幕間07 『悪魔の計画』
地下岩盤をくり抜いて作られ、壁面から床に至るまで無数の魔法陣が描かれた神秘的なドーム状空間の中心部に、偉丈夫が佇む。
身長十フィートに達する長身巨体でありながら、きめ細かな象牙の肌と艶やかな濡羽色の髪を持つ堂々たる超魂族。
我々はシュバルド王を示す紋章を象った護法印が刻まれた優美で威厳あるローブを確認するまでもなく、彼が何者か知っている。
瞑想しているだけで、常人なら卒倒しかねない存在感を発散する男など、この世に早々居るものか。
当然、“大魔王”アンドレアス・エルネストその人だ!
彼はしばらくの間、緻密な魔法陣の支援を受けて集中を続けていたが、やがて瞼を開き、力あるオーラで覆われた腕を虚空へと突き出した。
別の次元との境界を示す帳に僅かな綻びが生まれ、澄んだサファイアを思わせるセレスティアルな輝きが漏れ出す。
アンドレアスはそれを両掌で押さえ、苛烈なエーテル圧力に耐えながら帳に印を刻む。
じきに護法印と魔法陣が明滅しはじめた。限界点が近い。
「ぬうう!」
カオーン! 空間の綻びは、奇怪な音を立てて閉じた。
帳が落ちる際に発生する不可視の力で弾き出されたアンドレアスは空中で体勢を立て直し、ややよろめきながらも静かに着地。
口元から鮮血が零れ、時空間の歪みを力技で抑えていた手指も数本曲がっている。
とはいえ、この程度の反動は想定の範囲内であるし、傷自体も超魂族の生命力と彼の魔法技術をもってすれば些細なもの。
彼は口元を拭い、骨を繋げ、呼吸を整えた。
「ゴフッ、ハァ、ハァー……うむ」
「アンドレアス様」
作業を終えて乱れた衣を整え始めたアンドレアスのもとに、青年が駆け寄ってきた。
六フィートほどのすらりと引き締まった肉体に、シュバルド式ミリタリースーツを一分の隙もなく着込んでいる。
巨躯を誇る王と並ぶとずいぶんと小柄で、虎目石さながらのシャトヤンシー効果を見せる不思議な虹彩からも若い印象を受けるが、それは決して戦闘能力や年齢の大小を意味しない。
“大魔王”の側近の一人である彼の名はガストルト。
シュバルド山軍特定兵器にして、強大な大悪魔である。
もっとも、普段は不愛想な若者にしか見えないのだが。
「第十一境界標の打ち込みは終了した。時を待ち、魔力吸収放射ポイントに合わせるだけでよい。
して、余が篭っていた三十三日間の状況はどうなっておるか」
「悪い報告は国境線の一部が押し上げられていることと、それに関連して各所での支持率低下、ルキエル火山南航空発着場の喪失。
良い報告はそれ以外。“それ以外”の詳細と演説向けの要件は、影武者から直接回収でお願いします」
「悪い方の対応は」
「ナタナエル准将の飛行隊がザーゼント方面で活動中。
実際に奪回できるかはともかく、不安感の払拭には十分かと。
なお、元帥殿とグレゴアの意向により次回以降デグレニャが参加する予定です。
発着場は既に建造目的分をほぼ果たしていること、警備が厳しくなったことに加え、周辺に地殻変動が見られるため一旦放棄。
開門儀式を考慮するならば、再来年あたりまでに付近のどこかを使えるようにしておきたいですが」
「リベルテルはどうなった」
「絶望山脈にてオーバーホールと調整に入りました。
改型エアフォルクはベルトラン管轄ではなく、シュバルド空軍所属で年末にロールアウト予定」
「うむ、よかろう。明日中には実務に復帰する、お前もだガストルト」
「はい」
さらりと霊糸を操って封印と隠蔽処理を施したアンドレアスは側近を伴い、細い通路の奥へと消えていった。
主の消えた神秘的岩盤ドームの各魔法陣は、刻まれた法則に従い天象儀さながらに瞬いている。
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「……こちら“サウンド1”」
バラバラバラバラバラ、無数のローターとエンジン、そして射撃音がハーモニーするザーゼント前線基地上空。
長魂族の感覚器と、足元の音波飛翔獣の反響定位を組み合わせて認識できる範囲の敵を追い払ったルクスコリ共和国陸軍少将ラザル・シャルトルは、軍用ゴーグルのインカムマイクを操作した。
ホバリングする乗騎ともども戦闘態勢は維持されており、代名詞の特殊クロスボウも構えたままだ。
「ええ、ええ、聞こえておりますよぉー」
通信担当のロズモンドから随分と気の抜ける、到底軍人とは思えない返答が帰ってくる。
