65話「救出作戦」
「パメラ、この中に魔物は何体いる」
「数えられない。とにかくいっぱい」
「……わかった。やるしかねえか」
突入する前に、洞窟の入り口前で緊急会議が始まった。
各々のリーダーの質問に答えていく。
魔物の数も多いし、無鉄砲で行くのは誰かが怪我をする可能性がある。
緊急性があれば即行くんだけど……
私の憶測で申し訳ないけど、捕まっている人たちには、まだ余裕があるんじゃないかと判断した。
「パム、捕まっている人たちはどこにいる?」
「えーと、魔物が大量にいるのが真っ直ぐ進む道なんだけど……その途中に、別れる道があって、そこの一番奥」
この洞窟は、思っていたよりも入り組んでいるようで、迷路みたいになっている。
どうりで私が、叫んでも魔物が出てこないはずだ。
そんな洞窟の中で、捕まっている女の子たちは一か所にまとめられているようで、奥深くでずっと移動せずにいる。
青マークは危険な状態の場合は点滅が早くなり、ダメな場合は灰色になるように改良している。
だから、まだ緊急性はないと思った。
……それにもうひとつ理由がある。
なぜか女の子たちの周りに魔物がいない。
いや、全くいない訳じゃないけど、魔物の数に対して本当に数体しかいない。
「ここ厄介な巣かもしれない」
「厄介?パム、なにか気になることでもあるのか?」
首を傾げるユアンに、頷く。
「道が迷路みたいだし、なによりゴブリンキングがいる可能性あり」
捕まえたのに、何もせずに放置しておくなんて知能はゴブリンにはない。
だからひとつ考えられるとしたら、頭脳もそれなりに賢いとされているゴブリンの上級、ゴブリンキングがいる可能性が高い。
「ゴブリンキングか……厄介だな」
「応援を呼ぶべきかしら……?」
「えー!ヘレナ!ラナたちならきっといけるよ!!ボッコボコにしてやろう!!!」
今まで大人しく、会議を見守っていたラナちゃんが口を出す。
基本的には大人しくできない性格だから我慢できなかったみたいだ。
「バカ言うんじゃないの。ゴブリンキングはラナの1億倍も強いわ」
「ええ!?そんなに!?じゃあダメだ」
ラナちゃんは肩をガクッと落とした。
(ゴブリンキングは強いんだっけ?)
ない知識を、何とか必死に手繰り寄せる。
確かゴブリンの中で最強だった気がする。それこそ上級レベルの。
……あの早い点滅がそうだったのかもしれない。
(でも呼ぶ必要あるかな……)
少し不安だけど、ユアンたちなら倒せると思う。
一応、あの師匠から上級でも1人じゃないなら倒せるとお墨付きだ。
でも……もしもの場合が怖い。
その時は私が出るけど——
レナ姉さんたちが居たら、私は前に出にくい。
それでも強行するとなると、バラすことになるんだけど……
流石に今日は、もうやらかしたくないかも。
これ以上したら、冒険者ギルドにいるゴリラが進化して殺人ゴリラになる。
どうしよう……
悩んでいると1人、洞窟を見つめているユアンに目がいく。
「ユアンはどうするべきだと思う?」
近づいて話しかけると
「俺は……二手に分かれるべきだと思う」
意外な返事が返ってきた。
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「ここで隠れててね。障壁魔法はかけてるけど、危ないかもしれないから」
「「はい!!!」」
女の子たちに注意事項をしていく。
「あと、何かあれば、あのお姉さんたちに報告して。助けてくれるだろうから」
「「はい!!!」」
さっきから、何故かみんなやけに張り切っている。
体育会系みたいな返事をされて、それどころじゃないのにめちゃくちゃツッコミたい。なんなのこれ。
「……怖いだろうけど、パニックにならないようにしっかり気を強く持ってね」
「もちろんです!!パメラ様の言う通りここで大人しく待ってます!!!」
「……パメラ様はやめてね」
「はい、パメラ様!!!!」
ダメだ。誰も私の話を聞いてない。
本当に大丈夫なのか心配になってきた。
まぁ、怖くないならいいことだよね。
障壁魔法も張ってあるし、怪我は大丈夫だろう。
