51話「パメちゃん先生流、訓練」
青空の下、中庭を走る。
「ほら、アンちゃん遅いよ!!!走って走って!!!」
走ってるアンちゃんのお尻を叩く。
「ちょ!!どこ触ってんのよ!!筋肉痛のところ触るのやめなさいよ!!」
「遅いと私、抜かしちゃうかも。今日罰ゲームは倍にしちゃう?」
私の言葉にアンちゃんは顔を青くする。
「もう!!!わかったわよ!!走ればいいんでしょ!?」
「そうそう!ほら、頑張るよー!!」
私がまず始めに選んだ修行方法は走り込みと筋トレだ。
アンちゃんの一番の欠点が、運動神経の悪さ。
そこを補えるのが強化魔法だ。
だから今は強化魔法を使いながら走ってもらってる。
とはいえ、アンちゃんは今まで魔法を必要以上には使っていなかったのか、初心者も初心者。
それに、この世界の強化魔法は後で反動がくるタイプだ。
無理やり体の機能を上げてるから、筋肉痛になる。
酷いと立てないこともある。
これを克服しないことには、アンちゃんは冒険者としてはやっていけないだろう。
常時発動できるくらいまで頑張ってもらいたい。
だから、強化魔法を使いながらの走り込みと、筋トレを数週間かけて訓練している。
とはいえ、そろそろ鬱憤が溜まっていそうではある。
ぐちぐち文句を言うアンちゃんのお尻をずっと叩いてきたから。
「はぁはぁ……いつかあんたぶっ飛ばす」
ほら、倒れ込みながら恨み言をぶつけてきた。
「今日もお疲れさま。その時を楽しみにしてるね」
正直、私も走るのは飽きている。
アンちゃんをいじるのは面白いけどもう走りたくないから、早く習得してほしい……。
そろそろ自分のためにも、アンちゃんのためにも気分転換に魔法の修行をしてもありかもしれない。
最近は転けることも少なくなってきた。
まぁ、走り込みと筋トレは続けてもらうから、さらにしんどくなるんだけど……
「アンちゃん、明日から魔法の訓練してみる?」
「本当!?する!!やっときたわね!!!!」
(ま、いっか)
喜んでるみたいだからアンちゃんには言わないでおこう。
◇◇◇
「で?なんでいるの?」
今まで参加していなかった二人が今回は参加している。
「親父と師匠の命令。魔法が得意なお前に習うなら価値があるから行ってこいだとさ」
「どういうこと?」
領主様ならまだわかるけど、私はギルマスに面識がない。訓練も行ってないし。
なのになんで私が魔法を教えるからって、わざわざユアンたちの訓練を中断してまでこっちに来させるんだろう。
実力もなにも知らないはずだ。
詳細を話してもらおうとユアンを見る。
「初めは師匠は反対してたんだ。
たかが11のお嬢ちゃんの訓練になんで参加するんだ?って」
(モノマネ?)
似てるか分かんないけど、ユアンがいつもより低い声を出している。
「でも、たまたまそれを聞いていた領主様が、パムが教えるなら参加したほうがいいって師匠に勧めたんだ。
そしたら「とりあえず行ってこい」って言われて今いるよ」
なるほど。それならまぁ納得できる。
元Sランク冒険者パーティーの信頼なんだろう。
「ていうか、その口ぶりは領主様って今回のこと知ってるってことだよね?」
「知ってる。ソフィアさんに親父たちは巻き込んだほうがいいって説得した」
いつの間にそんな話を……
まぁ、たしかに領主とギルマスだから巻き込めるなら役に立つ。
ギルマスは知らないけど、領主様を見ていたら、院長は恩人だから裏切らないだろうし、色々動いてはくれそうだ。
……なんか色々好条件すぎてちょっと怖い。いつか反動が来そうな気がする。
まぁ、これは院長の人望のおかげだろうけど。
「……じゃあ始めよう。
アンちゃんどこまで使えるのかわからないから、初級の魔法使ってみてくれない?」
「わかったわ」
頷いて一歩前へ出る。
手の平を前に出してアンちゃんは口を開いた。
「火の神よ。我らに力を与えたもう。ファイヤーボール」
詠唱したアンちゃんの手から、100円くらいの小さな火の玉が出てきた。
「それ……私に向かって撃ってくれない?障壁魔法で防ぐから」
「ええ」
アンちゃんが、火の玉をよろよろとゆっくり動かした。
「よし、アンちゃんおっけー」
もういいと、ストップをかける。
「うん、アンちゃん……
予想以上にダメダメすぎるよ!!」
「うるさい!!だからあんまり得意じゃないって言ったでしょう!!!」
真っ赤な顔をして反論してくる。
「それになんであんな恥ずかしい詠唱するの?」
「はあ?別に恥ずかしくないでしょう?基本中の基本よ?」
いいや、恥ずかしい。
大人の私からしたら中二病真っ最中のセリフみたいですごく恥ずかしい。
前世を思い出す前から、これはずっと思ってた。
昔から恥ずかしさで見てられなかった。
「パム、昔からあの詠唱嫌いだよね」
「嫌い。恥ずかしくて穴に入りたくなる」
私よく我慢した。
アンちゃんが使ったときどうしようかと思った。
「そんなこと言われても、これがなかったら私は魔法を使えないわよ」
「これから使わなきゃいいじゃん。将来的には、せめてファイアーボールだけにして」
「そこまで短縮するのが無理だから使ってんでしょうが!!」
無理じゃない。
だって強化魔法は、さっきから無詠唱でずっと使ってる。
仕組みを知らないだけで、無詠唱自体は誰でも使えるはずだ。
それに、あんな長い詠唱を戦いでいちいち使ってたら使い物にならない。
だからさっさと捨てろ!そんな恥ずかしい詠唱!!
「よし……じゃあそれを説明するために座学にいきまーす!」