ラザルは叱責どころか何の反応も示さず、話を続けた。
発生する時間が無駄だ。
「撃退完了。スコアは計二機、うち俺が一機。
上の被害は死者一名、負傷二名と一匹、飛行機械一機。
毎度毎度、面倒な事」
ラザルは“面倒”をことさら強調した。
実際、現在の彼は極めて憂鬱で、美しい星空も全く慰めにはならない。
なにしろ“魔国”シュバルド空軍の夜間爆撃部隊を、彼のチームが撃退するのは既に四度目なのだ。
ろくでもない任務にもほどがある……ただし、正面切っての戦いになったことはまだない。
敵の錬度はかなりのものだが、やる気があるのかないのか迎撃に出るとすぐに撤収してゆくため、互いの被害が驚くほど少ないのだ。
最初の襲撃から今までの被害、特に死者は双方合わせても二十かそこらであろう。
むろん爆撃による建造物破壊(主要建造物の真上に来る前に追い返しているため、物的損害も大したことはない)に巻き込まれた者も含めた数値だ。
首都ルクス陸軍本部の推測によると、攻撃そのものがシュバルド国内向けのデモンストレーションに過ぎず、ザーゼントを取り返す算段が立ってないのではないかということだった。
「はぁーい、了解しました。下は簡易自動化高射砲塔が一基やられただけですね。
なお、こちらの遠見もレーダーも敵影は確認できませんが、ステルスコート型の存在から、居ないと言い切るのは難しいです。
“サウンド1”はそのままお戻り?」
「ああ」
「了解。私としましては、貴方自身が出撃すること自体あんまり歓迎できないですけどねー」
「理想論だがな」
「わかってますよぉ」
翌日の夕方、ラザルは専用に用意された執務室兼寝室に吊られたハンモックの上で目を覚ました。
魔法建材打ちっぱなしの陰鬱な部屋、というよりも基地建物の隣に建てられた小屋で、一つしかない窓は透明なシートが張られているだけで開ける事ができない。
彼は一応、ザーゼント前線基地司令官なのだが、出撃の際の利便性を優先した結果だ。
長魂族らしい優美な動きでハンモックから降り、鍛え上げられた六フィート半の肉体を濡れ手拭いで清めた。
浄化の僧術も使えないわけではないが、気分の問題である。
ついで簡易の洗面台の前に立ち、熱い湯で短く刈り揃えられた黒髪ごと顔を洗い、得意中の得意である風元素の操作で一気に乾かす。
最後に口を濯いで髭と耳を整え、ルクスコリ陸軍制服に着替えると将官らしい姿の男が鏡に映っていた。
「うんむ、ナイスミドル」
馬鹿なことを呟きつつ、机に向かい軽食を齧りながら内線通信機を操作するラザル。
種族分布的に暗視能力を持つものが多いシュバルドの軍は古来より夜戦に優れるため、少なくとも前線では夜こそ指揮官が重要なのだ。
ましてや、彼は長魂族であり、ザーゼント前線基地は旧国境を越えてシュバルド内に食い込んでいる。
昼夜逆転生活を送るはめになったのは当然のことといえよう。
「起きたぞダグリーズ、さっさと連絡事項を伝えに来い、んで休め。
……ダグリーズ? おい他に誰か居らんのか、聞こえとるだろコラ、ぶち殴るぞ」
返事が無い。
ラザルは声を荒立てた。
基地内でラザルからの内線は通信機を起動せずとも(強制的に)聞ける、そういう設定になっている。
副官が居るはずの第二事務室には最低でも三人、確か今の時間なら六人が常駐しているはずなのだが。
と、ドアがノックされた。
「おいコラ! おい! ん? 入っていいぞ」
「随分と声が響いておりましたよ少将ぉ、じゃねーや司令官ん」
現れたのはルクスコリ軍服に身を包んだ痩身のヒト女。
ライトブラウンの癖毛に眠たげな瞳、お世辞にも美人とは言えないが愛嬌はそれなりにあるという微妙な造作。
気の抜けるような声色と乱れた言葉遣いが鬱陶しいが、極めて有能な通信士の元水晶集めロズモンドだ。
「なんだロズモンド、相変わらず壊れたハーモニカみてえな声しやがって。
勤務時間外だろ、うろつかず大人しく寝とけ」
「すいませんねえ、本館の方で妙な音と振動がしたもんで報告にぃー」
「んあ゛? なんだと、いつの話だ」
「さっきですよぉ、非番の数人に声かけて建物周辺を調べてもらっとりますが、一応こっちもねえ」
「…………ひょっとするとひょっとするか」
「あい?」
ラザルは通信機を叩き、別の事務室へと繋いだ。
……繋がらぬ。
管制室へと繋いだ。
……繋がらぬ。
ルクスコリ本部へと……繋がった!
