87話 『海賊版』
真紅の鱗に包まれた四肢から、古代ドラゴンに近く、しかし僅かに異なるオーラ紋が立ち上った。
五フィート程しかない身体は外見に似合わず禍々しく攻撃的で、紛うことなき戦士の印象を受ける。
シャリン! 再度、硝子の音色。
両手足五本ずつ、合計二十本の鉤爪が、その涼やかな響きに合わせて二フィート半ほどまでせり出し、熱を帯びた。
変異を終えたセシュレースが、綺麗に生え揃った小さな牙を見せて笑う。
「ぱーふぇくとどらごにっくぼでぃ!」
言いつつ、セシュレースは演武めいた鋭くシステマチックな動きで手足を揺らしはじめた。
爪が薄紅色の軌跡を描き、追ってシュッ、シュッと空気を裂く音が鳴る。
ウォーミングアップのつもりだろうか?
なかなか、様になっている。
だが、リュミエラはそれら全てを訝しんだ。
「んー、どういうことかな、ええと、エレティック、だっけ? 隊長のコピーはもっとずっと本人に似ていた、っとね!」
SLASH!
横一文字に振り抜かれる、竜牙剣。
三角形の刃は虚空に生成された怪人カトルヴァンセッティエムの下僕の一匹、奇形の走り大蜥蜴を両断し、余波で床の粉塵と小型の瓦礫を吹き飛ばした。
大広間の反対側では、二人の怪人(もちろん、その一方は相棒のサンカントだ)が騒がしく戦っている。
そちらから流れてきたのだ。
無粋な邪魔者を消し去ったリュミエラが、まったくの自然体で一歩を踏み出す。
変異を行わないばかりか、構えすらも取っていない。
赤黒いフードローブが後ろに流れて少し荒れたシルバーブロンドが靡き、超重元素レンファニウムの輝きを備えた、艶めかしい骨のような左足が金属音を立てた。
セシュレースは言い知れぬなにかを感じて後ずさった。
ジャリ。鱗で硬化した踵が砂利を踏み砕く。
上下関係のない相手に迫られるのは、自我を得て初めてのことであったのだ。
だが、彼女を怯ませたものは少なくとも恐怖ではない。
警戒、不快、怒り。そういったものの混合物。
「エ、エレティックみたいな整形野郎と一緒にしないでよお母さん。
確かに私は人工授精の培養槽生まれで、成長促成と強化改造もしてる。でも固有の魂魄を備えたれっきとした生物なの!」
「あ゛? どっちにしろ、認知はしない」
足を止め、首をかしげるリュミエラ。
霊的形質学に詳しいわけではないが、組織からの複製体は元と同様の肉体的性質と、劣化あるいは類似の魂魄を持つ。
……と、習った。
超越的な形質学者であるベルトランがそこからどれだけ弄っているかは知らないが、どうもセシュレースの応答は要領を得ない。
「違ああああああうううう!」
セシュレースが叫び、垂直に跳ねた! DAUM!
溜めも僧術による強化も行わず、高さ数十フィートはあるドーム天井に張り付く身体能力!
逆さ向きのままひょいひょいと天井を歩き回るセシュレース。
小型軽量ボディと易々と岩に食い込む鉤爪の相乗作用で、高い機動力を実現しているのだ!
決して対応できないわけではないが、どうもやりづらい。
リュミエラはその場から動かず、視線だけで敵を追跡した。
不可視の照準がセシュレースの赤い鱗と白い皮膚の境を這い回る。
「逃げてないで、かかってきなさいよ」
透けるように白いリュミエラの肌と髪が強烈な閃光を放つ。
偽りの聖女のもたらす明るい闇!
目潰しの有効範囲に巻き込まれたサンカントと少女怪人が、騒がしく喚いている。
一方、直近で浴びたセシュレースは顔を背けすらせず、なんともないようだ。
やはり、光熱に対して免疫を持っている。
ここまでは、予想通り。
「SYUHSHH……SYAHAAA!」
天井を蹴り、凄まじい加速で頭上から飛び掛ってくるセシュレースの爪牙は、怒れる若きドラゴンそのもの。
並みの相手なら意識することもなく膾切りになるだろう一撃……しかし!
