8話「噂の調査隊2」
えーこちらパメラ。現在、ユアンが主婦のお姉様方に可愛がられているのを眺めています。
ユアンはとても嬉しそうです。
あ、飴ちゃん貰ってる。いいな。
次に私たちが訪れたのは、井戸端会議が行われているオリビアおばちゃんの家だ。
庭に机とベンチが置かれていて、ゆったりとくつろげる空間になっている。
やっぱりウワサ話といえば、主婦のお姉様方しかいないだろう。それ意外にいったい誰を思い出すというのだろうか。
それに改めて思うけど、前世の同年代くらいの同性っていいものだ。
思い出してからは特に治安の悪さに『チビたちを守らなきゃ』という気持ちが強くて、つい真面目になってしまう。
その点、お姉様方なら安心して任せられる。
なんせ、今ここにいるお姉様方は、若い時から育児をして10年の、育児のプロフェッショナルだ。
おかげで私もやっとふざけれる。
今も、ユアンが『どうしたらいいんだ?』っていう顔を私に向けているけど、それをオリビアおばちゃんとお菓子を食べながら観察しているくらい浮かれてる。
イケメンとお茶をするお姉様方。なかなかいい光景だ。
一応頑張れという意味を込めてグッとサインを出しておく。あ、ユアンが苦笑いしてる。
「パメラちゃん、ジュースも飲む?」
「いいの?ありがとうおばちゃん。お礼にいつものあれやってあげるよ」
おばちゃんの後ろに回り込んで肩を揉む。
以前いつも何かしらくれるおばちゃんに申し訳なく感じて、お礼に肩を揉んだことがあった。
これが大好評で、瞬く間に他のお姉様方に受けた。
それからはみんなに施すのは無理なので、お礼としてマッサージをすることにしたのだ。
「おばちゃん、凝っちゃってるねー。」
「ありがとうパメラちゃん。実は痛くて仕方がなかったの。」
「じゃあ、今日はサービスしとくね」
好評なこのマッサージ、実は前世の叔母仕込みだったりする。
叔母の時も肩こりがひどい人だったから善意でやったんだけど……一回やったらことある事にお願いされて、いつの間にか仕込まれた。
「違う!!」と何回も文句を言われながらも必死に習得したのは苦い思い出だ。
(でも、あの時は「ふざけんな!」って思ってたけど、今は感謝してるよ叔母さん)
「ユアンくんうちにお婿さんに来るつもりなあい?」
「あ!ずるい!!ユアンくん!ライラのとこに行くよりアタシの娘のお婿に来ない?」
あ、双子のママさんに熱烈な歓迎を受けてる。予想通りユアンはお姉さま方にもウケがいいみたいだ。
「すみません、アイラさん、ライラさん。いいお返事はできないです。俺にその気持ちがないのに「はい」なんて軽々しい言葉は言えません」
(ここで興味無いって言わないとこが誠実そのものだよね)
「まぁ……そうよね。ごめんなさいユアンくん」
「気にいると思うけど。でもそうね、ごめんねユアンくん」
「でも、お二人のお気持ちは嬉しいです。もし将来、その時が来たら歓迎してもらえると嬉しいです」
あ、心、鷲掴みにした。初恋キラーの次はマダムキラーか。
RPGゲームなら人たらしの称号手に入れてそう。
「「「きゃ〜〜〜〜〜〜!!!!」」」
双子ママさんが黄色い声をあげながら、二人で手を取り合っている
対照的にユアンは予想してなかったんだろう。断ったのになんで?と顔に書いてある。
誠実な人って男女問わず好かれるからまぁ当然の反応だと思う。
娘のことなら尚更、こういう男の子とくっついてほしいってのは親心だよね
(私も娘がいたらユアンみたいな子がいいなぁ……ま、いないけどね)
「今の聞いた?ライラ!?」
「ええ、もちろんよアイラ!ユアンくんは誠実なのね〜」
「ええ、こういうお婿さんがほしいわ!ユアンくんぜひ前向きに検討してちょうだい!」
グイグイくる双子ママにユアンは推され気味だ。
