↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/75

67話「パニック」

 たしかに私も悪かったよ?

 ゴブリンに捕まってる人の前で「ゴブリンの大群が来る」なんてセリフを吐くなんてさ。


 でもここまでなると思わなかった……


 どうやって伝えればよかったんだろうね。LI〇Eだって、メールだってなにもないのにさ。


「大群ってどういうこと!?」

「いやぁぁぁああ!また捕まるのは嫌なの!!」


 私の声に反応した、お姉さんたちが次々と悲鳴をあげる。


 それだけじゃ飽き足らず、パニックになって走り出す人たちも出てきた。


「落ち着いてください!」

「ちょっと!!!走るんじゃないわよ!!!危ないでしょ!!!?」


 ユアンとアンちゃんが、お姉さんたちを追いかけ回す様子を見て、頭を抱える。


(完全にやらかした……)


 どうにかしなきゃいけないんだけど……どうしようかな。


 横目でチラッとディランの様子を伺う。

 

 ……仕方ない。こういう時は頼らせてもらおう。


 腕を組んでため息を吐いているディランに近づく。


「ディラン、あの人たち連れて逃げられる?」


 話しかけると、ディランが目線を一瞬こっちに寄越す。


「入り口までに魔物は」

「数体しかいない。入り口付近にもいるけど、それはヘレナ姉さんたちが討伐してる」

「なら大丈夫だ」


 よし、じゃあお姉さんたちはディランに任せよう。


「でもどうすんだよあれ。避難させるにしてもパニックになって人の話なんて聞かねえだろ」

「それは……簡単だよ」


(ディランが協力さえしてくれれば)


 マジックバッグの中から、フライバンとお玉を出す。


 カンカンカン


 数回叩くと、金属のなる音が洞窟内に響き渡った。

 それを聞いて、少しは冷静になったのか、お姉さんたちが唖然とした様子で音の主の私を見る。


 母は怖し。

 一回はやられたことあるよね、この音。


 みんなが注目しているのを確認したあと、息を大きく吸い込み、吐く。


「はいはーい、落ち着いてくださーい!今から、この優しい黒髪のイケメンくんがお姉様方を守ってくれまーす!!」

「は?」


 隣から素っ頓狂な声が聞こえてくる。


「みなさんがいい子に行動してくれたら、もしかしたらこのイケメンから何かご褒美があるかもしれませーん!!」

「おい、お前なに言ってっ!!!」


 慌てて口を塞いでこようとするディランを避ける。


「こんなガキンチョの年下に興味ないお姉様方もいらっしゃるかもしれませんけど、イケメンに褒められるのは悪い気しないでしょ?」


 そういうと「確かに…将来有望そうだしありね」や「少し話しただけだけど癒されるもの」など、結構いい声が返ってくる。


「はーい!じゃあちょっとでもいいなって思った人は、ゴブリンが来る前にとっとと列になって並んでくださーい!!」


 そう言うなりお姉さんたちが、急いで列をなしていく。


「お前……」


 後ろから殺意を含んだ声が聞こえてくる。


 やりすぎた?まぁやりすぎたね……


「どうすんだって言ったのはディランでしょ」

「だからってここまでするか」

「ごめん!だってこんなに食いつくって思わなかったんだもん」


 本当にここまで効果あるとは思わなかった。


 以前からこの世界の女の人は肉食系が多いよね。とは思っていた。


 さっきも、ゴブリンに捕まって出たばかりなのに恐怖じゃなくて、ユアンとディランを見て目がハートになってたから。


 だからディランで釣ってみたんだけど……

 思ってたより結構図太いよ、ここの人たち。


「はぁ……どうすんだよあれ」


 ディランが指す方向には、わくわくとしたお姉さんたちがこっちを見ていた。


「あ、あはは。き、期待してる顔してるね……」


(ちょっと怖い)


 年下の未成年なのにこんなに人気なのは、やっぱりディランの顔の良さが原因かな。それとも吊り橋効果?それとも将来的にって唾つけてる?