「シャーッ!」
ごく軽いシャウト。なんでもないような腕の動き。
SMAAAASH!
リュミエラはその場に立ったままだ。愛用の竜牙剣を振ってすらいない。
もちろん、偽りの聖女による活性上昇も最低限だ。
ただ星の子の身体能力で、真紅に煌く左の拳で殴り飛ばした。薙ぎ払うように。
彼女は失望していた。己の娘を名乗っておいて、そんなものかと。
セシュレースは壁に叩きつけられた。
咳き込みつつ、立ち上がる。
「グホッ……なん、で……グリーン・ドラゴンと、ビオス細胞と、お母さんが合わさって三倍の私が、なんで……こんなに……」
「あんたね、勘違いしてるでしょ」
「ああい?」
ジャリ、ガシャン、リュミエラは足音を隠しもせず悠々と歩みを進めた。
全く、争うに値しない。
光熱耐性を維持したまま複製と改造がなされているのは大したものだが、量産でもされない限りは脅威となるまい。
そもそも、“マインドレイク・セーズ”は時間稼ぎと言っていた。
長い名前の幼長魂族怪人の方はどうだか知らないが、少なくともセシュレースに大した期待をしていなかったのは明らかだ。
「星の子の力は魂魄に内包された記録、固有形質を通して、あたしの身体構成物質に刻まれている。
つまり、ギシャーッ!」
言うが早いか、竜牙剣が爪を構え直したセシュレースに向かって突き出される!
長さ三フィート強、幅二フィート強もある威圧的な大質量刃が霞むほどの速度。
父ロドリグ直伝、聖堂騎士団流直突き!
「や、め、グホッ」
当たれば間違いなく胴を貫通するほぼノーモーションからの一撃を、セシュレースは持ち前の反射神経を活かして寸前で転がり逃れた。
だが恐るべきは太古の力と技術の融合。
オーラが巻き起こす衝撃までは防ぎきれず、白い脇腹から鮮血が噴き出す。
さらには“牙”の切っ先が掠めた壁に、刃渡りの数倍はある穴!
「……と、こうなる」
「なによ、なによなによなによおおおお!」
怒り、あるいは失望の感情を極力廃した、事務的な声で呟いたリュミエラが、彼女の身体能力からは随分と乖離した優雅さで振り向く。
セシュレースが立ち上がるのを待っているかのように。
「言いたかないけど、“牙”の有無をおいても、あんたは絶対に勝てない。
仮にベルトランがあんたを作る際、余計な混ぜ物をしていなかったなら別だけど、そうじゃないからね。
あたしと同じスタイルで戦うには、血が薄まりすぎてる」
「違う、違うの! 私はお母さんの!」
理解しがたい主張と共に火山性の蒸気を吐くセシュレースだが、表情はいまだ戦意を失っていない。
直前に付けられた脇腹の傷も、澱んだ緑の鱗で塞がりつつある。
ベルトランによる何らかの改造、あるいはグリーン・ドラゴンもどきとしての能力だろうか?
ともかく、リュミエラは再び竜牙剣を振り上げた。
直後。
「調子狂うわ、けど時間もないし、さよな、っお゛おお゛!?」
「だって母、げぶッ」
刹那、二者の間に怪人の操るデッドコピー・ワームが割り込んだ!
ほぼ同時、リュミエラの“牙”と、セシュレースの鉤爪がワームを粉砕。
あちらでなにか起こっている。
さらにもう一匹、デッドコピー・タイガービートル!
リュミエラは“牙”を振った勢いのままセシュレースを強烈に蹴り、タイガービートルごと瓦礫に叩き込んだ。
砕け散る巨大甲虫の殻と、体液を撒き散らしながら身体をくの字に曲げて吹き飛ぶセシュレース!
緑色の鱗による自己修復能力がどの程度かは不明だが、死なずともしばらくはまともに動けまい。
正直なところ、後瞬き数回分ほどあれば止めを刺せたであろう。
それでも、処理を後回しにしたのだ。
リュミエラにとって、サンカントがまだ敵怪人を封じ込めできていないというのは、異常な事態だった。
度重なる捕食と修練に加え、指揮型怪人“サンキエム”の残滓をその身に宿す相棒は、通常の先代勇者コードを持つ怪人に対しかなりの優位を持つ。
つまり、名前の長い長魂族怪人カトルヴァンセッティエムは並みの相手にあらず!