女の子たちを草むらに残して、立ち上がる。
「ヘレナさん、ラナちゃんここお願いしますね。怪我には気をつけてください」
「ええ、あなたたちも」
「ユアン、気をつけてね……!!」
「うん、気をつけて行ってくるよ」
ちょうどユアンたちも話がまとまったみたいだ。
「パム、行こう」
ユアンの言葉に大きく頷く。
洞窟の中に入って、みんなで走り出す。
私たちはあれからユアンの案で、二手に分かれることになった。
洞窟に向かい、捕まっている女の子たちを救出するユアンパーティーとディラン。
入り口から出てきたゴブリンを狩り、保護した女の子たちを守るヘレナ姉さんパーティー。
私たちが洞窟に向かうのは、私が障壁魔法と回復魔法、それに探索魔法を使えるからだ。
捕まっている女の子たちを、回復させ、守る役割をお願いされた。
ユアンの案は、救出が最優先。
ゴブリンキングの件は、いた時に考えるらしい。本当にいるかどうかも確定していないから。
ユアンにしては大雑把すぎる作戦だけど、まぁ悪くない。
ヘレナ姉さんたちが来ないなら、私が遠慮なく魔法を使える。
「次は右に行って」
青いマークを見ながら、後ろからみんなに指示を出す。
「待って、次曲がったら魔物がいる。戦闘準備し……え?なに?どうしたの?」
急にみんなが振り返った。
同時に真剣な表情をして見つめられて、誰を見ればいいか分からない。
どうしたんだろう。
「パム、最短で行きたいんだ。お願いできる?」
「……みんなのその表情はヤっていいってこと?」
絶対守れルールその2「攻撃魔法を使う時は仲間の許可を得ること」を思い出す。
「ああ。俺たち以外にいねえから攻撃魔法使え」
思わぬ攻撃許可を得て、目を見開く。
「……あれ?もしかして、そのためにあの大雑把な作戦したの?」
「うん。そうだよ。ふふっ、パムの真似をしてみたんだ」
みんなが頷く。
いつの間にそんな作戦立てたんだろう。
すごい。今ドッキリに合った気分だ。
あの忌々しい、害魔物をめった殺しにするチャンスを貰えるだなんてありがたい。
さっき言葉が通じないことは確認したし、害獣、害虫扱いできるなら私も遠慮なく手を出せる。
魔物には悪いけど、この世は弱肉強食だ。
あいつらに慈悲はなし。
「あんたやりすぎないでよ?洞窟崩れさせるとか、魔物だけにしなさい」
「わかってるよ。危ないからみんなそこにいてね」
角から飛び出して、魔力を込めるーー
ヒュン、ヒュン、ヒュン
何回か風の音が小さく聞こえて、魔法を止める。
探索魔法を確認すると、地図上にあった赤いマークは灰色になっていた。
無事に討伐できたみたいだ。
(……恐ろしい技)
厨二病じゃないけど、自分の力が恐ろしい。
やっぱ理性を持って、慎重にならなきゃダメだ。
こんな莫大な力、簡単に人を殺せる。
一呼吸して、自分の手を軽く握る。
(よし、行こう)
アンちゃんたちがいる場所に戻って声を掛ける。
「終わったよ、早く行こう」
「なにも音が聞こえなかったんだけど……あんた本当に魔法使ったの?」
「使ったよ。ほら」
走っている通路の先を指差すと――
目の前には、真っ二つに切られたゴブリンの死体が山ほど倒れていた。
「……」
「風鎌魔法って名前にしよう。さ、みんな行くよー!!」
(みんなからしたら、ただの風刃魔法なんだけど)
威力が怖すぎるから、ユアンたちしかいない時は風鎌魔法にしよう。
その方がなんか怖そうだし、発動する度に自制できそう。
足を止めて何か言いたげな三人を急かして、また先に進む。
みんなが使っていいって言ったんだから、絶句しないでほしい。
みんなの前でここまでの魔法を使ったことがなかったから、びっくりしたのかもしれないけど。
(まぁ、怖がられてはなさそうだからよかった)
最後の角を曲がり、目的地へと突っ切る。
しかし―
目に入ってきた光景に、今度は私も絶句することになった。
(なんでこんなのがあるの?)
目の前には広々とした空間の中に、明らかに人の手で作られたであろう金属でできた檻が、何個も並んでいた。