 理解できないけど、この世界に前世の基準は通用しないからなんとも言えない。


恋愛に対して、男女共に前世よりも積極的なのが、この世界の普通だから。


 まぁ、でもなんか面白い展開だよね。

 思わず口角が上がる。


 とはいえ、隣でイラついているディランのフォローはしておこう。


 こう見えても私も結構悪いとは思ってる。

 本当にここまで食いつくとは思わなかった。


「そこまで大袈裟に捉えないで。

 いつも人をイジるときにするニヤケ面で「よくやった」って言ってくれるだけでいいんだよ」


 そもそも褒めなくてもいいんだけどね。

 私が勝手に言っただけだし、もしかしたらって予防線は貼ってるし。


 まぁ、でももうやらかしたんだからいいよね。

 相手も期待してるし、やりませんとか言ったらブーイングが起こる。


 それにこっちの方が面白いから黙ってよっと。


 後でお詫びするから本当に許して欲しい。


「はぁ……あいつら送り届けたら戻る」

「ありがとう!!!さすがディラン!!

 障壁魔法(バリア)はかけておくから、安全に慌てずに出ててね」


 嫌々了承してくれた、ディランの背中を押すと「障壁魔法、何個維持できてんだよお前……」と嘆きながら、お姉さんたちを連れて走っていった。


(よし、ディランのおかげでなんとか片付いた)


 見送った後に、ユアンとアンちゃんに向き直る。


「さて、もうすぐ来るけど準備はいい?ユアン、アンちゃん」

「うん、大丈夫だよ」

「ええ」


 ◇◇◇


 もう何体目かもわからないゴブリンたちを倒していく。


 まぁ、これも大群で戦う時の訓練かと思い、私はサポート係に回っているけど。

 ゴブリンの攻撃が当たりそうな瞬間に、障壁魔法をかけるだけの仕事だ。


 これはこれで、私も反射の練習になってちょうどいい。

 それにユアンたちに使うタイミングもわかってきた。


 ゴブリンはムカつくけど、いい訓練になったと思う。


「はぁはぁ……こいつら何体出てくんのよ!!」

「アンちゃん、魔力なくなりそうなら魔力ポーション飲んでね。限界なら回復魔法もかけるから」

「お願い……」


 杖をついて休んでいる限界そうなアンちゃんに声をかけると、即元気のない声が返ってきた。


 苦笑いしながらアンちゃんに回復魔法をかけ、領主様と師匠にプレゼントしてもらった魔力ポーションを投げる。


 お祝いで、冒険者一式をくれた領主様たちには本当に感謝だ。早速役に立ってくれた。


「パム、ゴブリンキングはまだ奥にいる?」

「うん。奥にまだいるっぽい」


 アンちゃんとは対照的にユアンの方は、さすがの運動神経だ。体力が無尽蔵。全然息が切れてない。


 2人のことは私が見てられるからいいとして――


 ディランの方が気になる。


 お姉さんたちを無事に送り届けたみたいなんだけど……


 (なんか点滅が早い魔物と一緒にこっちに来てるんだよね……)


 探索魔法を見ると赤いマークを追うように、ディランが歩みを進めているのが見える。


 あーもうなんか帰りたくなってきた。もうゴブリンだって見たくない。

 家でぬくぬくと寝たい。寒いからこたつも欲しい。


 まぁ、この世界にないんだけど……


 なんで初日からこんなについてないんだろう。

 なんでこんな厄介ごとが連続して起きるの。なにが起こってるの。


 初日からこんなにゴブリンの相手をする羽目になるなんて思わなかった。


 血生臭いし、ゴブリンも臭いし最悪だ。

 お風呂も入りたい。清掃魔法じゃなくてちゃんと湯船がいい。


 もう集中力なんてとっくに切れてるし、文句とバカなことしか考えられない。


 私は平和に生きて、暇つぶしに男女の修羅場を眺めていたいだけなのになんでいつもこうなるの。


 文句を言いながらも、手は止めずにゴブリンと対峙していたら——


 ドシ……ドシ……


 後ろから何かを引きずった音と、足音がドシドシと聞こえてきた。謎の魔物が歩みを進めるたびに、身体に振動が伝わってくる。


 (あーもう嫌な予感する。本当にもうやだ。帰りたい!!!)


 そう思っていても事態は変わることがなく、後ろから現れたのは大きな剣を持ったゴブリンキングだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。