「こちらザーゼント前線基地ラザル・シャルトル」
「こちら陸軍本部通信室。どこに繋ぎましょう」
「本部の……いや、繋ぎかえんでいい、時間が無いからあんたから総帥部員の誰か伝えてくれ」
「は? 了解であります」
「一度しか言わんぞ、“ザーゼント前線基地に異変が起こっている、解決あるいは悪化の際は再度連絡を入れる”以上だ」
「はい」
ツー、ツー、ツー。
通信を切ったラザルはクロスボウを背負うと、いくつかの特殊ツールが入った鞄を掴んだ。
鍵のかかったロッカーを開け、ロズモンドにも小銃とツール鞄を持たせる。
ロズモンドの戦闘能力は決して高くないが、状況判断に優れ、射撃の腕や身のこなしも一般兵よりは上だ。
連れて行ってマイナスになることはない。
「行くぞ」
「へぇい」
装備の確認を済ませたラザルとロズモンドは念のため各種書類を机から取り出し、壁の隙間に埋めてから部屋を出た。
濁った紅色の沈む夕陽を背に受け、本館に入る。
集合住宅を流用し、不要な壁をぶち抜いて作られた地上三階地下一階のそこは、実に殺風景だ。
ちょうどシフト交代の時間であり、ラザルは廊下で幾人もの部下とすれ違った。
中には、名前と顔が一致しないものも居る。
なお、本館とはいっても管制室に通信室、二つの事務室、会議室以外は特に機能しておらず、ザーゼント前線基地滞在者のうち本館を使うものはあまり多くない。
高射砲塔の操作室や倉庫、宿舎などは別の場所にあり、そちらはちゃんと連絡が通じた。
司令官たるラザルの指示に従い、周辺の警戒が強化されてゆく。
「簡易結界と通信機器は正常に機能しているが」
「わかってますよ少将、入り口の警備もちゃんとしてたでしょお、ですから念のためでぇ」
「それは、そうなんだが、いや、やはり気のせいではない、お前は正しい」
階段を登るラザルは、薄暗い踊り場で鼻をひくひくとさせた。
僅かな血の臭い。
二階へ昇って角を曲がる。誰も居ない。当然だろう。
この先は突き当りに第二事務室と非常階段があるのみで、交代時間もしばらく先だ。
血の臭いが強まる。
一方のロズモンドはしゃきんと姿勢を正し、ツール鞄から取り出した特殊なゴーグルで床や壁を舐めるように見ている。
安全確認作業。
「行けますぜ、少将」
「開けるぞ」
風元素で構成される触手じみた透ける腕が、ラザルの肩から伸びる。
触手はドアノブをがっちりと掴んだ。鍵はかかっていない。ドアが開く。
生温い風が吹き込んできた。
「ウゲェー……」
「簡易結界では侵入者対策も限界があるな」
「泣いてすっきりさせた方がいいんじゃないっすか、顔やべえっすよ少将」
「後でな」
端的に言って、第二事務室は血の海だった。
獣が力任せに引き裂いたような死体がいくつも落ちている。
誰ひとり生き残ってはいない。
副官ダグラーズの千切れた首が、文鎮代わりに書類を押さえながらラザルとロズモンドを見つめている。
「大佐の机が荒らされてねえし、情報が目的とは違うですかね?
