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38話「冬のバザール・聖灯祭4」

(アンゼリカ視点)


 孤児院を出て大通りに向かう。

 近づけば近づくほど、ザワザワと人の声が大きくなっていき、街灯の明かりで眩しくなってきた。


「なぁなぁ!そろそろなんか食べてえ!!こんなご馳走前にしてお預けは嫌だ!!」


 大通りに着くなり、ザレックはお腹をさすって空腹を訴えた。


「そろそろって……今、着いたばかりでしょう」

「まぁまぁ、アン。せっかくだから楽しもう。ね?」


 同じくお腹を摩っているユアンにため息が出る。


 ……胃が痛くなってきた。

 この場には食いしん坊の馬鹿しかいないみたい。


「それに院長からの伝言。これで遊んできなさいだって」


 こっちに向かって手を差し出した、ユアンの手の平にはお金が乗っている。


「……はじめからこれが目的だったわけ?」

「そうだぞ!!だから楽しもうな!!」


 もうちょっと隠そうって気はないわけ?

 即答するザレックに頭を抱える。


「ごめんね。アンが嫌なら辞めるよ」

「いいわよ。あんたたちお腹すいてるんでしょう?さっさと行くわよ」


 全く……孤児院の人たちはお節介なバカが多いわね。


「じゃあ何食う!?」


 ザレックの大声に耳を塞ぐ。 


 こいつ本当に13?

 もう2年で成人なんて信じられない。


 夢であって欲しい。これが年上だなんて。


 それに旗持ちながら大声を出すのはやめて欲しい。

 通行人がみんなジロジロ見てきて恥ずかしい。


(……これって旗はいるのかしら?)


 ふと疑問に思う。


 パメラが旗を持つのは人混みの中でもわかるようにって言ってたけど、ザレックの大声でみんなが振り向いてる。


 ……もしかしてまたあの子にしてやられたの?帰ったら絶対文句言ってあげる。


「アン?」


 いけない。ぼーっとしてたみたい。


「別に。あたしはなんでもいいわ」

「ふふっ、了解。

 じゃあ屋台を回ろうか。それでもし欲しいものがあったら気軽に言ってくれ」


 こいつはこいつでお人好しよね。

 それに一緒に歩いていると女の子の視線を集めて鬱陶しい。


 そもそもなんでモテるのかが分からない。

 顔はいいけど、中身はパメラを冒険パーティーに熱心に勧誘する変人だ。


 ……あれ?改めて考えるとあたしとんでもない孤児院に来ちゃったのかしら。


 考えれば考えるほど、どの人も癖のある人たちばかりな気がする。


 それに最近はパメラのペースに巻き込まれて、このメンバーにも少し馴染みつつある。


 ……それはちょっと嫌ね。気を引き締めましょう。


「ザレック兄さん、屋台見て回ろう」

「おう!!」


 屋台の齧り付けになっていたザレックをユアンが呼び戻す。


「アン、行こうか」


 ユアンが手を差し出してくる。


「……なによその手」

「パメラがアンが迷子になったら泣いちゃうかもしれないから手を繋いであげてって……」

「誰が泣くか!!いらないわよ!鬱陶しい目が更に鬱陶しくなるわ!!」


 ユアンの手をパチンッと叩き落とす。


 そんなことしたら、ユアンにお熱の女に刺される。

 そこまでしてこいつと手なんて繋ぎたくない。


「鬱陶しい目…?どういう意味なんだ?」


 顔が引き攣る。

 あの視線に気づかないなんて、ユアンも鈍感馬鹿だ。


 また胃が痛くなってきた。


 あの子、絶対わざとユアンにこれをさせたでしょう。

 パメラみたいな変人しかこんな状況喜ばないわよ!!


 腹が立ってきた。帰ったらやっぱり許さない。


 まぁ、でもここにパメラがいないだけ良かったわ。


 あの子……ザレックと同じくらい馬鹿だから余計に胃が痛くなるわ。


「おや?ザレックくんとユアンくん久しぶりじゃの〜」

「あ!おじいちゃんお久しぶりです!」

「じいさん久しぶりだな!」


 杖を着いているお爺さんが、ユアンたちと親しそうにしている。


 誰?この杖ついてるお爺さん。

 またこいつらの変な知り合い?


「おじいちゃん、この子紹介します。最近孤児院に来たアンゼリカです」

「よろしくのぉ〜。気軽におじいちゃんって呼んでおくれ」


 ふーん。このお爺さんあの子の知り合いなんだ。


「アンゼリカ、この人はパムの茶飲み友達のダリアさん」

「……よろしくお願いします」


(茶飲み友達ってなに?あの子まだ11よね?)


 お爺さんと渋い趣味を持っているパメラに困惑する。


 たしかにあの子は少し動くと「あー疲れた」とか「おんぶして」とか言い出すけど、あれはわざとでしょう?


 それとも本当だったの?

 体は子供だけど、実はこのお爺さんみたいに中身はお年寄りなのかしら?


 じゃないと、わざわざこんなお爺さんと友達なのがおかしいもの。


 共通点が無さすぎるわ。


「おじいちゃんはダリア商会の創設者なんだ」

「は?もう1回言ってくれる?」


 聞き間違えたのかもしれない。

 創設者って聞こえた気がする。


「おじいちゃんはダリア商会の創設者なんだ」

「ふぉっふぉっふぉ」


 聞き間違えじゃなかった。

 それに更に疑問が増えた。


 本当になんでそんな人がパメラと仲がいいのか分からない。


 ダリア商会といえば平民のあたしでも知っている有名な商会だ。何がどうしてそうなったの。


 ていうかあの子は一体何者なんだろう。

 貴族にも怖がらないし、こんな凄い人と仲が良いのもおかしい。


「パメちゃんに聞いてたけど、アンゼリカちゃんも面白そうじゃの〜。パメちゃんが気にいるのもわかるのう」


 いえ、わかった気がするわ。

 なんかパメラと同じ匂いがする。


 あたしを見てくる目がそっくりだもの。

 面白いもの見つけたみたいな目。


 この人も要注意人物だわ。


 

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