7話「噂の調査隊」
「あれ?パムも出掛けるの?」
街に出かけようと孤児院の門をくぐろうとした時、ユアンとバッタリ会った。
「うん、色々行きたいところあってさ。ユアンも来る?」
「俺は行けたら嬉しいけど……いいの?」
もちろん構わない。やましいことするわけでもないし。
でも……
「私は大丈夫だけど、剣術の練習に行くんじゃないの?」
ユアンの腰に帯刀している剣を指す。
ユアンはいつも、チビたちが勉強をしている時間に剣術を習いに行っている。
この街では騎士団や冒険者が、平民向けに剣術、魔法を教えている。
私は行ったことないけど、ちゃんと本格的な訓練をしているらしい。
「今日、師匠は仕事があるから、騎士団の方に行こうと思ってたんだ。だから大丈夫だよ。」
師匠……ああ、冒険者ギルドのギルドマスターか。
そういえば、騎士団以外にも習っている人がいる。と言っていた気がする。
(大丈夫ならいいか)
本人がいいと言っているなら連れ行こう。
それに……ユアンを連れて行ったら多分面白いことが起きる!!!
ユアンって、勇者系のハーレム主人公みたいだし。しかも、顔も甘いマスクで、人たらしな王道タイプのやつ。
将来とんでもないことになりそうな予感がして、今からワクワクが止まらない。
これはきっと仲良くなるチャンスが来たに違いない。
出来ることなら冒険者になっても時々会うボジションにまで上り詰めたい。
「それじゃあ一緒に行こうか。デートしに」
ユアンにウインクしてみせる。
けれど、ニヤニヤと口元が緩んであまり決まらなかった。
前世より美人な顔がもったいない。もっと練習しよう。
「ふふっ。うん、行こうか」
まぁ、ユアンにはウケたみたいだから良いか。
◇◇◇
「パム、どこに行くんだ?」
「んーとりあえずは市場かな」
二人で肩を並べて歩いていると、ユアンが声をかけてきた。
当てもなく歩いているように見えて疑問に思ったんだろう。
でも目的ならもちろんある――
昨日の地震のようなものについて情報を探しにきた。
あれは多分、地震じゃない。
2回大きくドンッと揺れて、最後の大きな揺れを最後にピタリと止まった。
前世の地震とは違う感覚に、なにか嫌な予感がして今日街に出てきた。
私の予想は二つだ。
魔物の仕業か、地面が陥没したかのどちらか。
初めは鐘も鳴っていないし、魔物の可能性は低いと思っていた。
でも、とてつもなく大きな魔物が新種で出てきて、この街が揺れるほどの強力な魔法を使ったとしたら?
それなら鐘が鳴らなかった理由もわかる。遠くの方で出現したなら鐘なんて鳴らない。
もちろんその二つ以外の可能性だってあると思う。
とにかく、この世界で人生満喫すると決めた以上、危険かもしれない情報は把握しておきたい。
情報は武器にも盾にもなるはずだ。
「新鮮な野菜、売ってるよー!!」
「お肉もあるよ!!採れたて新鮮なライトウルフの肉だよ!」
「濃厚コッコ鳥シチューはいかがですかー?」
市場についた途端、ザワザワと人の声で騒がしくなる。
ここは商人、冒険者、主婦など様々なタイプの人が混在している場所だ。噂話にはうってつけの場所だろう。
「ここは、いつも賑やかだね。パムは何買いに来たんだ?」
「んーいや、買わないけど……あっ」
路地裏近くの道端に、三人で固まっている冒険者がいた。
ユアンの手を引いて近づき、ギリギリ話し声が聞こえる場所で立ち止まった。
嫌がっていないし、手は逸れないように持っていよう。子供のカップルが休憩しているだけに見えて都合がいい。
それにたまに、立ち聞きがバレて情報料寄越せってお金をむしり取る人がいるから。
「話すフリしてくれない?」
ユアンの方に向き合い、内緒話をするように話しかける。
「いいけど、どうして……」
「なぁ、知ってるか?昨日の大きな揺れの真相!」
ちょうどピッタリのタイミングだったみたいだ。
ユアンもそれに気づいたのか、私の指示通りに演技をしてくれる。飲み込みが早くて助かる。
「いいや、知らねぇな。なんか知ってんのか?」
「僕は知っているよ!でAランクの冒険者が暴走したって聞いたよ!」
「はっ、ちげぇよ。アクアの街でCランク冒険者がAランク冒険者に喧嘩売ったんだって!」
「えー僕の方が合ってると思うけどなぁ……」
「でもよぉ…………
◇◇◇
(これ以上は時間の無駄だなぁ……)
しばらく何組か盗み聞きしたけど、誰も有益な情報を持っていないみたいだ。
それなら、あわよくば他の有益な話でもしないかと思ったけど……ハズレだった。
「そろそろ行こう」
ユアンを連れてその場を離れると、噴水がある開けた場所に出たので立ち止まった。
「さっきの話、全部デタラメだと思うな。パムはどう思う?」
「私もそう思う。Aランクがあそこまで強力な魔法、人に打たないでしょ。人気商売でもあるんだから。
貴族が平民に……って言うなら説得力あるけどさ」
それに冒険者が暴れた。なんて情報はすぐに耳に入ってくる。
蹴落とそうとしたライバル冒険者がすぐに噂を流すから。
「はぁ……ユアン、次行こう」
「まだ宛があるのか?」
「あるよ二つ」
まぁ次は噂話というよりも、少し試したいことがある。




