
『小賢しい真似を!』
「何が小賢しいんだよ?それに俺がお前に勝てない?はぁん!あんな『魔王』の元で育ったお前に俺が負ける訳ねぇだろ」
『ま、ままま、魔王様の事を馬鹿にするなぁあああああ』
「何が悪い?」
『死ねぇぇえええ』
悪魔は怒りで我を失って理性の無い獣ように正面衝突で爪に魔力を込めて威力を上げる。
爪を振り上げ、鬼王に向かって力強く、殺意を全力に込めて振り下ろす。
が、そんな単調で簡素な攻撃に鬼王は当たる訳もなく、バックステップで軽く躱し地を蹴って悪魔に肉薄し、回し蹴りを使って悪魔を飛ばす。
悪魔は地面を数回バウンドした後にスライドして止まる。
悪魔は痛みすら感じない程の怒りをグツグツと煮えたぎらせる。
手を使って立ち上がり、フラフラとした足取りでも意識はハッキリとしていた悪魔は徐ろに自分の翼に手を回し、力を込める。




