53話「パメちゃん先生流、訓練3」
「騎士団とかの魔法の練習方法って、今はどんな感じなの?」
数年前に聞いたことがあるけど、練習方法が変わっているか一応聞いておこう。
練習方法が同じだったら、私が教える意味ない気がするし……
「騎士の人たちが前に出て、魔法を使うのよ。
あたしたちがそれを見て、詠唱、魔力を込めてひたすら練習をする」
「ふーん」
なるほど。相変わらず効率が悪い。
(まぁ、その代わりアンちゃんが成長できるかもしれないけど)
「じゃあアンちゃんには早速これを使って魔法の練習してもらおうかな」
「は?これってなんの事よ……?」
「パム……?」
「お前何してんだ」
みんな動揺した声を出す。
「なにって……風を送ってる」
紙を束にしたもので、アンちゃんたちに風を送る。
みんな一斉に「こいつ何してんの?」みたいな困惑した顔を向けてきて面白い。
「風が嫌なら、土でもいいよ……
え?みんな何してんの?」
足元から土を取って、みんなの前に手を差し出すと、アンちゃんに砂を持っている手を握られ、ユアンには後ろから支えられ、ディランにはおでこに手を当てられる。
「魔法の話してたのに、あんたが急に頭おかしいこと言い出すからよ!!」
「パム?大丈夫?」
「熱はねえな……」
みんなして真剣な顔で私の心配し出した。
ちょっとからかいすぎたみたいだ。
完全に頭のおかしい子扱いを受けてる。
「大丈夫だよ。誤解してるけど、魔法にこれを使うんだって」
「「は?」」
「風と土を?どうやって使うんだろう?」
「ユアンは優秀だね〜」
未だに飲み込めていない二人より先に戻ってきたユアンの頭を撫でる。
さすがあのおじいちゃんとすぐ打ち解けただけある。図太い。
「ほらほらアンちゃん、ボーッとしてないでさっさとやるよ。
難しい魔法とかを考えずに火だけ出して、秒数数えるからね」
「へっ、ちょ、ちょっと待って!!」
「はい、スタート!!1、2……」
秒数を数えていく。
「……4」
「できたわ!!!」
アンちゃんの手のひらには小さな火種がある。
「火は4秒っと……じゃあ火球魔法使ってみて」
アンちゃんが火球魔法を放つと、思っていた通り斜め上の方向に飛んで行った。
結果を紙に書き込んでいく。
火球魔法を使うまでに3秒かかった。
「じゃあ次は水。はいスタート!1、2……」
「もうなんのよ……」
アンちゃんは文句を言いながらも、手は動かしている。
水を出すのにかかった秒数は8秒だった。
水球魔法を使うのは3秒。
火属性の魔法よりも遅かった。
その後も順当に無属性以外の魔法を使ってもらう。
「アンちゃんって火と土が得意なの?」
無属性は誰でも適正を持っているから除く。
「そうよ」
「へぇ……適正ってだけあるのかな?他の属性よりも早いね」
火と土は他の魔法よりも4秒以上早かった。
アンちゃんのおかげでわかったことがある。
聖魔法の初級、光球魔法をみんな使えるのになんで適正があるんだろうとずっと思ってた。
(あれって下手くそって意味だったんだ……)
となると、どうせなら得意属性だけを伸ばしたほうがいいのかな……
いやでも……ゲームとかでもあるけど、この属性は効きませんみたいな敵がここでも出てくる可能性もある。
「うーん」
まずは得意を伸ばして、そのうち弱点を伸ばすべき??
「これがなんなのよ?さっきのと、どう関係あるわけ?」
「アンちゃんって、火を出すのに4秒かかってるんだよ」
火なんて料理とか使う所がたくさんあってイメージしやすいのに4秒だ。
「下手くそって言いたいわけ?」
口元が引き攣ってるアンちゃんに首を振る。
「違うよ。アンちゃんって魔法使うときに、最初に火を思い浮かべてない?」
「え、なんでわかったの?」
「火を思い浮かべるのに4秒、ファイアボール3秒。
ちょうど詠唱が終わるくらいの秒数なんだよ」
詠唱を読んだら大体7秒くらい?
