33話「第一回、雪合戦大会」
「第一回!孤児院雪合戦大会を始めます!!!」
宣言すると、みんなから「うおおぉぉぉぉ!!!」と歓声が上がる。
「パメラー!!雪合戦大会ってなんだよ」
「いい質問だねジョン。
雪合戦っていうのはね、相手に雪玉を投げて、最後に残った方のチームが勝ちっていう遊びだよ」
今日は、珍しく街に雪が積もった。
なので急遽、中庭で雪合戦大会を開催してみた。
勝負に本気になりそうな子が何人かいるので、念の為5歳以下の子は不参加にしている。
計十人、2チームに分けての対戦を行う予定だ。
「おい、朝から呼び出したと思ったら遊びかよ」
「あたしもなんで参加しなくちゃいけないのよ」
鼻を真っ赤にしたディランとアンちゃんがだるそうに文句を垂れる。
「やだなーディラン。雪合戦は結構深い遊びなんだよ。
それに誰がいっぱい敵チームに当てるんだろうねぇ〜?」
「ほぉ……」
ディランの顔がやる気に満ちている。
最近、ユアンとザレックと模擬戦が白熱しているらしくて煽ってみたけど……
なんてちょろいんだろう。
「それとアンちゃん、人数足りないからお願い!」
「アン、俺からも頼むよ。朝が弱いのに今日は珍しくパムが張り切ってたんだ」
「はぁ……」
アンちゃんはアンちゃんで、意外とお人よしだ。
でもこれもアンちゃんがみんなと仲良くなるための作戦だから、参加してもらわないと困る。
せっかく朝からディランも呼びに行ったのに……ユアンが。
「パメラ!!ルールは当てるだけなのか!?」
一番やる気に満ち溢れているザレックから声が上がる。
「違うよ。本来はさっき言ったルールなんだけど変えようと思って。
雪玉に当たったら、3分休み+あの巨大雪だるまに当てたチームが勝ち!にしようかなって」
雪だるまがある方に指を指す。
魔法があるからわざと当てやすいように、孤児院の高さと同じくらいの大きさにしてみた。
前世でも作ったことのないくらいの大作だ。
魔法で作ったけど、なかなか迫力がある。
「あれ使うのか!?俺たち頑張って作ったもんな!!!」
「ふふっ、何に使うんだろう?って思ってたけどこれのためだったんだ」
ユアンとザレックの二人は雪だるまを作るときに手伝ってくれた。
ザレックはあの時からテンションがやたらと高い。
まぁ、久しぶりこうやって遊ぶからかもしれない。
「その通り!!!魔法も怪我させないなら使っていいよ。
てことで、チーム組んで、早速雪合戦開始!!!!!」
◇◇◇
チームメンバーは以下の通りだ。
ディランチーム
ディラン・ザレック・ジョン・ヒルダ
ユアンチーム
ユアン・アンちゃん・パトリシア・私
中々いいメンバーなんじゃないだろうか。
ヒルダからは、恨みの視線を浴びているけど。
「パメラお姉ちゃん、シアも参加していいの?シア、運動苦手……」
今回の年少者のパトリシアから、不安そうな声がかかってしゃがみこむ。
この子は唯一、5歳以上の子からパメラお姉ちゃんと呼んでくれる、心優しい女の子だ。
シアというあだ名も私が考えた。
「もちろんいいよ。これは勝ち負けじゃなくて、楽しむのが大事だから。
シアが嫌ならやらなくてもいいけどね」
シアの頭を撫でて、微笑む。
「それならやりたい…!」
パァっと顔が明るくなった。
うん、可愛い。
わしゃわしゃと撫でて立ち上がる。
「じゃあジョンに、一緒に雪玉当ててやろう?私が雪玉作るから、シアが投げてみて。よし、やるよ!」
「うん!!!」
両チーム準備ができたみたいなので、鈴を鳴らして開始の合図を出す。
チリンチリンと鳴らした途端――
私に向かって雪玉が飛んできた。
「あぶなっ!!」
雪玉が飛んできた方向を見ると、ヒルダがいた。
「ユアンとなんでチーム別なの!不公平なの!!くたばれなの!!パメラ!!!」
やっぱりこうなると思ってた。
次々と来る雪玉に、シアを抱っこして避けていると、今度は違う方向から雪玉が襲ってきた。
「そうだ!くたばれパメラ!!」
「ジョンまで!?」
これは予想外だった。
二人に一斉に雪玉を投げられる。
どうやら日頃の恨みを買いすぎたみたいだ。
怖い顔で良い笑顔を見せている二人に慄く。
勝負のはずが、なんか身の危険を感じてきた。
とりあえず、いつまでもこうしている訳にはいかない。
「シア、一旦別れよう!」
「うん!!」
雪玉が途切れたタイミングで、シアを下ろして別れる。
二人から離れるために移動すると、アンちゃんがいた。
のんびり雪玉を量産しているみたいだ。
さらに少し遠くの方でユアンが、ディランとザレックの相手をしていた。
遠目で見ても白熱しすぎてて口が引き攣る。
雪玉がすごい速さでビュンビュン飛んでいる。
あそこには近寄らないでおこう。
それより……
「アンちゃん!!!!助けて!!!」
暇そうなアンちゃんに助けを求めて近寄る――
とまた雪玉が飛んできた。
もうヒルダたちは雪玉を量産したみたいだ。
また大量に雪玉が飛んでくる。
「ちょっと!こっちに来ないでちょうだい!」
ぼーっとしていたアンちゃんがこっちを向いた途端、焦った顔になり早口で拒絶される。
「ひどい!!せめてそれ投げて!!!後ろの二人に投げて!!!!!」
飛んでくる雪玉を避けながら、アンちゃんの前にある雪玉を指差すと、嫌そうな顔をして投げる動作に入る。
(良かったデレアンちゃんだ!!!ありがとう!!)
「えいっ!!」
アンちゃんが投げた雪玉は、標的とは全く違う方向に向かっていった。
ちょっとズレたとかじゃなくて、本当に90度以上別の方向に行ってる。
「ちょっと!!!どこ投げてんのアンちゃん!!!」
「うるさい!!!!!」
(アンちゃんも、もしかして運動音痴!?)
まずい。ここで一網打尽にされるのは避けたい。
アンちゃんと手を取って走り出す。
「ちょっとあんた一人で走りなさいよ!!私まで狙われるじゃない!!」
「しょうがないでしょ!!あの雪玉に当たりたいの!?
今気づいたけどあれ絶対痛いよ!?
投げた後も地面に固まったまんまだもん!!」
ヒルダたちの雪玉は、固めた状態のままポツポツと道に落ちている。
「え?あれ?あいつら私のこと殺す気!?そこまで悪いことしてないよ!?」
「あんたなら有り得るわね」
「ひどい!!!」
それに怪我しないようにって言ったのに、雪玉を固めるなんて反則だ。
(魔法使ってもいいって言ったのは私だけどさ!!)
こうなったら私も魔法を使おう。
そう思って振り返ると、右腕に重みが加わった。
「きゃっ!!!」
あ、って思ったときにはアンちゃんが消えていた。
下を見ると、頭から雪に突っ込んで上半身が埋まっていた。
(……え?い、生きてるよね……?)




