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69話「ゴブリンキングの真相?」

 動き出すゴブリンたちについていく。

 ゴブリンキングたちは歩いてる間、何回も私たちがついてきているか確認している。


 ……これを断って、帰ったらどうなるんだろう、とふと思う。


 来ないことに怒るのか、それとも行く手を阻もうとするのか。

 私としてはどうしても来て欲しいみたいだから、行く手を阻むに一票だ。

 怒ったところでこっちに討伐されるだけだし。


(……気になるけどダメだよね)


 やってみたくてウズウズする。

 まぁ、また怒らせそうだからできないんだけど。


 どうでもいいことを考えながら歩いていたら、次第に大きな空間に出た。

 ここが洞窟の一番奥みたいだ。


 辺りを見回す。当たり前だけど何もない。


 私たちがみんな来ているのを確認したあと、ゴブリンたちが左右に別れて道を作る。


(懐かしい……)


小学校の卒業式を思い出す。


とはいっても、全然ほっこりはしない。

ゴブリンたちは可愛い後輩でも、保護者でもない、ただの気持ち悪い魔物だ。


 気持ち悪さと、懐かしさを感じながら、促されるままその道を歩く。


(ん?)


 着いた先で、ポツンと地面に何かがあるのに気づく。

 さっきはゴブリンが居たから気づかなかったみたいだ。


(なにあれ?魔道具?)


 なにかティーポットのような形をした物が置かれている。

 大きさも、紅茶を入れるような縦長の小さいティーポットサイズ。


(誰かの忘れ物?)


 ここでお茶会でもしてたんだろうか。

 それならなんて通なお茶会なんだろう。


 そう不思議に思っていると隣からディランが息を飲む声が聞こえてくる。


「ディラン、なんか知ってるの?」

「ああ。あれは……使用を禁止されてる魔道具だ」


 禁止されてる魔道具って……危険すぎて国で保管されてるってやつだっけ?


 たしか……無限に魔物が湧き出る壺とか、危険なもの。

 眩しすぎてどこにも使えない電球とか、日常で迷惑になるもの。


 どっちかに該当するものが回収されるんだっけ?


「じゃあこれは危険な方?それとも迷惑な方?」

「危険側だ。魔物を操ることができる」


 じゃあ……本当に今回の騒動は魔物を操ってるが正解?

 でも、周りに持ち主もいないけど……。


「あの中に特殊な香が入ってる。

 あの魔道具でそれを拡散し、魔物を集める。

 魔道具からの香を嗅いだ魔物は、操ることができるって言われてるな」


 じゃあ香は魔物を集める目的で使い、魔道具は操るのと拡散のために使ってるってこと?


 あの魔道具のどこにそんな操る能力があるんだろう。

 どう見てもただのティーポットなのに……


「それだと香もダメなんじゃないか?それとも匂いが一生続く香なのかな?」


 それも気になる。


 ディランの口ぶりだと、多分香は禁止されてない。

 集める方もどう見ても危険なのに、なんで魔道具だけ禁止されてるのかわからない。


「香自体は問題ねえ。あれはスタンピードの際に、魔物を誘導する為にも使われてる。

 まぁ、領主にしか使用権限がないのは確かだ」


 ああ、なんか聞いたことがある。

 過去のスタンピードで魔物を集めて一網打尽にしたことがあるって。


 あの香を使ったんだ。


「それより問題なのは、あの魔道具だ。

 魔物を集めて従わせれば世界は平和になる、という目的で作られた魔道具だ」

「それがなんで禁止されるのよ?」


 平和になるかは微妙なところだけど、使い所はありそうだけど……


「貴族から、魔物は絶対悪だっていう反対意見が集まった。

 倒す方が色々金になるとでも思ったんだろ」


 ああ、なるほど……。

 安全より目先のお金を優先したのか。


 まぁ、魔物の危険がなくなって平和になると難しい問題も出てくるのは、わかる気がする。

 冒険者という職だってなくなるだろうし、色々不都合は出てきそうだ。


 だからといって、完全禁止にするべきかはわからないけど……


「それにあの魔道具が盗まれて、街を襲った事例もある。だから禁止にしたんだろ」


 たしかに悪用されたら厄介だ。

 便利だけど扱い注意な魔道具ってことね。


 でもそれだとそれで、気になることがある。


「どうしてそんな魔道具がここにあるんだ?」


 そう。それだ。


 禁止されてるなら当然、生産も禁止のはずだ。

 ということは、過去に作られた魔道具ということになる。


 そんな魔道具がなんでここに?

 誰かがこんな貴重なもの置いていったとでも?しかも香も入れたままで。そんな馬鹿な。


 それに、操った結果が私たちに魔道具を見つけさせるってなんのために?


