34話「第一回、雪合戦大会2」
ピクリともしないアンちゃんの体を突く。
「アンちゃんって運動音痴な上にドジっ子なの?」
「うるさい!!!ていうか心配しなさいよ!」
「あ、生きてた」
アンちゃんは勢いよく頭を雪から出して、否定した。
でも、起きあがろうとして、また滑って転けているのを見ると、間違いじゃないみたいだ。
涼しげクールなツッコミでドジっ子。
うん、良いキャラしてるねアンちゃん。
諦めて寝そべったままのアンちゃんの背中を叩く。
「ふははは!!!追い詰めたぜ!変人!!!」
「命乞いは聞いてやるの!!!」
二人に追い詰められたみたいだ。
腰に手を当てて見下ろされてる。
なんかヒーロー物の悪役みたいだ。
(……ずるい!私もそっち側がいい…!!)
俯いてゆっくりと立ち上がる。
「命乞い……?私がすると思う??弱い敵相手に?」
(悪役は私だ!!!!!!)
ニヤリと笑うと、カッとなったジョンとヒルダが雪玉を私目掛けて放り投げた———
これで仕留められると思った二人が、勝利を確信してニヤけると私は魔法を放った。
「そよかぜ」
名前は適当だ。
無詠唱は流石にチートすぎると思って咄嗟に考えた。
(ダサすぎるけどもういい!!)
とりあえず、固められた雪玉で怪我しないように、絶妙な風具合で二人に返す。
「うおっ!!!あぶね!!」
「いったーい!!!!なにするの!!!」
「ちっ、仕留め損ねたか……」
ジョンは運動神経がいいからギリギリ避けれたみたいだ。
でもヒルダは仕留められたみたいだから、まぁいい。おでこを押さえて跪いている。
「変人!!魔法を使うなんて卑怯だぞ!!!」
「あれ?先に卑怯なことしたのどっち?
それに私は魔法もありだって言ったはずだよ??聞いてなかったのかなー?」
ジョンを煽ると顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいる。
だいぶ大人気ないけど、怪我しそうなほど雪玉を固めた二人にはちょうど良いだろう。
やったらやり返されることを身を持って体験したはずだ。
これが悔しかったら、強くなるか、卑怯な真似はしないことをお勧めする。
(私はやり返してスッキリした!!)
「パメラ甘いぜ!!!こっちには人質がいるぞ!!!!!」
ジョンの後ろから、出てきたのは両手を縛られたシアだった。
唖然とする。
(どこまで本気でやってんだ。このクソガキども)
「パメラお姉ちゃん……ごめんなさい……」
しょぼんとしたシアに心が痛い。
普通の雪合戦で遊ぶつもりだったのになんでこうなった?
これじゃあトラウマを植え付けてしまったかもしれない。
ていうか、本当に何してんの!?
「ちょっと!何してんの!?ていうかどこからその紐持ってきたの!!」
「こういうこともあろうかと用意してたんだぜ!!」
「やりすぎだから!」
シアを助けようと近寄ると、雪玉を投げられる。
「助けたいか!?なら俺たちの雪玉の餌食になれ!!」
「そうなの!!ヒルダが復活するまでに決めるの!!」
グッと歯を噛み締める。
もし、このクソガキ共が囚われてたなら助けないと言える。
でも、今回はシアだ。
私には裏切るなんてとても出来ない……
だって唯一お姉ちゃんって言ってくれるんだもん!!可愛いんだもん!!!!
仕方ない。諦めて投降しよう。
この身でシアを守れるなら本望だ。
そう思って、アンちゃんの横に横たわろうとすると、後ろからヒュンという音が聞こえた。
あれ?と思ったときには、もうジョンの顔に雪玉が直撃しており、
「大丈夫?みんな」
金髪の救世主が現れた。
「ユアン〜〜〜〜!!!」
ユアンに泣きつく。
片手で私を受け止めたユアンはビックリしたように目を見開いて笑っている。
危機に駆けつけるヒーローみたいで惚れてしまいそうだ。
嘘、それは冗談。
「ディランたちは?」
「あそこにいるよ」
ユアンが指を差した方向を見ると、言い合いをしている二人が見える。
「右だって言っただろうが」
「いいや!!!ぜってー左!!!俺が右だろ!?」
なるほど、作戦が失敗したみたいだ。
「じゃあ私たちの勝ち?」
「そうだね。相手チームは、全滅だよ」
「やった!!!!勝った!!!シア勝ったよ!!!!」
ユアンから離れてシアの元へ行く。
「本当!?やった!!お姉ちゃんたちすごい!!」
頬を赤らめながら喜んでいるシアに、私も顔が綻ぶ。
(うん、やっぱり可愛い。)
「やっと終わったの?はぁ……」
ユアンに救出されたアンちゃんがため息を吐いた。
散々な目に合って疲れきった顔をしている。
「……て……いの」
後ろから何か声が聞こえて振り返る。
「まだ終わってないの!!!あの巨大な雪だるまが残ってるの!!!!」
ヒルダの言葉にハッとする。
そういえば、雪だるまに当てるのが本来の勝負だった。
「じゃあ今のうちに当て……痛い!!何すんのヒルダ!」
さっきのカチコチ雪玉をヒルダに当てられた。
やっぱり痛い。
「ユアンに抱きついたの!ヒルダ許さないの!!こうなったら、ルールなんて関係ないの!」
「わかるぜヒルダ……勝ち負けじゃねぇ……こいつをヤラなきゃ男じゃねえ!!!」
「プランBで行くの!!!」
クソガキ二人が何か張り切り出した。
なんかすごく嫌な予感がする。
「タッチしたら、仲間を引き抜くことができるの!!はい!ユアンはヒルダたちのチームなの!」
ヒルダはユアンにタッチをして、抱きついた。
当の本人はついていけてないのか、されるがままになっている。
「それからシアはこっちな!あぶねえから!あ、ついでにアンも!」
私以外、最後の一人も抜き取られてしまった。
これはいじめか何か?