「BLEEEAT!」「ジグジグジグジグ」「HISSHISSHISSSSS」「VRRRRR!」
方針を変更したリュミエラに、元の魔物が何かすら判断不能なものを含むデッドコピーが牙を剥く!
その者どもは、カトルヴァンセッティエムが逃げ、サンカントが追っていった先から湧き出しているようだ。
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「なんなんだよ畜生!」
機巧悪魔レクタニカの居た広間を抜け、怪人が突き破ったシャッターへと飛び込んだサンカントは毒づいた。
先の広間よりもさらに大きな空間だ。
直前まで重量物が据え付けられていたとみえる、無数の真新しいボルトや杭の跡。
何らかの製造ラインらしき停止した幅広いコンベアには塵ひとつない。
明らかに引き払われた工場……しかも、ごく最近まで稼働していたに違いない。
そして、逃げながら攻撃してくる敵!
「なんだ? ってさ、そりゃ050、今日はぁー、厄日だよおおぉ!」
BLAMBLAM! BLAMBLAMBLAM!
鮮やかなピンク色の編み髪を揺らしながら駆け回るカトルヴァンセッティエムが、後ろを向いたままハンドガンを撃ちまくる!
身長五フィートもない幼女さながらの痩身は上下左右にぶれ、いびつな走り……いや、違う。
恐るべきことに、怪人はリコイルの向きを調整することで加速しているのだ!
加えて射撃自体も、追うサンカントを振り向きすらしないにもかかわらず、高い精度を誇る。
不幸中の幸いは、ハンドガンの威力が彼の高密度の改造肉体と鏡の防御膜を貫くほどではないというところか。
とはいえ当たれば多少なりとも防御膜が削れるし、痛いし、場所次第で体勢も崩れうる。
しかも、これほどの技能を持ちながら、怪人にとって銃撃は補助にすぎない!
見よ、虚空に浮かぶいくつもの紫のひび割れを。
ヒュオォォン! 冒涜的な音と共に様々なデッドコピー魔物が実体化する!
「アアア、いつ弾切れすんだ!」
「出撃ぃー、出撃いぃ!」
「GIIIII」「drftgy」「――・・――・――!!!」
聞くに堪えない吠え声をあげる寄せ集めの軍団を、サンカントはひたすら殴り、踏み、あるいは勇者コードから生成したワイヤーで絡め捕る。
彼は焦っていた。リュミエラに楽勝、などと言っておいてこの体たらく。
四足の何か! のたくる何か! 蟹のような何か! BLAMBLAM! 鬼のような何か! 鳥のような何か! BLAM!
それでも、流石に身体能力ではサンカントに分があるらしい。
勇者コード感知を併用した立ち回りは、地下工場跡を縦横無尽に移動する敵を少しずつ追いつめていた。
「だあっしゃ!」
CRASSSSH! 鏡のように煌めく浅黒い拳が、浮遊する巨大魚デッドコピーをぶち抜き、遂にカトルヴァンセッティエム本体を捉えた。
低く見積もって戦車砲並みの衝撃が、スプラウトのような細い身体にめり込む!
しかし。
「うわわわ、わぁ」
異様に軽い手応えと、幼女然とした気の抜けた悲鳴。
ピンク色の髪が風に靡いた。
ジャラリ、ローブやその下に編み込まれたクリスタルが鳴った。
女長魂族の細い身体がくるくると宙を舞う。羽根毛のように。
三つ編みとローブと手足をはためかせ、カトルヴァンセッティエムが空中で体勢を立て直す。
BLAM! BLAM!