日程まで調節しようとしているママさんたちに苦笑いをしている。
「パメラちゃん、助けなくてもいいの?」
「んーそうだね。十分楽しんだからそろそろ助け舟出そうかな」
ユアンを助け出し、改めて本来の目的の噂について聞いてみると、市場と同じで大した情報は聞き出せなかった。
ハルシュさんの旦那さんが騎士だから、何か聞き出せるかと思ったけど……
(そう簡単にはいかないか。そうなると……やっぱあそこに行くしかないかな)
お姉様方に挨拶もそこそこにお暇させてもらうことにする。
今日中に娘と合わせたかったのか引き止められたが、適当に断ってユアンの手を引いて逃げるようにこの場から離れる。
このまま行ったら、断れないユアンがいつか縦に降ってしまいそうだ。
その気があるなら置いていくけど、そういうわけでもなさそうだしね。
「パムありがとう、助かったよ。どう断ろうか悩んでいたから…」
ユアンは少し疲れた顔をして小さく息を吐いた。
年上のお姉さんの強引さは、まだユアンには早かったようだ。
でもここはグッと我慢してほしいところではある。私だって楽しいから助けなかったわけじゃない。
いや、あの時は半分……いや、八割はそうだけど。
「ごめん、でもユアンは人好き合い得意だけど、チビたちは違うでしょ?」
「……そうだね。警戒心は人一倍強いと思うよ」
「みんな話すの好きなのに勿体ないなーって思ってさ。」
なんせ孤児院には親に捨てられた子など、大人が原因で酷い目にあった子が多い。
生きる術なのか、普通に話していても、内心では大人を信用できてない子が多いのだ。
まぁ気持ちはすごくわかるし、警戒心だって大事だっていうのはよくわかる。
でも、よくしてくれる人にもこの行動を取っている姿を見ると悲しくなる。
……小さい頃からそんな気持ちもつべきなのだろうか。
私は、すくすく自由に過ごして愛されて元気に成長するのが子供の役割だと思っている。
過去のことは変えられない。でも未来は変えられるかもしれない。
だから何とか出来ないかと考えた結果、歳も近くて慕われているユアンに託そうと思ったんだけど――
「みんなに慕われてて歳の近いユアンが率先したらいいお手本になるのかなー。って思って連れてきたんだけど……勝手にごめん。」
これは許可をとってやるべきだった。
ユアンがその気がないなら負担になるだけだ。やるべきじゃない。
こうなるべきだ。なんて私のエゴでしかないし。
これから先も、つい気になって行動してしまうのは、気をつけないといけない。
幸せにするはずが不幸にすることになる。
「パム、俺もあの子たちが信頼出来る人を増やすのには賛成だよ。俺のことは気にしないでくれ。」
「え?」
「俺が戸惑っているとしたら接したことのない人たちだからだよ。どう返せばいいかわからなかったんだ。だから――
俺にもその作戦乗らせてくれないか?」
「俺も気になってた」そう言ってユアンは微笑んだ。
おお、恐ろしい!!!この子恐ろしいよ!
保護者みたいな気持ちでいたのに、逆に安心させられてる!!いいんだこれでって安心しちゃってるよ私!!
「それに……あの人たちパムと仲がいいんだろう?
俺たちと接するパムしか知らなかったから少し嬉しかったよ。パムって外でも優しいんだね」
「あ……」
手を伸ばしてユアンの頭を撫でる。
今効果音がついているとしたら「わしゃわしゃわしゃ!!!」
っていう音がついていると思う。
ユアンの頭がボサボサになろうが止まれない。自分の両手が制御してくれない。
(いい子すぎる……!!)
前世の時の名残だろうか…少し目頭が熱くなる。
この後も、戸惑うユアンに私は満足するまで褒めたたえて撫で続けた。
「少し……クラクラする」
「ごめん、衝動抑えれなかった。ちょっと休憩したらおじいちゃんの家に行こうか」
「おじいちゃん?」