間を持たせたらもっとかかるだろうけど、まぁ大体このくらいだろう。
アンちゃんの手順はこうだ。
・魔力を込めて詠唱をする
・4秒、火を思い浮かべる
・3秒、魔法を具体的にイメージする
・詠唱が完成して、魔法を発動
「つまり……基礎ができてないってこと?」
「そういうこと。私なら1秒以内で出せる」
火、水、土、風、次々とパパッと手のひらに出す。
「でも、こんなのは使ってたらすぐに習得していくから気にしなくていいよ。
魔力操作もそうだけど、もし練習したいなら、合間にでも練習しておいて」
「わかったわ」
清掃魔法とか、生活に使われている魔法をフルで詠唱する人は居ない。
お風呂代わりに、小さい頃から当たり前のように使っているから、みんな魔法名くらいで詠唱できるんだと思う。
要するに慣れれば何も考えてなくても当たり前のように使ってるってことだ。
「だから今はこの土たちを使って練習するよ。
これに魔力を流して、イメージする練習に集中して」
拾った土をアンちゃんに渡す。
「え?魔力通るの……?」
「それが意外なことに通ったんだよね。
でも通りが悪くて小さいのしかできないし、魔力量も多くいるよ」
自分で魔法から編み出すよりも、魔力が吸い取られる速度も量も多い。
でも、時間もないし基礎を省けるならやる価値はある。
それに私の憶測だけど、これは神様が介入しているんじゃないかと思ってる。
だってこの世界は、魔法の世界だ。
冒険者だけじゃなくて魔物だって魔法を使う。
中には自然が壊れるほどの魔法を使う場合もたくさんあるだろう。
なのに……なんでこんなに自然が綺麗なんだろう。
冒険者がやらかした焼け野原になった森も、気がつけば回復している。
こんなことができるのは神様くらいしかいない。
だから遠くでも、魔力で操れるように魔力を通せるようにしているんだと思った。
(実戦じゃ使えないけどね……)
「本当に通るよ」
ユアンが魔力を流しているのを、二人は覗き見る。
「お前……これどうやって気づいた」
「んー、ディランは土人形の話聞いたことある?」
ディランたちがアンちゃんをチラッと見る。
当事者のアンちゃんも、知っているみたいで嫌そうな顔をしている。
「喋るって噂のあいつか……」
そう。これに気づいたのはゴーレムらしき魔物が出た時だ。
喋れるし、巨大化する特殊な能力も持ってるし、魔法も使えるでしょ。
なら、元は自然なんだし魔力も通ってて、操れるんじゃない?
くらいの軽い気持ちでやってみたらできてしまった。
私が初なのか、昔では行われてたのかわからないけど、利用しない手はない。
使った後、砂に変化もなかったし、問題にはならないだろう。
(まぁ、また秘密はできたけど)
「言葉も出ないわ……もう……」
「はぁ……口外できない秘密がまた増えた。
なんでお前はそんなニコニコしてられんだよ……」
ディランがユアンを恨みがましそうに見る。
「パムすごいって気持ちしかない……かな。
それに一緒に背負うって決めたから俺もパムに負けないように頑張らないと」
眩しいくらい、いい子だ。
だからこそ、これを言うのにはちょっと躊躇する。
でも、仕方ない。
これも異世界ものとかでよくある魔力量を増やせるチャンスかもしれないから。
「みんな頑張ってね。これから毎日、魔力を空っぽにするまで魔法の訓練しようね」
「「「…………」」」
みんながピタリと固まる。
まぁ誰もが1回は経験したことがあるだろうから当然か。
「アンちゃんは走り込みと基礎練習。ディランとユアンは剣術の練習もあるけど、きっと乗り越えられるよ!
大丈夫!ちょっと体の力が出なくなってキツいけど、体に害はないから!丸1日動けなくなるだけ!」
「「「…………」」」
(誰も反応してくれなくなっちゃった)
みんなの反応が面白くてちょっといじめすぎたかもしれない。楽しくなってつい……。
絶望したみんなが再起するまで数分かかった。