 わざわざそんな危険な真似をする理由もない。

 絶対回収されるってわかってるし、犯人を探される羽目になって、相手にとってはデメリットしかない。


(ダメだ……謎が深まっただけだ……)


「そこまでは知らねえよ」

「誰かが忘れて行ったんじゃないか?」

「ばかいうんじゃないわよ!!こんな大事なものを使ったまま置いて行くわけないでしょ!!どんなドジよ!!」

「お前みたいなやつなんだろ」

「はあ!?」


 (あーあ、言い合い始まっちゃった)


 ディランとアンちゃんの言い合いを止めているユアンたちを見る。

 人のこと言えないけど、気が緩んでる。


(後ろにゴブリンだっているのにさ)


 ゴブリンたちは結局、何を伝えたかったんだろう。

 これだと謎がさらに深まっただけだ。


 ふと、様子が気になってゴブリンキングたちの方を振り向く。


「……っ」


 また思いがけない光景が広がって目を見開く。

 今日は何回驚かせられればいいんだろう。


 それにこの驚かせ方は嫌いだ。


 慌てて、見ないように前を向く。


「パム?どうしたの?」

「あんた顔が青いわよ?」

「体調悪いのか?忘れずに回復魔法使えよ」


 私の様子に気づいたユアンたちから声がかかる。


 体調が悪いわけじゃない。

 現実を受け入れたくなくて、話す気になれず首を横に振って、指で後ろを指す。


「あ?なんだ……ゴブリンたちはどこ行った?」


 さっきまで背後にいた、ゴブリンもゴブリンキングも誰もいない。

 ゴブリンキングが動いたとしたら絶対に足音が聞こえるはずだ。分からないはずがない。


 なのにどこにもいない。


 こ、こんなの……こんなことが出来るのってあれしかいないじゃん。




 ファントムか幽霊しかいないじゃん!!!!怖い!!!!!怖すぎるよ!!!


 思わず、近くにいたユアンの手を握る。


「ユ、ユアンはユアンだよね?優しくて、頼もしくて、包容力のあるモテモテのユアンだよね!?お願いそうだと言って!!!」


 声を震わせながらユアンに尋ねる。


 これで「違う」とか言われたらどうしよう。私気絶するかもしれない。


 今まで見せられてたのは、全部幽霊が変身してましたとか言われたら私……


「うん?よくわからないけど落ち着いて。俺は俺だよ。それよりパム、大丈夫?疲れちゃった?おぶろうか?」

「本物だ!!!よかった!!!!」

「わっ!!どうしたのパム?」


 ユアンに抱きつく。


 この反応は絶対ユアンだ。

 ゴブリンがいなくなったことよりも、私が体調が悪いと思って心配し出すところが、まさにユアンそのものだ!!


 よかった!!!!今のところユアンだけ信じられる!


 残るは、アンちゃんたちの確認もしなきゃ……


 ゴクリと唾を飲み込み、ユアンの胸に埋めていた顔を上げる。


 顔を恐る恐る上げてディランたちを見ると、二人ともニヤニヤとしていた。


「ひぃ……」


 今ではその反応もなんか怖い。

 脅かしてやるぞみたいな余裕さを感じて、恐怖を感じる。


「お前ファントム苦手だもんな?

 昔、ファントムの本を読んでもらって、夜眠れなくなってただろ?」

「なにそれ。あんた……ファントムのなにがそこまで怖いのよ?ただ脅かしてくるだけじゃない」


 あ、これは2人とも本物だ。


 でも訂正したい。ただ脅かすだけなのは絶対違う。そんなことない。


 ファントムは幻覚を見せてきて、脅かしてくるクソ幽霊だ。

 攻撃はしてこないけど、寝ている時に金縛りに遭わせたり、暗闇を歩くと脅かしてきたりする。


 討伐方法も、魔法も物理技も効かない。

 魔よけの香を持って、近寄らないようにするだけだ。


 そう考えても、まんま悪霊って感じの魔物なのに。


「私は物理が効かない相手には弱いの!!口でも言い負かせないじゃん!!!」 

「それより、あいつらはファントムの仕業だったってこと?本当に腹立つ奴らね」 


 (無視された……)


 しかも凄い呆れた表情で……ちょっと落ち込む。


 隣で「大丈夫?嫌いだったの忘れてた。ごめんね」って気を使ってくれるユアンだけが癒しだ。


 幾分か冷静になれる。


 結局、この洞窟の謎はゴブリンとファントムが結託したってこと?


 あの早い点滅はファントムってことで、大して強くないファントムの点滅が早かったのは、私が怖がる魔物だからってこと?


 ダメだ。もう怖くて、頭がよく回らない。そんなことより——


「もうどうでもいいよ!だからこんな洞窟早く出ようよ!!!」




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