驚異的な精密さでハンドガンが火を噴き、サンカントの次の拳を弾き逸らす。
「あ痛てぇ!?」
不意の反撃がクリーンヒットした手の調子を確かめるサンカントを尻目に、無傷のカトルヴァンセッティエムが停止ベルトコンベアの上に着地した。
金色の虹彩と、へらへらとした口元が見下ろしている。
「カトルヴァンセッティエムは、めんどくさいの嫌い嫌い、竈の商人族も嫌い嫌い、だーかーらー」
ハンドガンを投げ捨て、懐からいくつかの大粒クリスタルを取り出すカトルヴァンセッティエム。
いつの間にか、彼女の操るデッドコピーの連続出現が止まっていた。
ただし、勇者コードを停止したわけではない。
サンカントが知る由もないが、“水晶写し”の対象の一部をリュミエラとセシュレースの居る隣の広間に振り分けただけだ。
「畜生、こっちは時間ねえんだ、さっさと食わせろカトル……ええと、カトルヴァン……」
「カトルヴァンセッティエム! カトルヴァンセッティエムだよ、それでね、それでね、水晶融合!」
パリン、白魚のような指に突かれたクリスタルがまとめて砕け散る。
砕片が不気味なピンクの光を放ち、怪人を覆う!
“それ”はベルトコンベアからふわりと飛び降りた。
もちろん、サンカントも指を銜えて見ているわけではない。
鏡状の攻性防御膜を一点に集中して構え、鋭い貫き手を放つ。
ヴオォオォン! 激しいエネルギーの奔流。
一瞬の後、異様に甲高い金属音が地下工場跡に反響した。
「うお!?」
研ぎ澄まされた槍さながらの貫き手が、メタリックピンクの輝きを放つ小さな掌に挟み込まれている。
金属音の原因は、サンカントの“饑”防御膜と謎の鉱物質エネルギー体に包まれたカトルヴァンセッティエムの接触だ!
サンカントは顔をしかめ、自由な方の腕で殴りかかろうと。
「うりゃぁ、ったー」
輝く拳が胴を抉るより早く、女長魂族怪人は空中で体を捻った。気の抜けたシャウト。
……信じ難い!
仮想質量の操作を行わずとも、一トン近くある高密度の改造肉体を持つサンカントが、錐揉み回転して宙を舞う!
攻撃の勢いを利用し、最小限のエネルギーで雑草を引き抜くように投げ飛ばしたのだ!
何たる技術、何たる判断力!
「オオオ!」
だがサンカントもさるもの、このまま叩き付けられはしない。
指先からワイヤー魔力触手を伸ばして床に食い込ませ、一瞬で勢いを殺し直して復帰。
着地途中のカトルヴァンセッティエムに逆さ回し蹴り!
だが、まだだ。
おもむろに投擲されたのは、不吉な紫に輝く新たなクリスタル。
「部品爆破。てぇぃ!」
KABOOOM!
水晶写しの応用で精製された簡易魂爆(実際のところ、破壊兵器“魂爆”は先代勇者の固有形質がヒントになって生まれたものであり、正確には簡易ではなく元祖と言うべきなのだが)が炸裂する。ショッキングピンクの光の柱!
再び崩されたサンカントは仕方なく間合いを取り直した。
光の中から飛び出すカトルヴァンセッティエム。
ほぼ全身が透き通ったピンクの結晶体に覆われ、両の手首からはこれまたメタリックピンクの奇怪なエネルギー刃!
「めんどくせぇ……」
「これで平気とかさあ、なんて硬さよぉー」
再開される近接殴り合い。
サンカントの超重ハイキックを紙一重でかわして反撃を試みるカトルヴァンセッティエム。
恐ろしい切れ味を誇るメタリックピンク色のチョップを、サンカントはワイヤー触手で受け流す!
返しのチョップでワイヤーを切り裂きながら、懐から紫のクリスタルを。
SMAASH!
「わあ!?」
衝撃波すら伴う強烈なサンカントの頭突きが部品爆破発動前にクリスタルを弾き返し、そのまま有効打を入れた。
胸部のピンク装甲が砕け小爆発、折れ曲がるほどのけぞる細身の体!
だが、カトルヴァンセッティエムは倒れこむ勢いを活用し、即座にバック宙返り蹴りを放つ。
極めてウェイトの軽い彼女は、リコイルなリ、クリスタル爆発なり、あるいは敵の攻撃なり、外部エネルギーの活用に長けているのだ。
踵から展開されたメタリックピンクの刃がサンカントを切り裂く!
