4話「前世を思い出した日」
あれからすっかり目が覚めてしまったユアンと、話込んでしまった。
まだ話足りないところではあるけど、そろそろ寝かせないと悪化しそうだ。
それではせっかく看病しにきた意味がなくなる。
「じゃあ、ちゃんと寝てね。私あっちの方にいるから気にしないっ……揺れてる……?」
それが起こり始めたのは、ユアンをベットに寝かせて邪魔にならないように、端の方に移動しようと立ち上がった時だった――
突然、孤児院が軋む音とともに微かに揺れが伝わってくる。
また魔物が出たのだろうか。
たまに魔物が街に来て、今みたいに揺れることがある。
その時に合図として、鐘を鳴らすのがいつもの流れだ。
今日もそうだろう。と思って鐘を待っていた。
しかし、いくら経っても襲撃の合図の鐘は鳴らない。
それどころか、次第に大きくなる揺れに、外から悲鳴が聞こえてくる。
(地震……?でもこの世界では自然災害なんて滅多に起こらないはずなのに……)
状況を確認しようと立ち上がった瞬間、ドンッと大きく揺れて足元がふらつく。
倒れる――
そう思った瞬間、いつの間にか立ち上がっていたユアンが支えてくれた。
「魔物じゃないのか……?とりあえず、パメラ。こっちに」
ユアンに手を引かれ、部屋に置いてある机の下に押し込められる。
机は子供が一人、入れるくらいの小さいもので、入れないユアンは机が動かないように上から抑えつけた。
本来これくらいの子供なら『これで自分は安全だ』とホッとするところなんだろう。
でも、私はこんな時にも人を優先するユアンに心がザワザワした。
これでいいの?熱だってあるし、背丈も変わらない子供に守られて――
(いや、こんな子供守らないなんて大人失格じゃん)
この小さくて優しい男の子を――何故か守らなきゃ……そう思った瞬間、机の下から抜け出していた。
(隙間あってよかった!)
机から飛び出すと、目を丸くしたユアンを急いで机の下に押し込む。
「病人なんだから無理しないで!私は大丈夫だからそこに入ってて!」
まだ唖然としているユアンにそう告げると、ユアンが出てこないように体で塞いで、両手で机を抑えた。
この時の私はまだ、この行動で前世の自分のことを思い出すことになるなんて思わなかった。
いや、もう思い出しかけていたと思う。
なんにせよ、守るために機敏に動いた過去の私を褒めてやりたい。
2回目の大きな揺れを感じた時だった――
「パメラ!!後ろ!!」
下から叫ぶような声が聞こえてきた瞬間――自分の背丈以上ある棚が倒れてきた。
背中と頭に直撃し、角が当たってしまったのか頭から血が流れてくる。
「パメラ!大丈夫か!?」
ユアンの叫ぶ声が聞こえる。
返事をするべきなんだろうけど、私はそれどころじゃない。
「パメラ!大丈夫なのか?!返事してくれ!!」
頭も痛いし、何より頭の中がぐちゃぐちゃだ。
だって見知らぬ子が、見知らぬ世界で生活している姿が頭の中に流れている。
赤ん坊の頃から大人になるまで。
その子が友達と放課後に遊んだり、勉強、仕事をしている姿が頭に浮かぶ。
(これって走馬灯ってやつ?前世死んだ時は、見た記憶がないから今更見せられて……)
あぁ、この子って私か――
そう思った瞬間、頭がスッキリしてきた。
(これ転生じゃん!!!どうりでおかしいはずだよ!!)
この世界にない知識ばかり持っていたら、変人扱いされる理由もわかる。
きっと周りと違うおかしな子と思われていた。
でも……前世の知識はこの世界できっと役に立つはずだ。
まぁ、覚えてないというか、思い出せないことあるけど……激しい物忘れ的な感じで。
(あれ?それって「あれだよあれー。なんだっけかな?」って言うおばあちゃんみたいじゃない?)
おかしい。たしか、20代中頃で死んだはず……
今だって、ピチピチの10歳だよ。
(あれ?若返ったのになんでこんな気持ちになってるの!?前世合わせてもおばさ……いや、お姉さんだよ!!!)
こうして私の記憶は元に戻った。