あ、あぶねえっすよぉ少将! まだサーチ終わってないす」
「罠を仕掛ける余裕があるなら、先に机を荒らしとろうよ。
ぐむ、たまらんな、しかし」
ラザルは風の触手でダグラーズの目を閉じさせた。いたたまれなかったのだ。
カツ、カツ、カツン、そのまま室内を一周する。
死体は六つで、今の時間に詰めているべき数と一致していた。
一部はまだ血が滴っている。気分が悪い。
ラザルは懐からねじ蓋の小瓶を出し、“飴”を数個口に入れた。
こりこり噛み砕くと、薬効成分が速やかに吸収されて平静が戻る。
気分が良い。
二人は管制室へ向かった。
「ウゲェー……」
「簡易結界では侵入者対策も限界があるな」
「落ち着いてください、少将」
「落ち着けるか、バカが。嫌な予感がするぜ」
第二事務室と同じ、同じだ。
二人は非常階段を駆け下り、一階の第一事務室へと向かった。
「いきなりどうされました司令官殿」
「書類を全部持って窓から倉庫方面に向かえ!」
「は?」
「今すぐだ!」
「ハ、ハイ!」
全員の退避が終わるまで、ラザルはドアの横に立っていた。
当然、ロズモンドも。
薬で保護強化されたラザルの思考は、その間も必死で回転を続ける。
「なあ、ロズモンド」
「はいー」
「賊は、どこから、いつ侵入してきたと思う」
「ウゥーン、前から居た? ないか、あえて今動く理由がわかんねえですし。
少なくともここ数日中で、屋上? 地下?」
「だな、元々居たならとうに終わっているはずだ、もっとやりやすい日はいくらでもあった。
ふむ地下……地下? ここの地下は特に使っとらんよな」
「へぇ、予備の基地局と対地用の魂爆を保管してあるぐらいですかねぇ。
でも魂爆はあのまま持ち出しても何にも使えませんしぃ、基地局の予備なんぞどこにでも」
「そうか、うぬうう……しかし、そもそも、本館を選んで襲えるというのが不可解で……二階三階がやられて一回は無事というのも」
ガコン! 足元から、音。
「なにか」
「シッ」
ガコン! ガコン!
「こりゃぁ」
「上は陽動だ!」
ガコン!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガコ、ガコン、ガコン、不審音は続く。
ラザルとロズモンドに、窓の外を通りがかった警備兵のカジミルとフローランを加えた四人は、地下に降りた。
廊下は埃を被っており、初期に荷物を運び込んだ跡がまだ残っている。
灯りを点して武器を構え、そろそろと進む。
「開けるぞ」
風の触手を伸ばし、増設された金属扉を開ける。
次にあるもう一枚の扉に赤字で“注意”。
それも、開け放った。
中に照明はほぼ無く(保管物資のためだ)、小型のコンテナが無数に積まれている。
ガコン、ガコン!
なにやら台座の上に、ヒトの頭ほどの丸い物体が露出状態で置かれた。魂爆の弾頭。
不審な響きは、特殊爆弾を解体する音だったのだ!
……物陰に、何かが。
「下がれ!」
叫んだラザルは、クロスボウに麻痺蒸気弾頭ボルトを詰めて撃った。
真っ直ぐに飛んだボルトは奥の壁に着弾し、シュルシュル有毒煙を噴く。
常人ならば種族に関係なく魔力作用で全身が麻痺する、強力な制圧弾。
ガコン! ガコン!
だが、音に変化はなく、何の声もしない。
「少将まずいじゃねえすか」
「下らん洒落をいう暇があったら退避してくれロズモンド……お前ら二人もだ、やはり俺が行く」
「「ハイ」」
機械のような音が止まった。
煙の中に、濁ったエメラルドじみた小さな輝きが二つ。
BLAMBLAMBLAMBLAM!
