43話「最悪な日」
「はぁ、疲れた……」
自室に戻るなり、ベッドへダイブする。
みんな無事に帰ってきた。
今日はよく頑張った。
出来れば二度と味わいたくないけど、日本みたいに治安が良くないから多分無理だろう。
それにしても……
「なんか段々と問題が大きくなってる気がする」
それに前世を思い出してから、働きすぎだ。
ユアンの看病に始まり、アンちゃんたちの行方不明まで、まだ4ヶ月くらいしか経っていない。
「……よし、明日から絶対楽する。絶対なにもしない!!!」
そう誓って眠りに入った。
◇◇◇
ドアがバンッと開く音で目が覚める。
うるさい。
今日は起こさないでってユアンに事前に伝えたのに……。
布団を頭まで被ると、ガバッと剥がれた。
(寒い……)
「もー、だ…れ……?」
「あんたいつまで寝てんのよ」
なんだアンちゃんか。
だからいつもより起こし方が乱暴なんだ……
「寝るな!!!」
「いて……」
再び眠りに誘われて、瞼を閉じると、頭を叩かれる。
「わかった。わかったから叩かないで……」
諦めて体を起こすと、見覚えのある黒髪の少年もいた。
「おはようディラン」
「お前、寝すぎだろ」
「ふぁ……今、何時?」
「15時よ!」
想像してなかった数字が聞こえてきて、飛び起きる。
「15時!?なんでもっと早く起こしてくれなかったのさ!」
「自分で起きなさいよ。それより支度しなさい。
あんた教会に行かなきゃいけないんでしょう?」
その言葉を聞いた途端、降りようと踏み出していた足をベッドに戻した。
アンちゃんから、布団を奪い返して「おやすみなさい」と挨拶して、また寝に入る。
「ちょっと!なんでまた寝るのよ!」
「教会なんて行かないから!
絶対行かない!!私はここでずっと寝る!!!!」
断固拒否する。
あんな場所行きたくない。
布団を引っ張ってくるアンちゃんから、奪い返そうと引っ張ると、ベッドに倒れ込んできた。
「ぶっ……!!ちょっと!何すんのよ!?」
「アンちゃんが悪い!!私は嫌なものは嫌!!」
「やめろ。気持ちはわかる。でも諦めろ」
言い合いを始めた私たちにディランの仲裁が入る。
「残酷……ディランに見捨てられた……」
「だからなにをそんなに嫌がってんのよ……」
困惑した様子のアンちゃんに説明しようと口を開くと、突然コンコンと部屋がノックをされた。
嫌な予感がして、布団を被って隠れる。
「みんな、パム起こせた?」
「なんだユアンじゃん……よかった」
院長かと思って身構えたけど、扉を開けて入ってきたのはユアンだった。
「私もいるわ、パメラ」
「おっと……」
どこかに隠れていたのか、ユアンの後ろから院長が顔を覗かせた瞬間、顔が一気に青ざめる。
「いつまで寝てるのかしら。それに今日は教会に行く約束でしょう?」
「それは教会と院長たちが勝手に決めた約束じゃん!!」
そうだ、私は同意してない。
「そう。それなら教会にいつでもお越しください。
って返事するしかないわ」
「いつでも……?」
顔が引き攣る。
想像したら地獄すぎて耐えられない。
「すみませんでした。急いで支度して行きます」
急いでベッドから降りて着替えようと寝間着を脱ぐ。
「おい、俺たちいるの忘れんな」
「俺たちは一旦出て行くね。パム、外で待ってるから」
あ、ユアンたちいるの忘れてた。
刺激が強すぎたか……肌着だけど。
でもまぁ悪いことをしてしまったと反省しながら、慌てて出ていく二人を見送った。
教会に着いてしまった。
白と金を基調にした、品のある大きな建物を見上げる。
毎回思うけど見てる分にはいい。
海外旅行で観光に来てる気分にもなる。
でも、入るとなると別ですごく嫌だ。
扉の前で深呼吸をする。
「パメラ、入らないの?」
扉の前で立ち止まっていると、アンちゃんが急かしてくる。
「アンちゃん、人には心の準備というものが必要なんだよ……」
「教会に何をそんなにビビることがあるのよ」
アンちゃんは知らないけど、これから起こることは本当にとんでもなく最悪な出来事だ。
覚悟しなくちゃいけない。
「さっきからあの子なんなのよ。ついに頭おかしくなったわけ?」
小さな声で話してるつもりだろうけど、ばっちり聞こえてるよアンちゃん。
「えーと、なんて言えばいいんだろう……」
「見たらわかる」
「あんたたちもさっきからなんなのよ。いいかげん教えてくれても……っ」
いつまでも教えない私たちに、アンちゃんが我慢の限界になった時――
教会の扉がギィっと音を立ててゆっくりと開いた。
その音だけで、ドキンっと胸が高鳴って冷や汗が出てくる。
耐えきれなくなって、ユアンとディランを盾にして隠れる。
完全に扉は開かれた。
そう思った瞬間――
音楽が流れてきた。それも爆音で。
「は?何よこれ」
わかるよその反応。
「今年はこれか……」
「いつもより豪華だね……」
小さくドン引きしている二人に激しく同意する。
楽器の演奏をされるとは思わなかった。
ていうかこの世界に楽器あるのさえ知らなかった。
ピアノの他にもバイオリンなど、様々な音が聞こえてくる。
オーケストラ並みの仰々しい音楽に頭を抱える。
通行人もみんな何が起こったのか、興味を持って集まってきている。
その時――
教会の中から、頭から足先まで全身白を纏った長髪の聖騎士が見えた。
儚げな印象を与える男が教会から出てくると、周りから黄色い悲鳴が上がる。
それを手で制すると男は口を開いた。
「聖女パメラ、ようこそいらっしゃいました」
「は?」
視界の端でアンちゃんが騎士と私を交互に見て、戸惑っているのが見える。
「……ちっ」
仏頂面の騎士に話しかけられた瞬間、思わず舌打ちが出てしまった。
おかしい、するつもりなかったのに。
「お気に召していただけましたでしょうか?」
「お気に召したかだって……?」
たしかにオーケストラはすごいよ。
演奏も上手だと思う。
でも……
「……お気に召すわけねぇだろ!
目立ってんの!毎年、毎年嫌がらせやめて!あと――
私は聖女じゃなああああい!!!!」
豪華な演奏をBGMに私の大声が響き渡った。