学校で「お前一人ぼっちだ!!やーい!」ってやつ?
(……面白い。喧嘩を売るなら勝ってやる)
マフラーを外して、腕まくりをすると――
「おい!!」
と人一倍声の大きい男が声を張り上げる
た。
「俺はいつでもパメラの味方だぞ!!!パメラ!!俺のことタッチしてくれ!!!」
「ザレック……」
口元を抑える。
感動した。このぼっちの味方してくれるなんて……
「ザレック!!!愛してる!!!」
「はははは!俺も愛してるぞ!!!」
ザレックと抱き合うと「アホか」という声が聞こえてくる。
こっちに来てくれない裏切り者は黙ってろ。
と思いディランをキッと睨むと、顔を逸らされた。
「ユアン早く!!早くするの!!!」
遠くの方からユアンを急かす声が聞こえてきて、
声のする方を見ると巨大な雪玉を両手に持っているユアンがいた。
「あれって……巨大雪だるまの雪玉?」
(え?そこまでする?)
「おい!!ユアン!お前がそんな奴とは思わなかったぞ!」
「ごめんね。俺も止めたんだけど……ヒルダたちに、自分たちがあれの下敷きになるぞって脅されちゃって……」
申し訳なさそうな顔をして雪玉をこっちに向けてくる。
「優しい顔してやることえげつない……私今日、一番動揺してる……」
胸に手を当てて、悲しい顔をする。
演技だけど内心、結構本気でびっくりしてる。
「っ……、ご、ごめんパム!!パム達ならなんとかしてくれると思って……」
そんなこと言われても信じられない。
顔を逸らして、ザレックの腕を掴む。
「ザレック逃げるよ!!」
「嫌だ!!!あんな奴らに逃げるなんて男じゃねえ!!!」
……どっかのクソガキと同じことを言い始めた。
「ちょっと!あれ当たったら普通に死ぬから!早く逃げるよ!!」
「嫌だ!これは男のプライドだ!!いくらパメラの言うことでも聞かねえ!さあ来い!ユアン!!」
「ちょっと!ユアンも…やめ……!!!」
止める前に、ヒルダ達に囃された雪玉が放り出された。
「ごめん、兄さん!!!パムのこと守ってくれ!!」
迫ってくる巨大な雪玉に口元が引き攣る。
(本気で投げた……)
アンちゃんみたいにノーコンじゃないみたいだ。確実に近づいてきている。
「ああ、もう!!!」
身体強化の魔法を使って、ザレックの腕を引っ張って後ろに放り出す。
そして風魔法を発動して、誰もいない場所へと雪玉を飛ばした。
これで安全。
と思ったがこれがいけなかった——
ていうか、魔法発動してから気づいた。
ここって中庭だ。
四方八方に建物がある。
(あーあ、加減もミスっちゃった……)
パリンという音と共に窓ガラスが複数枚、割れる音が聞こえる。
おまけにドーンという、衝撃音まで聞こえてきた。
「「「あ」」」
雪合戦中バラバラだったみんなの心が一つになったのは、この瞬間だった。
怪我人はいなかったが、のちに院長に怒られる羽目になり、二度と雪合戦はできなくなった。
「パム……」
「……裏切り者」
「ごめんね……反省してるよ」
「そうだ!ちゃんと反省しろよユアン!」
「うん……兄さんもごめんね……」
「……ああ!!もういいよ!!許すからその顔やめて!!」
「……仕方ねえな。俺は兄ちゃんだからな」
「……うん!」
「良かったじゃねえかユアン」
「うるさい!ディランの裏切り者!!!」
「そうだ!お前も裏切りやがって!!許せねえ!!」
「……お前ら俺にだけ扱い違いすぎるだろ」




