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54話「アンちゃんのお悩み相談」

「はぁはぁ……」

「お疲れ様ー!」


 筋トレと走り込みを終わったアンちゃんにハンカチを渡す。


「今日はこのあとおやすみね」


 魔力枯渇は体に問題ないとはいえ、体を酷使しているのは間違いない。

 休みもなく続けるのは体に良くない気がして、休みを定期的に取ってもらってる。


「あ、そうだわ。ちょっとあんたに相談したいことがあるのよ」

「相談?」


 首を傾げる。


(相談ってなんだろう……?)


「パム!アン!」


 呼ぶ声が聞こえて振り返ると、手を振ってるユアンと、壁に寄りかかっているディランがいた。


 今日休みだって言っておいたのになんでいるんだろう。


 2人に近づくと「お疲れ様」と、水を手渡される。


「なんであんたたちがいるのよ。訓練はサボったわけ?」

「ううん。今日、訓練だったんだけど急な仕事で師匠が忙しそうだったから帰ってきたんだよ」

「それにお前ほっとくとまたやらかすだろ」


 ディランに、疑う目で見られる。


 まぁ、常識を破りすぎた自覚はある。

 でも私だってちゃんと人は見てるつもりだ。


「それより、アンちゃんが悩み相談だって」


 とはいえ、ちょっと言い返せない。

 話をそらすためにアンちゃんには犠牲になってもらおう。


「悩み?なんだ」


 ディランが不審な顔をしてアンちゃんに続きを促す。


「魔法のコントロールできないのよ……」

「魔法のコントロールって、火球魔法ファイアボールとか放つときの?」

「そう」


 アンちゃんのその悩みはいずれ打ち明けられると思ってた。


 アンちゃんは雪合戦の時のように、意味わからない所に魔法を放つときがある。


 強化魔法では魔法のコントロールは補えないのか、訓練から数ヶ月たった今でも苦戦しているみたいだ。


 でも前よりはマシになってきてるし、そのうちにできるようになるはず……多分。


 いや、嘘。ごめんアンちゃん。めちゃくちゃ不安かも……


「お前の運動音痴は筋金入りだな」


 ニヤリと笑ったディランにアンちゃんがムッとする。


「はあ?情けないあんたにそんなこと言われたくないわ。パメラのことす……むぐっ!!」

「おい!」


 慌てたディランがアンちゃんの口を塞ぐ。


 アンちゃんは抵抗するけど、ディランに力では敵わなくてもがいている。


「ふふっ、仲良しだね」

「そうだね。喧嘩するほど仲がいいってよく言うしね」


 水を飲みながらユアンと二人でアンちゃんたちを見物する。


 暴れていたと思ったら次は言い合いが始まった。


 こうしてみると、2人は兄弟みたいだ。

 ヒルダとジョンもよく喧嘩しているけどそっくり。


「はいはい、喧嘩しない」


 ヒートアップしてきた二人を止める。


「アンちゃんの悩みにいい案ある人いる?」


 私は未だにいい案が思いついていない。

 なにかヒントでも貰おうとみんなの意見を聞く。


「はい!」


 手をあげたユアンに続きを促す。


「指をさして放出する方向を確認するとかどうかな?」

「なるほど……」


 狙いを定めて放出するってこと?結構いいかもしれない。 


 それはそれで練習は必要だろうけど、何もしないよりはいいだろう。


「指したところで治んねえだろ。慣れるしかねえ」

「まぁ、それも一理ある」


 二人の意見をまとめると、狙いを定めるなにかをしながら慣れるってこと?

 前世で何かあったっけ?そんなのな……いや、何かあった気がする。


「お前は何かねえのか。こういうの得意だろ」

「んー、ちょっと考えてるから待って」


 急かすディランに手で制する。


 思い出せないってことは、多分前世の知識が引っかかってる。

 魔法関連だから思い出せるかわからないけど、ちょっと考えてみよう。


 魔法といえば、結構な数の作品があったはずだ。 

 魔法少女ものに、学園ものとか……


 (はっ!)


 その何処かに何かヒントがある気がする。

 なんかもう、すぐここまできてる。


 えーっと、フリフリの衣装……違う。

 ローブも違う。

 魔法陣も違う。いや、魔法陣を書くときに何か使ってなかったっけ?


「パム?」

「完全にトリップしてねえかこいつ」

「ここまで悩ませると思わなかったわ……思いつかなかったらいいのよ……?」


 あ!ほうき?