直後、連続した四つの銃声。
ラザルはクロスボウから非実体ボルトを放ち、銃弾を二つ撃ち落す。
ロズモンドは徘徊蜘蛛のように身を翻して天井に張り付き、弾を回避した。
残った一発が、カジミルの胸部とフローランの頭部をまとめて撃ち抜いた。
「ふぁ、なかなかできる」
思春期前の少女じみた涼やかで無邪気な声色。
「ジャネェカア!」
が、突然機械音声さながらの鋭く太い声に変化した。
BAZZZZZ!
煙の中から突き出された黒い骨のような二挺の機関銃が火を噴く!
ラザルとロズモンドは心の中で犠牲者に祈りを捧げ、跳弾や壁の破片をかわしながら後退。
魂爆は専用の起爆装置がなければ機能せず、誘爆の危険は極めて低いが、それでもすぐそばに置いたまま火器や魔法を使いたくはない。
しかし敵はあまり気にしていないようだ。
ラザルは仕方なく通常ボルトを装填し、気が向かないながら煙に向かって撃つ。
通常、とはいえ並みの銃弾よりは遥かに威力がある彼の固有形質を内包したものだが、手ごたえは感じられぬ。
「ええい畜生、ロズモンド逃げるぞ! 悔しいが後手後手だ、包囲して建物と魂爆ごと吹き飛ばす」
「あいさぁぁぁぁ!」
KABOOOM!
一階に戻る直前、爆発で件の部屋が弾けとんだ!
建物が揺れ、崩れつつある。
二人は転がるように地上へ飛び出した。
崩れる。
「キィア、あはは、ハハッハッハハ、うふ、ハハァーッ!」
瓦礫と土煙の中で、太い声と少女の鈴の音が混ざり合った異様な嘲笑が響く!
ラザルは主の危機に飛んできた音波飛翔獣に、ロズモンドと共に乗り込んだ。
三台のクリスタル燃料戦車が、巨獣の鼻さながらの頼もしい砲口とサーチライトを土煙に向ける。
空には味方の戦闘飛行機械と翼竜が舞う。
だが、笑い声は続いている。
多機能性の軍用ゴーグルで強化されたラザルの視覚が、闇の中に浮遊する怪異の影を見た。
「なんじゃ、ありゃ」
ライトに照らされたそれは端的にいって、戯画じみた口のついた黒い角鞄だ。
大きさもたいしたことはなく、一般に売られているサイズ。
効果不明の立体積層魔方陣に包まれている。
「私にわかる理由ねえっしょー、ねー少将」
「うぬ、撃てええええい!」
BLAM! BLAM! BANG! BOOM! DOM! ZAP!
ボルト、榴弾、機銃、各種元素弾、反転移結界弾、吐息、各種魔法、無数の遠距離攻撃が集中する。
KABOOOOOOM!
一際巨大な爆発。
「やったかなぁ?」
「ロズモンド、しっ」
一陣の風が吹き、煙と爆炎を吹き散らした。
謎の鞄は相変わらずそこに浮いている!
「GYUOOOO!」
数百人のルクスコリ兵といくつもの砲口が見守る中、鞄の口が大きく開いて影が現れる。
仮に全身が見えても五フィートには到底届かないであろう、シュバルド式ミリタリースーツを着込んだ華奢な少女の上半身。
濁ったエメラルドの虹彩とふわりとカールしたブロンドヘアがライトを反射し、妙に目立つ。
なんらかの魅了にかかっているのか、単に呆気にとられているのか、皆呆然と眺めていた。
ずるずるずるずるずるずる、鞄の口から更に何かが、いや、少女の下半身が伸び出る。
輝く鱗に包まれた白く太く長い物体、蛇の胴……否、蛇などではない!
きゅぽん、と抜けた先端は太く、短い角と鋭い印象の瞳が特徴的な第二の顔。
裂けるように開き、夜空に吼えた。
小型だが、ドラゴンの首と頭だ!
足場の黒鞄を拾って背負い、無邪気な顔で辺りを見回した少女怪物は、上下の口と鞄の口を同時に開いた。重なる三つの声質。
「「「私は主の剣、ブラックバッグ。シュバルドに、主に降伏せよ。よし勧告終了! 死ね!」」」
言うが早いか、ブラッグバッグを包囲していた戦闘飛行機械とクリスタル戦車は砲撃を行った。
ルクスコリ兵と、周囲の建物に。
最終章開始。