「クソァ、けど、とってやっ、ア゛?」
流血しながら蹴り足を掴み取ったサンカントが、己の持ち味たる怪力を活かし、軽すぎるカトルヴァンセッティエムを床に叩き付けようと。
ずるり。
激突の寸前、脱皮するように脚の装甲を脱ぎ捨てたカトルヴァンセッティエムが逆立ち着地からドロップキック!
足裏には新たなメタリックピンクの刃が生えている。
このままでは串刺しだ!
「ひぃやぁぁぁぁ!?」
「GRRRR!」
否、ダメージを受けたのはカトルヴァンセッティエム。
注意深すぎる視線が外れる瞬間を待っていたサンカントが、素晴らしい反射神経を発揮して体をずらし、真横から脛に噛み付いたのだ!
強靭な顎とギザギザの牙は蹴りの勢いも手伝ってピンクの結晶装甲を貫通し、女長魂族怪人の肉と骨を噛み砕いた!
いくら技術に長けていようと、このまま勇者コードごと捕食してしまえば終わりだ。
しかし、サンカントは二口目の噛み付きを行わず、咳き込んでよろめいた。
「ぶぇええ、不味っ!? いや痛てぇ、なんだこりゃ!?」
およそ殆どの魔物やベルトラン怪人を骨ごと喰らい、重金属や魔力物質すらも消化できる彼が捕食対象を吐き出すなど尋常ではない。
……カトルヴァンセッティエムの肉体は幼女然とした姿に反し、不味いというレベルを遥かに超えてもはや猛毒だ!
「うあ、ったァー! いたい、痛いよぉ、見境無し暴食野郎!」
食い千切られた右脚からピンク色の粘液を滴らせ、カトルヴァンセッティエムが叫ぶ。
いつの間にやら取り出された、メタリックピンクの棍が杖代わりになっている。
だがサンカントはそれどころではない。
嚥下しかけていた肉を吐き戻しながら後退する。
「うぐ、オ、オゴぼッ、まず、不味すぎ、おげぇ、えっ!」
「ふふん、カトルヴァンセッティエムの体はねぇ、汚染クリスタルが循環してるから食べられないのぉ。
水晶写しの副作用なんだって、博士がね? あー痛い! 痛いバーカ」
苦しみ悶える敵対者を挑発するカトルヴァンセッティエムだが、重傷には違いない。
彼女は回復力は高くないのだ。
そして、サンカントも毒を喰らっているとはいえ決して戦闘能力を失ってはいない。現状、痛み分け。
早く脚の代用となるクリスタルを勇者コードで加工しなければならない。
と、その時、カトルヴァンセッティエムは言い知れぬ寒気を感じてバックステップを踏んだ。
薄緑の熱光線が彼女の肩を掠め、ベルトコンベアを焼いた。
「馬鹿な、ばかばかばか、早すぎるセシュレースのばか! 弱虫!」
女長魂族怪人は脚の応急手当もそこそこに、慌ててピンク装甲を鏡面仕上げに変更した。
「何やってんのよ、あんたら……サンカントも、名前の長い奴も」
サンカントにとって福音、カトルヴァンセッティエムにとっては凶兆。
水晶写しデッドコピーは、おそらく出現ポイントごと焼き尽くされたのだろう。
古代ドラゴンのオーラと、星の光熱を全身に漲らせたリュミエラが、工場区画のシャッターを乗り越えて現れた。
怪人図鑑そのよんじゅういち
〔『セシュレース』〕
リュミエラの卵子を万能ビオス処置を行ったグリーン・ドラゴンの細胞と掛け合わせることで生体としての魂魄を発生させ、超重元素レンファニウムを含む餌で培養したバイオ戦士。
星の子の力で変質したリュミエラの細胞を起源とする光熱に対する免疫と、グリーン・ドラゴンから遺伝した自己再生能力を持つ。
また、戦闘時は体温が上昇し、四肢に赤い鱗が生成されて爪と牙が伸びる。
生産数一体で、見た目は小さいリュミエラ。
・おおきさ
5フィート1インチ、109ポンド。
・装備
耐火耐光服
スパイクサンダル
・特殊魔法と能力
「F・F・S」
「回復鱗」
「ヴェノム・ブレス」
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同日深夜:怪人図鑑追加