 いや、違う。これもいいけど、アンちゃんに似合いそうな……もっとこう——


「……あ!」

「きゃっ!!」


 思い出した!!

 魔法で可愛いアイテムがあったじゃん!


 あれならどこに放つべきかもわかるし、難易度も下がるかもしれない。

 どっちの意見にもあってる。


 周りをキョロキョロして、代替品を探す。


 (あった!!)


 急いで走って駆け寄って、拾うとみんなの元へ帰る。


「はい、アンちゃん。これ使って」

「木の棒……?」


 アンちゃんの腰くらいまで木の棒を手渡す。


「そうだよ。本当はもっと綺麗で可愛い杖を用意したかったんだけど、今はこれで我慢して」


 きっと綺麗で可愛い杖を持ったアンちゃんは綺麗だし可愛い。


 私の願望では、将来的には綺麗な杖を作って、アンちゃんに持たせて眺めたい。

 あと、綺麗な服も着せて可愛く仕上げたい。


 こうやって改めて見ると、アンちゃんの方が聖女みたいだ。


 (んー可愛い!)


 木の棒でも可愛く思えてきた。昔の魔女風でこれもありだ。


 キラキラした目で熱心に見つめていると、アンちゃんは後ずさった。


「ど、どう使うのよ……?」

「杖に魔力を這わせて、杖の先から出すイメージで魔法を出して見るとか?」


 魔法は別に手のひらからじゃなくても発動できる。


 まぁ、その分イメージは大事だろうけど、だんだん上手くなってきたアンちゃんなら大丈夫だろう。


「なるほどね……」


 もう1個利点がある。


「それに体力なくなった時に、杖ついたら楽になるよ」

「……」


 アンちゃんは口を開けたまま固まった。


(うん、やらかした)


 言い終わって気づいたけど、なんか杖をついて歩いてるおばあちゃんみたいだなとは思った。


 いや、でも口に出す前は、登山で使うトレッキングポールだっけ?

 あれみたいな感じでいいじゃんって思ったんだけど……


 アンちゃんの表情を見るに、完全に失敗したみたいだ。私もそう思う。


「くっ……はははははははは!!!」

「ディラン、ダメだよ。笑ったらまたアンと喧嘩になる。

 それにアンの苦手な部分を補えるならいいんじゃないかな?」

「ユアン、火に油注いじゃだめ」


 悪気がないユアンを止める。

 でも、さらにディランがツボに入ったみたいで、間に入ったことを後悔する。


 もうダメだ。口を開けば開くほど余計な言葉しか出てこない。


 アンちゃんの顔が怖くてあまり見られない。


「あんたたち……」


 俯いていたアンちゃんが顔を上げる。


「あたしをおばあちゃん扱いするんじゃないわよ!!!!!!」


 襲いかかってきたアンちゃんから逃げようとみんなで走り出す。


 怖がるべきなんだろうけど、後ろから追いかけてくるアンちゃんに笑みがこぼれる。


 (たまには鬼ごっこも悪くないかも)


 それにアンちゃんが鬼役に回れているのにも感動する。


 少し前まで、すぐに転けて絶対に人なんて捕まえられないだろうって感じだったのに、今は転けもしない。


 (成長する感動ってこういうこと?)


 心が少しホカホカしながら、少し足が早くなった鬼から逃げ回っていると、アンちゃんの限界が来た。


 訓練後でさっきまで走ってたし、それもそうだろう。


「はぁはぁ……もう無理」


 そう言ってアンちゃんは、手に持っている杖をついた。


 (あ、ダメだ。我慢できない)


「あははははは!!」

「くっ……はははは!怒っておいてお前、自分から杖ついてんじゃねえか。笑うなって方が無理だろ」

「く……ふふッ……ご、ごめんねアン……ふ、ふふッ」


 さらに有用性を示すことになったアンちゃんに私たちは耐えきれなかった。

 ユアンまでも、頑張って堪えようとしてるけど、無理だったみたいだ。


 隠そうとして顔を背けているけど、肩が震えている。


 だんだんアンちゃんの顔が真っ赤になっていく。


「う、うるさい!!もう杖なんて使わない!!!」


 木の棒をアンちゃんは投げた。


 しかし、後にアンちゃんをおだてて杖で魔法を試させた結果――


バッチリ使えることがわかったので、結局杖を使うことになった。


 こうして可愛い魔法少女が誕生した。


 本人は、顔が死んでいて不服そうだった。



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